クロスオーバーSUV「Model X」を発表するデスラCEOイーロン・マスク氏。2015年9月29日。
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電気自動車の可能性が、かつてないほど高まっている。
ゼネラルモーターズ、フォルクスワーゲン、ダイムラーAGなどの既存自動車メーカーは、電気自動車に多額の資金を投じている。そして言うまでもなく、テスラは電気自動車のみを展開している。
だが電気自動車は新しいものではない。事実、アメリカでは長い歴史があり、一時期は自動車の主流だった。
電気自動車がどのように進化してきたのか見ていこう。
1800年代末から1900年代始めにかけて、電気自動車が登場。
1899年と1900年、電気自動車は他の全タイプの車より売れた。事実、アメリカの国勢調査によると、1900年、アメリカで生産された自動車4192台のうち28%が電気自動車だった。電気自動車の販売総額は、この年のガソリン自動車と蒸気自動車の合計額を上回った。
1900年代初頭、電気自動車はガソリン自動車や蒸気自動車に比べて大きな利点があった。
初期の電気自動車は基本的に、バッテリーで動く「馬がいない馬車」だった。だが、いくつかのメリットがあった。
1つ目は、蒸気自動車やガソリン自動車に比べて、臭いや騒音、振動がなかったことだ。また、操作がはるかに簡単だった。ガソリン自動車は、エンジンをかけるためにクランクを手で回す必要があった。また運転中はギアを変える必要があり、それがとても難しかった。
蒸気自動車は手でギアを変える必要はなかったが、始動に時間がかかり、電気自動車よりも航続距離が短かかった。
だが1935年までに電気自動車の人気は衰えた。エンジンが主流になり、何十年にもわたって主流となった。
電気自動車メーカーは1920年代に若干の成功を収めたものの、生産のピークは1912年だった。
当時、ヘンリー・フォードがエンジンを大量生産したことで、ガソリン自動車は電気自動車よりも大幅に安くなった。例えば、1912年、屋根のないタイプの電気自動車が1750ドルだったのに対し、ガソリン車はわずか650ドルだった。
新しいガソリン自動車には電動スターターなど数多くの改良が加えられ、操作がはるかに楽になった。1935年までに、電気自動車は見られなくなった。
電気自動車への関心が再び高まり始めたのは1960年代、1970年代になってから。
Low Pollution Power Systems Development(低公害パワーシステム開発研究会)の第1回シンポジウムの参加者と、Esbの電気自動車の実験車両「Sundancers」。1973年。
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現在と同様に、環境汚染に対する懸念が、電気自動車の開発に新たな関心が向けられる一因となった。
1970年、大気浄化法改正法が成立。同法により、自動車の排気ガスに対する規制が設けられた。1973年の第一次オイルショックは、ガソリン価格を急騰させたばかりでなく、電気自動車への関心も高めた。
1976年、議会は「Electric and Hybrid Vehicle Research, Development, and Demonstration Act」を可決、これはエネルギー省が、電気自動車とハイブリッド車の研究開発を支援することを認めたものだ。
1970年代、2社が先陣を切った。1社は、2000台超の「CitiCar」を製造したSebring-Vanguard。
この通勤用小型電気自動車の最高速度は、時速44マイル(約71キロ)。通常の巡航速度は時速38マイル(約61キロ)、航続距離は50~60マイル(約80キロ〜97キロ)だった。
Citicarとその派生車は長らくアメリカで最も多く生産された電気自動車だった。だが2011年にテスラ・ロードスターにその座を明け渡した。
もう1社は、Elcar Corporation。
「Elcar」は、イタリアの会社Zagatoが製造した小型電気自動車「Zagato Zele」のこと。アメリカではElcar Corporationが販売したので、この名で知られている。
最高速度は45マイル(約72キロ)、フル充電時の航続距離は60マイル(約97キロ)、価格は4000~4500ドル。
電気自動車はアメリカのみで流行したわけではない。世界中の自動車メーカーがこの技術により多くの資金を注ぎ込むようになった。BMWは1972年の夏季オリンピックで、同社初の電気自動車を発表した。
BMW「1602 E」は1972年に開発され、同年の夏季オリンピックで実際に使用された。
12個のスターター用バッテリーを搭載し、42馬力の電動モーターを動かした。最高速度は時速62マイル(約100キロ)、航続距離37マイル(約60キロ)。
オリンピック主催者がミュンヘン五輪の期間中に使用したが、この車が量産されることはなかった。
1970年代、さらに多くの電気自動車が登場したが、あまり売れなかった。
航続距離、速度、そしてスタイルに限界があったため、電気自動車は大規模に売れることはなく、1980年代に入ると人気は低下した。
1990年代、排気ガス規制により、自動車メーカーは再び電気自動車に目を向けることになった。
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1990年改正大気浄化法と1992年のエネルギー政策法は、電気自動車への投資を再び後押しした。
カリフォルニア州大気資源局も、新たな規制を設け、州内で自動車を販売するメーカーに対し、排気ガスを出さないゼロエミッション車の製造と販売を義務付けた。
この時期の良くも悪くも有名な電気自動車、GM「EV1」。
GM「EV1」は素晴らしい航続距離を誇ったが、会社にとっては利益にならなかった。
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1996年からGMはEV1を1117台生産した。カリフォルニア州、アリゾナ州、ジョージア州でのみリース可能だった。購入はできなかった。
航続距離は約100マイル(約161キロ)。停止状態から時速60マイル(約97キロ)に達するタイムは、わずか7秒。
消費者の反応は好意的だったが、GMにとっては利益にならなかったため、同社はリース終了を待って全車を回収した。GMはその後、ほとんどの車両を破壊し、わずかに40台を博物館などの施設に寄付した。
トヨタ「プリウス」の人気も、電気自動車への関心を高めた。
トヨタ「プリウス」は急速に人気を得た。
Toyota
プリウスは1997年に日本で初めて製造され、2000年には世界中で販売されるようになった。
プリウスは大量生産された最初のハイブリッドカーであり、すぐにメッセージ性のある車となった。
世界中での発売から1年目で、トヨタは約5万台のプリウスを販売した。
2017年1月時点で同社のハイブリッドカーの販売台数は1000万台を超えてた。そのうち600万台以上がプリウスシリーズだ。
そして2006年、テスラが電気自動車への注目をさらに高めた。同社は200マイル(約322キロメートル)の航続距離を誇る電気自動車の計画を発表した。
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2011年、テスラは「テスラ・ロードスター」を市場投入した。航続距離は240マイル(約386キロメートル)を超えたが、価格は10万ドルを上回った。
2010年、日産は電気自動車「リーフ」を日本とアメリカで発売開始。
日産「リーフ」は、テスラ「Model S」が登場する前は最も人気のある電気自動車だった。
Nissan
日産「リーフ」は、航続距離100マイル(約161キロ)、さらに価格もより手頃な約3万ドル。
同車は、高速道路を走行できる電気自動車としては、現在、世界一の販売台数を誇る。2016年12月時点で、世界中での販売台数は25万台を超えた。
2012年6月、テスラは「Model S」を発売。
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Model Sの最初のモデルは、85kWhのバッテリーを搭載、航続距離は265マイル(約426キロ)。当初、発売は2011年の予定だった。
2016年10月、GMは「シボレー・ボルト」を発売して存在感を示した。航続距離は、200マイル(約322キロ)以上。
シボレー・ボルトは、マスマーケット向け電気自動車としては初めて航続距離200マイルを超えた。
Chevrolet
GMは電気自動車に関して長い歴史があるが、同社の電気自動車で航続距離が200マイルを超えたのは、シボレー・ボルトが初めて。
シボレー・ボルトは、航続距離238マイル(約383キロ)。約7500ドルの税金控除後の価格は、約3万ドル。最高速度は時速91マイル(約146キロ)。
テスラは同社初のマスマーケット向け電気自動車「Model 3」を今年末までに投入する予定だ。
Model 3は、シボレー・ボルトと競合することになる。
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テスラはこれまでラグジュアリーな高級車に注力してきたが、2017年、初めて手頃な価格の電気自動車を市場に投入する予定だ。
Model 3の航続距離は200マイル(約322キロ)を超える見込み。税金控除前の価格は3万5000ドルの予定。同社はさらに、手頃な価格のクロスオーバー「Model Y」とEVトラックを投入する計画だ。
これに対し、フォード、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲンなどの既存自動車メーカーは、電気自動車の開発にますます力を入れている。
フォルクスワーゲンは、2020年までに電気自動車「IDコンセプト」を市販化する計画だ。
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今後数年の間に、従来の自動車メーカーから多数の電気自動車が登場する見込み。
フォードは今年1月、今後5年以内にハイブリッド車を含む電気自動車13モデルの発売を目指すと発表した。そのうちの1つは、航続距離が最低300マイル(約483キロ)のSUVタイプの電気自動車だ。
メルセデスとボルボは2019年に電気自動車を発売する予定。フォルクスワーゲンは、2020年までにSUVタイプの電気自動車「IDコンセプト」の市販化を目指すと発表した。
2021年までに発売されるEVの詳細はこちら。
写真:National Museum of American History、Wikimedia Commons/ Cycle and Automobile Trade Journal)、Wikimedia Commons、Wikimedia Commons/Frank Lodge、Wikimedia Commons、Flickr/Alden Jewell、YouTube/BMW、Flickr/Seattle Municipal Archives、Rick Rowen, Creative Commons.、Toyota、Nissan、Chevrolet、YouTube/Motor Trend
[原文:How the electric car became the future of transportation]
(翻訳:Conyac)