アメリカ90都市で24時間! 発砲音のモニタリングは監視社会につながるか

Shot Spotter

ShotSpotterは全米90以上の都市で運用されている。ただしこの技術が実際に銃犯罪の抑止に効果的であるかどうか、疑問視する声も一部にある

ShotSpotter

ニューヨーク市を含む全米90以上の都市で犯罪多発地域にマイクを設置、感知した銃声をマッピングして警察に通報するShotSpotterが、創業16年目となる今年6月、株式を公開した。

同社のテクノロジーは、既存の監視ツールに基づいて構築されている。既存のツールの多くは時代遅れのカメラだ。画質は悪く、音声は収録できず、犯罪発生後にようやく捜査官の検証に使われる。その点、ShotSpotterは警察官の携帯上のアプリに通報する。

「地図に表示された位置へ行くと、GPS座標から11フィート(約3.4メートル)の地点で空の薬きょうを見つけたことがある。これはとても役に立つ。おかげで多くの人の命が助かった」ミルウォーキー警察のデビッド・サラザー(David Salazar)警部は、Business Insiderに語った。

3カ所のマイクで発砲音が感知されると、ShotSpotterはその音の出どころを特定する。カリフォルニア州ニューアークの本部にいる分析官が、それが(爆竹などではなく)銃声であることを確認する。これで警察官は地図上で銃声の位置を特定、現場を捜索することが可能になる。サラザー警部は正確な所要時間を明かさなかったが、電話で警察に通報するより「はるかに速い」と述べた。

ShotSpotterの通報画面

ShotSpotterの通報画面

ShotSpotter

犯罪抑止力としての機能

理論上、この技術により2つのことが可能になる。まず、人けのないところで起きた事件により素早く対応できる。また、周辺で多数の事件を起こしている連続銃撃犯や小規模な犯罪集団がいる地域に、重点配備を行える。ShotSpotterのCEOラルフ・クラーク(Ralph Clark)氏はそう話す。

だがこの新技術も完璧ではない。ShotSpotterは、サービスの価値を証明するために未だに苦心している。 データの収集と分析は、それぞれの都市の警察次第だ。そして、全ての警察機関がミルウォーキー警察ほど熱心にShotSpotterを活用しているわけではない。

また、一部のデータは、その技術には引き続き調整が必要であることを示唆している。Forbesが昨年、ShotSpotterを導入している24以上の都市のデータを分析したところ、30%~70%の割合で、現場に到着した警察官が発砲の痕跡を見つけられなかった。

それでもクラーク氏は、ShotSpotterの意義を、銃犯罪の発生を抑止する可能性に見出している。同氏は最近のブログ投稿で、ShotSpotterを映画『マネーボール』のストーリーになぞらえた。この映画ではプロ野球チームが、所属選手の特定の能力を、制度的に過大評価してしまう。クラーク氏は映画同様、殺人事件の捜査はホームランのように過大評価され、犯罪抑止は出塁率のように過小評価されると説明した。

「我々は、発砲が起きるたびに警察が素早く確実に現場に駆けつけることで、住民を脅かそうとする者たちに強い警告が与えられると考えている。警察が駆けつけるたびに、逮捕に至らない場合でも、犯罪抑止効果は高まる」とクラーク氏は述べた。

人命には数百万ドルの価値がある

集められた銃弾

銃器買い取り期間中にシアトル警察に持ち込まれた銃弾

Thomson Reuters

クラーク氏によると、このアプローチが十分に効果を上げてきたからこそ、警察機関はShotSpotterとの契約を続けてきた。

「警察はShotSpotterに価値を見出している。この技術は彼らの捜査に役立っている。警察は、現場により速く駆けつけることで、より地域貢献を果たすことができる」とクラーク氏はBusiness Insiderに語った。

サラザー警部は、ShotSpotterを2010年からミルウォーキーで活用してきた。それまでは発砲事件のうち電話で通報があったのはわずか16%だったことが判明。サラザー警部は、発砲音がどこから聞こえてきたのか、より正確に知る方法が必要だと感じていた。

「気付いていないことに対処することはできない。我々は、多くのことに気付いていなかったのだ」と彼は話す。

サラザー警部によると、ShotSpotterは人命を守るのに役立っているが、真のメリットは、最も必要な時と場所に警察官を配置できることだと言う。それには数百万ドルもの税金を投じる価値があると警部は語る。

「皆、現場に駆けつけて、銃を撃った人間の鼻っ柱をへし折ってやりたいんだ。だが、朝9時に何も起こっていない場所に行き、その辺りで15年間暮らしてきた近隣住民に聞き込みをする……本当に物事を変えられるのは、そんな時だ。そんな時にこそ、捜査対象を絞り込める」

ShotSpotterは監視社会につながるか

サラザー警部は言う。一部の人たちは、画面にただの点を表示するだけのものに高いコストを払うなんて、金の無駄遣いだと思うかもしれない。だがShotSpotterの真価を発揮させるには、警察機関がデータを収集するだけではなく、データを積極的に活用しなければならない。テクノロジーだけでは人の命を救うことはできないのだ、と。

ShotSpotterのクラーク氏もまた、この技術は人命救助を目的に設計されたものではないと話す。

「ShotSpotterが単体で銃犯罪を抑止できるとは言わない。我々がそんな主張をすることはあり得ない。銃犯罪抑止の戦略の成功には、たくさんの要素が絡む」とクラーク氏は語った。

ニューヨークで発生したある殺人事件の現場周辺に住んでいた人々は、ShotSpotterのようなテクノロジーが犯罪撲滅の効果的なツールになり得ることについて、複雑な思いを語った。例えば、飲食店のマネジャーを務めるホセ・ロドリゲス氏(46)は、センサーを「良いもの」と呼び、気にならないとした。だが周辺地区の「長」を自称するフェリックス・ピサロ氏(60)は、近所付き合いを通じてお互いに仲良くなれば、屋根の上に設置したマイクよりも安全な環境を作り出せると話した。

「全てを監視されるのはごめんだよ」とピサロ氏は話す。

写真: ShotSpotter

[原文:There's a secret technology in 90 US cities that listens for gunfire 24/7

(翻訳:忍足 亜輝)

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