JAL、ヤフー、リクルートが導入する米ユニコーンが作った優れもの —— データ・プラットフォームの「Domo」とは?

日本で売り上げを伸ばしているビジネスデータ・プラットフォームを作るスタートアップがある。米国ユタ州のシリコン・スロープスを拠点に世界展開を行うユニコーン企業のDomo(ドーモ)だ。

企業価値23億ドル(約2580億円)と言われるDomoが開発したプラットフォームは、リクルートやヤフー、オイシックス、DeNAに採用された。そして今年4月に日本航空(JAL)が導入すると、ANA(全日本空輸)も後を追った。

社名の由来は日本語の「どうも」であるDomoが、日本企業のハートを射止めた理由とは何か?東京・品川に本社を置くJALに聞いた。

日本航空コーポレートブランド推進部・Webコミュニケーショングループ長の山名敏雄氏

日本航空コーポレートブランド推進部・Webコミュニケーショングループ長の山名敏雄氏

BUSINESS INSIDER JAPAN

ビール、洗剤、ハンバーガー、寿司......あらゆる商品のブランディングにおいてSNSが不可欠である今、航空会社のJALにとってもソーシャルマーケティングは有効な手段の1つだ。少なくとも1日に1度はFacebook、Twitter、Instagramにメッセージを発信する。JALは、SNSでどのようなサービスを期待しているのかを知り、顧客のSNSへのエンゲージメント数を把握し、そしてサービスの改善につなげていく。

昨年4月、JALはコーポレートブランド推進部に「Webコミュニケーショングループ」を設置。SNSのブランディングを一元的に管理し始めた。課題は、ソーシャルメディアから得られるデータを今まで以上にタイムリーに分析して、施策の効果を把握することだった。

グループ長の山名敏雄氏を含むスタッフは、数々のビジネス・インテリジェンスのソフトウエアやデータを可視化するツールの検討を始めた。そして2016年秋、Domoと出会う。

「Domoはオール・イン・ワン(all-in-one)です。多くの仕事を1つのプラットフォーム上で可能にする画期的なものでした」と山名氏は話す。

クラウド型プラットフォームのDomoの強みは、1つのプラットフォームで企業のCEOから現場の担当者まで全ての社員がデータにアクセスでき、多様な分析結果を可視化できることだ。必要であれば、ユーザー同士がプラットフォーム上でコミュニケーションをとり、次のアクションへ移ることができる。

JALが利用する「Domo」の画面

JALが利用している「Domo」の画面

提供:JAL

「JALに毎日乗る人は多くはないですよね。SNSを通じて毎日、情報発信することは、JALにとってお客さまとのコミュニケーション作りの観点からとても大切です」と山名氏は6月28日、BUSINESS INSIDER JAPANとのインタビューで語った。

「Facebook、Twitter、Instagramのそれぞれのデータ、それに加えてエクセルに取り込んだデータを別々に分析することは、作業が煩雑になり、時間を要します。1つのプラットフォームで全てを処理して、可視化できるビジネス・インテリジェンス・ツールが必要でした」と山名氏。

ビジネス・インテリジェンス市場は2021年に3兆円

Domoがビジネスを展開する市場はビジネス・インテリジェンスと呼ばれる、企業のデータを収集、蓄積、分析して、経営の意思決定につなげる方法や技術である。米リサーチ会社のマーケッツ・アンド・マーケッツは、世界のビジネス・インテリジェンス市場が、年平均9.5%増加し2021年までに269億ドルに拡大すると予想している。Domoのサービスは、FacebookやTwitter、セールスフォース(Salesforce)のデータや、企業独自で作成するデータベース、スプレッドシートを管理し、それらをチャートやグラフとして可視化する。この業界には、既にニューヨーク証券取引所に上場しているタブローソフトフェアもいる。

Domoの製品

世界のビジネス・インテリジェンス市場は、年平均9.5%増加し2021年までに269億ドルに拡大すると言われている。

提供:Domo

2010年創業のDomoは今年4月、1億ドルの資金調達を完了し、企業価値が23億ドルとなったと発表した。今回の調達ラウンドは、既存投資家である大手資産運用のブラックロック(BlackRock)が主導。これでDomoは総額7億ドル近くの資金を調達したことになる。

企業価値の増大とビジネスの拡大に伴い、アメリカの金融界ではDomoの株式上場を期待する声も聞かれる。著名なベンチャーキャピタルに加えて、アマゾンのジェフ・ベゾス氏や楽天の三木谷浩史氏も、Domoへの出資者に名を連ねている。

親日家であるDomoの創業者兼CEO、ジャシュ・ジェイムズ(Josh James)氏は、顧客に感謝されるサービスを作りたいという思いから「どうもありがとう」の「どうも」に由来する社名をつけた。

企業が利用するシステムやデータの種類と量が急増する中、データの断片化に悩む会社は世界中で増えていると、Domoのジャパンカントリーマネージャー川崎友和氏は言う。

日本市場では当初、デジタルチャネルを活用したビジネスに注力する企業が主にDomoのサービスを導入したが、現在ではメディアや小売、通信、製造業でユーザーが増えてきているという。財務データは非公開だが、Domoはグローバルで売上高を毎年2倍以上増加させている。川崎氏は、日本市場でもビジネスは急成長していると話す。

Domo・川崎カントリーマネージャー

「世界の約90%のデータは、この2年間で作られた。リアルタイムのデータを入手して、即時にビジネス判断と実行を必要とする企業が増えてきた」と話す川崎氏

撮影:Domo

Domoは7月6日、ANAが「Domo」を採用したと発表した。マーケティング活動における投資効果を向上させるため、ANAはExcelで作成されたレポートを廃止し、ウェブサイトのトラフィックなどのマーケティング上の評価指標(KPI)をリアルタイムで可視化する。発表文によると、ANAはデータの把握と判断、必要なアクションまでの時間を短縮させる。

川崎氏は言う。「世界の約90%のデータは、ここ2年間で作られたと言われています。リアルタイムのデータを入手して、即時にビジネス判断と実行を必要とする企業が増えてきた。そして、企業のエグゼクティブから現場まであらゆるユーザーがデータを共有して、データに基づいた知見をタイムリーに施策に反映していくことがより重視されるようになってきた」

*この記事は、ANAによるDomoの採用を追加、更新しました。

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