イギリス海軍の空母「クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)」。
Royal Navy Photo
2017年7月、2隻の強力な最新鋭空母が登場した。アメリカ海軍の「ジェラルド・R・フォード (USS Gerald R. Ford)」と、イギリス海軍の「クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)」だ。両艦とも最新の技術が投入されている。両国の今後、数十年間の空母を象徴する1番艦だ。
両艦は、すでに他の空母やヘリコプターデッキを持つ艦と艦隊を組み、海に出ている。アメリカもイギリスも、海に対する関心は極めて高い。航行の自由を確保するために新型空母を投入した。
世界中のいかなる空母も凌駕する両艦の全貌を見てみよう。
ジェラルド・R・フォードは、世界中の空母の中で最も巨大で強力な空母だ。1970年代から世界の海を支配してきたニミッツ級空母を改良し、新たな原子力エンジンや洗練された離着陸システムを装備している。就役は、2017年7月22日の予定だ。
初の海上試験に臨むジェラルド・R・フォード。
US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Ridge Leoni
左は、アメリカ海軍が現在運用している10隻のニミッツ級空母の1隻、「カール・ヴィンソン(USS Carl Vinson)」。約70機の艦載機を搭載可能なニミッツ級空母は、実戦を何度も経験している。
給油艦ユーコンから洋上補給を受けるカール・ヴィンソン。
Mass Communication Specialist 2nd Class Patrick W. Menah Jr./US Navy
2つの画像を比べると、フォード級空母が甲板の配置を改良し、より多くのミッションを実施できるようにしていることが分かる。
上はニミッツ級空母、下は新しいフォード級空母。
Jeffhead.com and Business Insider
(※見出しの文章を修正しました。2017年7月21日20時00分)
アメリカの空母とは違い、イギリスのクイーン・エリザベスはディーゼル燃料、艦載機の離陸距離を短縮するためにスキージャンプ式甲板を採用している。だが、両艦とも短距離離陸/垂直着陸が可能なステルス戦闘機F-35Bを搭載する予定だ。
Graphic News
ロサイス造船所に停泊中のクイーン・エリザベス。今年後半に就役すれば、イギリス海軍で唯一の空母となる。2番艦の建造も計画されている。
Royal Navy Photo
中国で唯一運用されている空母「遼寧」。中国の多くの兵器と同様に、遼寧は旧ソ連で設計・建造されたものを改造した。
大連港のドックに入っている「遼寧」。2012年。
REUTERS/Stringer
ロシアと中国がまだ使用している旧ソ連の空母は、アメリカ海軍の空母とは用途が異なる。つまり、全世界を行動範囲とするのではなく、沿岸防衛に適している。
遼寧の排水量はクイーン・エリザベスと比べて約1万トン少ない。また、現状、訓練にのみ使われている。遼寧は中国初の空母だからだ。
World Wide Aircraft Carriers
中国は、少なくとももう一隻の空母を建造中と発表している。衛星写真からは、2隻目の空母はモジュール式の設計だが、まだ遼寧と同じ「スキージャンプ式」の滑走路であることが分かる。
2隻目の空母により、中国は世界でも有数の空母保有国となる。
Stratfor / Digital Globe
出展:STRATFOR
ロシア海軍唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」。兄弟艦は遼寧のベースとなった。大きさも速度も、またスキージャンプ式の甲板も遼寧と同じ。
ロシア海軍の空母「アドミラル・クズネツォフ」。
WorldwideAircraftCarriers
出展:ストラトフォー
アドミラル・クズネツォフは2016年、シリアでの対テロ作戦のために地中海に初めて戦闘任務についた。この空母には、メカニカルトラブルに悩まされた苦い過去がある。どこに行く時にも常に、2012年に起きたようなトラブルに備えて、タグボートが随行している。シリアへの出撃で、アドミラル・クズネツォフは少なくとも2機の艦載機を失った。
ロシア海軍の空母「アドミラル・クズネツォフ」。
Mil.ru via Wikimedia Commons
フランスが誇る空母「シャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle)」。上空を飛ぶのはダッソー (Dassault)製のラファール(Rafale)戦闘機。アメリカ以外で、原子力空母を保有するのはフランスのみ。アメリカの空母と同じフラットな甲板を備える。つまり、重量のある艦載機の離着陸が可能であり、ほぼ永久的に運用可能だ。
ダッソー ラファール戦闘機と空母シャルル・ド・ゴール。
Marine nationale
インドは空母2隻体制をとっている。遼寧より小型だが、信頼性は高い。インドは将来に備えて、新しい空母の購入も検討している。
インド海軍の空母「ヴィクラマーディティヤ」。
WorldwideAircraftCarriers by Jeff Head
日本は、ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが型護衛艦」2隻を保有。
アメリカ海軍ニミッツ級空母の前を行く海上自衛隊「ひゅうが型護衛艦」。
Public Domain
さらにより大型のヘリコプター搭載護衛艦「いずも型護衛艦」2隻も保有。「いずも型」は「ひゅうが型」に比べ、空母としての運用に重点が置かれた。
World Wide Aircraft Carriers
編集部注:イラストには、垂直離着陸が可能なF-35Bが描かれているが、日本政府はあくまでも「ヘリコプター搭載護衛艦」と位置づけている。
アメリカ海軍、イギリス海軍の空母は、他国の空母ほど兵装していない。だが、護衛のミサイル駆逐艦を含む、空母打撃群で行動する。
エイブラハム・リンカーン戦闘群とオーストラリア、チリ、日本、カナダ、韓国の艦船。2000年の環太平洋合同演習にて(編集部注:当時は「空母戦闘群」と呼ばれていた)。
PH2 Gabriel Wilson
(写真では分からないが、海中には潜水艦も)
アメリカ海軍の空母は多種多様な艦載機を運用する。輸送機は兵站を担い、電子戦機は戦闘機を支援し、下のE-2ホークアイのような早期警戒管制機(AWACS)は上空から敵に関する大量のデータを送信、ヘリコプターは潜水艦を狙い、兵士を運ぶ。
他国の空母は、これほど多様な艦載機を持たない。AWACSを搭載しているのはアメリカ海軍のみ。
U.S. Navy photo by Photographer's Mate 3rd Class (AW) Jayme Pastoric.
またF-35は巨大なデータ収集能力を持つ。アメリカの同盟国もまもなくその高い能力の恩恵を受けるだろう。
US Navy
各国の空母のサイズ比較。フォード級はニミッツ級とほぼ同じサイズ、クイーン・エリザベスは遼寧より少し大きい。
アメリカ海軍のジェラルド・R・フォード級空母は、現在運用中のニミッツ級空母よりもわずかに大きいが、排水量はどちらも10万2000トン。
FOX 52 via Wikimedia Commons
アメリカ海軍は、他の国々の空母保有数の合計よりも多くの空母を保有している。
インド海軍の2隻目は現在、建造中のためこの図には含まれていない。
globalsecurity.org
アメリカは世界で最も強力な空母を保有しているが、航空機や海軍技術の進歩により戦力バランスは絶えず変化する。今日の強さは、明日には弱点となることもある。
Thomson Reuters
source:Royal Navy Photo、US Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Ridge Leoni、Mass Communication Specialist 2nd Class Patrick W. Menah Jr./US Navy、Jeffhead.com and Business Insider、Graphic News、World Wide Aircraft Carriers、Stratfor / Digital Globe、WorldwideAircraftCarriers、Mil.ru via Wikimedia Commons、Marine nationale、WorldwideAircraftCarriers by Jeff Head、Public Domain、World Wide Aircraft Carriers、PH2 Gabriel Wilson、U.S. Navy photo by Photographer's Mate 3rd Class (AW) Jayme Pastoric.、US Navy、FOX 52 via Wikimedia Commons、globalsecurity.org
(翻訳:Conyac)