AI使うドコモ「陳列棚スカウター」が日常に? —— "AIと一緒に働く"未来が見えるAI・人工知能EXPOレポート

Kibiro

6月28日〜30日までの3日間、東京ビッグサイトで「第1回 AI・人工知能EXPO」が開催されている。

AIをめぐる盛り上がりは、2016年3月にグーグルの囲碁AI「AlphaGo(アルファゴー)」がプロ棋士を破ったことで脚光を浴びて以降、バズワードとして広く定着した感がある。

AI・人工知能EXPOの出展社で、クラウドソーシングサービス「CROWD」運営元のREALWORLD社は、2016年2月から人工知能に学習させるための"教師データ"作成専門のクラウドソーシング「CROWD ロボティクス」を開始している。軌道に乗り始めたのは比較的最近のことだという。

「AI専門クラウドソーシング事業を開始した当初は、営業に行っても全くと言っていいほど反応が薄かった。それが、この1年ほどで"教師データをつくりたい"という問い合わせがぐっと増えてきた」

AIの教師データ作成クラウドソーシング

AIの教師データ作成クラウドソーシング「CROWD ROBOTICS」。経験者の1000名のワーカーに教師データ作成を一気に発注することなどでデータ作成のスピードを売りにしている。ワーカー側の取り分は、時給換算で300円程度から。コミットが増えれば支払いも上がる仕組みを採用。

"教師データ"とは、人工知能に何かを学習させる際に欠かせない教育用データのことだ。例えば、モノを認識するAIを作りたい場合は、"写真"と、"その写真の被写体が何であるか"を書いたデータを大量に集めた教師データを使う。それを深層学習を使ったAIに大量にインプットして演算させることで、様々なものを認識できるようになる。

つまり教師データづくりは、AIを開発するには避けては通れない道だが、一方で大量に必要なため骨が折れる作業でもある。教師データづくりの外注を必要とする企業が増えてきたということは、自社の事業にAIを組み込めるかどうかの"技術的吟味"期間がある程度終わって、具体的な開発フェーズに入る企業が増えてきた、ということになる。

ただし、ロボットにAIが入って映画の世界のように人と会話するような世界は、まだまだ先の話だ。

Kibiroの展示

Kibiroの受付パッケージ。導入初年度のトータルコストは50万円程度という。

たとえばAI応対ロボット「Kibiro」を展示したフロンテオコミュニケーションズは、ロボットとタブレット端末を組み合わせた会社の受付業務システムなどを展示していた。Kibiroの本体30万円程度、月額2万円程度の運用費(ミニマム1年契約から)と合わせて、導入コストは初年度費用50万円程度だという。

Kibiroは話し言葉を認識する機能は持っているものの、現実的には訪問客にKibiroが挨拶をして、タブレット端末からの内線呼び出し操作などを促す形での導入になるという。

では、AIの導入によって何が変わり始めるのか? それは人間が使う"道具"の変化から始まりそうだ。AI技術が入ったシステムを道具のように使いこなして、面倒な仕事を減らして人間しかできない仕事で生産性を上げていく、というようなイメージだ。AI・人工知能EXPOの展示では、"半歩先の日本の現実"の一端が垣間見えた。

コンピューターの目で"コンビニの陳列棚"を評価する

たとえばドコモが参考出展していたシステムは、それがわかりやすい例だ。デモ展示していたのは、スーパーマーケットやコンビニ向けのソリューションとして開発している画像認識による商品判別システム。スマホやタブレットで陳列棚を撮影するだけで、その棚の陳列商品がどのメーカーの何という商品が何個あるのかを記録してデータ化してくれる。

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タブレットで陳列棚を撮影したところ。どのメーカーの商品が何個あるかまで認識されている。商品をタップすると……。

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商品名がライオンの「アロマリッチ」だということがわかる。JANコードなども表示される。認識した物体を、サイバーリンクス社の商品データベースと紐づけることで実現しているという。

サービスの裏側のメカニズムとしては、ドコモが開発した深層学習(ディープラーニング)ベースの物体認識アルゴリズムと、法人向けの商品写真データベース大手のサイバーリンクス社のデータベースとのコラボで実現している。

これによって、陳列棚の商品陳列が本部の指示通りに行われているか、あるいは売上に悪影響を与える陳列になっていないか(たとえば売れ筋商品が欠品していたり、手に取りにくい下段にないか)などを、写真を1枚撮るだけで判定することができる。

ドコモの展示担当者によると、従来こうした棚のチェックは、各店舗をまわる"ラウンダー"と呼ばれる人たちが手作業で数えていたものだと言う。

同システムが実際に導入されると、ラウンダーは陳列棚の内容確認という苦労の多い作業を機械に任せて、地域全体の棚の最適化や作業の効率化に集中できる。

色々な企業が展示していた「チャットボット」

サイバーエージェントのチャットボット事業

サイバーエージェントのチャットボット事業「AI Messenger」。

流行という点では、チャットボット系の展示も多かった。この分野は、コールセンター業務や企業のソーシャルアカウントの効率化を狙っている。とはいうものの、深層学習を使って"自然言語認識(いわゆる話し言葉)と、文章の意味理解を組み合わせて、人間かのようにきめ細やかに対応する"というのはまだまだ未来の話だ。

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サイバーエージェントが展示していたのは、24時間対応のコールセンターの問い合わせを一部チャットボットに担当させるというもの。展示しているサービスは連結子会社であるAI Messenger社の事業だ。

人間の問い合わせに対する自動応答は、従来からあった機械学習のアプローチで行っている。つまりディープラーニングは使っていない。

システムとしてはこうだ。人間からの問い合わせには最初、チャットボットが答える。会話の途中で質問者に「回答に満足できたかどうか」を聞いて、「不満」だと答えた場合にコールスタッフが対応を始めるという二段構えになっているという。コールスタッフはほぼ日本語ネイティブのスタッフで構成されていて、沖縄のコールセンターからの24時間対応を売りにしている。

一方で、"もっと簡単にチャットボットを作る"仕組みを開発しているのは、ドコモだ。

チャットボットをつくる場合には、「どんな質問に、どのよう回答するか」という回答データベースの作り方がポイントになる。

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Q&A型の簡単なテキストデータをもとにチャットボットを作成してくれるドコモの「チャットボット自動生成システム」。Q&Aで使われる単語の組み合わせを理解して、問い合わせした人からの自然言語認識にも対応する。

ドコモが展示していたチャットボットシステムは、ここにフォーカスしたもの。Q&A形式でかんたんなテキストデータをつくるだけで、文章を解析(文をワードごとに切り分けて認識する形態素解析を使用)して、チャットボットを自動生成するシステムを展示していた。

これによって、(Q&Aを作りさえすれば)ある特定の単語の組み合わせを含む質問に、関連性の高い回答をしてくれるボットが作れる。チャットボットにおけるプログラム作業の大幅な省力化を狙っている。

ただし、質問と回答が一対になったデータを用意する必要があるので、例えば『食べログ』などのようなグルメサイトのデータを読み込ませて、"好みに合う店を提案してくれるチャットボット"といったものへの応用は難しいとのことだった。

ドコモの展示

作成したQ&Aの質問に子会えるチャットボットの例。回答を進めるごとに、問題が絞り込まれていく。デモではFacebookメッセンジャーが使われている。


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チャットボットをレシピに応用したもの。使いたい食材を「卵」や「牛乳」といったようにLINEで聞くと、その食材にあったレシピを教えてくれる。

意外と少ないAI技術系展示

一方、トレードショーという展示会の位置付けのためか、純粋なAI技術系の出展は意外と少ない印象だ。

UEIブース

UEIのブース。

この分野では、人工知能の開発・コンサルティングを手がけるAIベンチャーのUEIが、ソニーCSLと共同開発した深層学習向けのプラットフォーム「CSLAIER」や、通常は2次元画像に対して行う物体認識を3次元データに対して行うことで医療分野の解析に生かす、3次元畳み込みニューラルネットワーク技術「DEEPvolume」などの展示をしていた。

同社は、人工知能学習用のハイエンドPC「DEEPstation」も発売しているが、2017年第3四半期からは、DEEPstationでマイクロソフトのクラウド「Azure」の高速なGPU計算資源を1GPUあたり1時間1ドルで使える新サービスも始める。

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通常は平面(2次元)のデータに対しておこなう処理を、独自のアルゴリズムで3次元データに適用する物体認識ソリューション。既に製薬会社のエーザイに納入している。

また、大阪を本拠とするサーバーホスティングサービス企業・さくらインターネットは、AIの学習を高速に行うGPUクラウド「高火力コンピューティング」のデモ展示などを行なっていた。サービスとしては先に書いたマイクロソフトAzureのGPU計算資源提供サービスと競合するものだ。

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高火力コンピューティング

高火力コンピューティングの比較デモ。右が競合のGPUインスタンスサービスで、左が高火力コンピューティング(撮影時点で何らかのトラブルで、表示が0になっているが、直前まで右の2倍程度の処理速度で動いていた)。左右ともに、性能を示す「TFLOPS」の値は同程度だが、高火力コンピューティングの方が世代が新しいGPUのためか、速度が2倍近く出る、というデモ。

AI・人工知能EXPOは来年、規模を3倍にして開催することが、すでに主催者から発表されている。第2回では、グーグル(AI開発環境TensorFlow/テンソルフローを提供)やPreferred Networks(同じく開発環境Chainerを提供)といったプラットフォーマーの出展やステージイベントも期待したいところだ。

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