無料のメールマガジンに登録

平日17時にBusiness Insider Japanのメルマガをお届け。利用規約を確認


超小形PC「ラズパイ」の生みの親、イギリスの未来に苦言

エベン・アプトン氏

ブレグジットの影響で、イギリス国内でラズパイを生産するコストが大幅に低下した。

Flickr/TechCrunch

イギリスのテック業界の起業家に、ブレグジット(イギリスのEU離脱)について意見を求めたら、その大多数はブレグジットで優秀な海外からの技術者を失うことになると苦言を呈するだろう。

低価格の超小型PC「Raspberry Pi(通称ラズパイ)」を開発したエベン・アプトン(Eben Upton)氏はブレグジットの良し悪しについて意見を表明することに対して慎重な姿勢を保っている。だが、ブレグジットは彼の会社にとって良い結果をもたらしている、少なくとも一つの面においては。ブレグジットの影響で、イギリス国内でラズパイを生産するコストが大幅に低下したのだ。

「短期的には、為替レートによってイギリス国内の製造業者は恩恵を受けている」と彼は語った。

「価格の低下が成功を招くというのは決して良い考え方とは言えない。だが、昨年、大きな利益につながった。我々にとって(ポンド安は)まるでロケット燃料のようだった」

ラズベリーパイ

超小形PC「Raspberry Pi」。

Alphr

「組織としては、ブレグジットに対する意見は持たないことにしている。我々の最大のマーケットはアメリカだ。2番目はドイツ。さほど大きな影響はないだろう」

ポンドの下落は、イギリス国内で製造し、海外で販売している企業に利益をもたらした。Raspberry Piに限った話ではない。彼は、コンピューターの価格はドルが基準となるため「良し悪しだ」と続けた。つまり、イギリス国内では値上げすることになった。

ケンブリッジの「シリコンフェン」は変わりつつある

アプトン氏は、イギリスのエンジニアリング分野の最高の栄誉である、Royal Academy of EngineeringのMacRobert Awardを受賞した。その翌日、我々は彼に話を聞いた。

彼の会社はこれまでに4000万台のRaspberry Piを販売し、大きな成功を収めている。これは月50万台のペースになる。アプトン氏はベンチャーキャピタルやIPOにまつわるゴタゴタを嫌い、非営利のRaspberry Pi財団を設立、関連会社として販売会社を立ち上げた。これは「ミッションを重視した」結果であり、その根本的なゴールは「コンピューティングを再び盛り上げることだ」と彼は述べた。

Raspberry Piは、ケンブリッジで生まれた。ケンブリッジは、ARMのような、成功を収めたハードウェア企業を生み出したことで「シリコンフェン」というニックネームがある。

そのニックネームは、今もふさわしいのだろうか?

「ケンブリッジで私たちが行っていることは変わった」とアプトン氏は言う。

「半導体関連のことは最近、行っていない。ブロードコムのような成熟した会社はあるが、シリコン系のスタートアップやハードウェアチップのスタートアップの数という点では、20年前とは比較にならない。ソフトウェア関連のことをやっていることが多い。Raspberry Piが実際、かなり異質なのは、ハードウェアの会社だということだ」

我々はアプトン氏に、ケンブリッジが生んだもう1つのサクセスストーリー、オートノミー(Autonomy)の創業者であり億万長者のマイク・リンチ(Mike Lynch)氏のことについて聞いた。

マイケル・リンチ氏

オートノミーの創業者であり億万長者のマイク・リンチ氏。

Matt LLoyd/Rex Features

リンチ氏のキャリアについては賛否両論ある。彼はオートノミーをヒューレット・パッカードに売却したが、のちに不正決算が発覚し、同社から訴えられた。その後、彼はインヴォーク・キャピタル(Invoke Capital)を設立し、セキュリティ企業ダークトレース(Darktrace)に投資している。

「彼は自然児だ。時に物事を強力に前に進める、彼のようなとてつもない力を持った人物が必要だ。Raspberry Piはダークトレースの顧客。つまり、我々はマイク・リンチ氏の顧客でもある」

さらに彼は、こう付け加えた。

「ケンブリッジはテクノロジーを突き詰めるには最適な場所。他のことであれば、できる場所は国内にも数多くあるが、テクノロジーに思い切り打ち込める場所はここだけ。難題やテクノロジーに取り組む人がここから巣立っている。そんな場所は他にはない」

ケンブリッジ大学がその原動力になっているとアプトン氏は述べた。

教師の育成にこそ政府は予算を費やすべき

Raspberry Piは子どもたちにプログラミングを教えるという目的から生み出された。だが今では、より広範な目的に使用されている。財団は国内の数多くの学校にプログラミングクラブを設立してきた。それに加えて、イギリスでは2014年からICT教育を刷新し、よりコンピューティングに注力したカリキュラムを導入した。当時、政府は50万ポンド(約7300万円)を教員の研修にあてると発表した。

だが3年近くたった今、成果は芳しくないようだ。ローハンプトン大学(University of Roehampton)の調査によると、イギリス国内でコンピューティングをGCSE(義務教育終了時に受けるテスト、日本のセンター試験に相当する)の科目として選択した生徒がいた学校は28.5%にとどまり、そのうちAレベルに達したのはわずか24%だった。

「教員の研修にもっと注力しなければならない」とアプトン氏。

「教員が新しい科目を教えるには、研修が不可欠だ。私たちは教員の研修にもっと力を入れるよう、ずっと政府に訴え続けている。ようやく道半ばまで来た。だが、良い兆候が見え始めている。政府は教員の研修に投資することを検討し始めている」

[原文:The creator of a super successful £27 computer said Brexit has been 'rocket fuel' for his business

(翻訳:まいるす・ゑびす)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

Popular

あわせて読みたい

新着記事

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み