左から、KDDIの田中社長、auのCMに出演中の斉藤由貴さん(中央)と夏帆さん。
KDDIは7月14日から、毎月割をなくす代わりに月額料金を低価格に設定した2つの新料金プランを投入する。1つめは、データ利用量に応じて料金が自動変動し、月額2980円/1GBからの5段階変動プラン「auピタットプラン」、2つめがデータ利用料20GB(月額6500円)と30GB(月額8500円)の2種類を用意する「auフラットプラン」だ(いずれも5分まで通話無料の「スーパーカケホ」時)。
新プランが夏モデル発表と同時ではなく1カ月強遅れての発表になった理由について、発表会に登壇した田中孝司社長は「システム準備の理由」と説明している。
田中社長は、契約者が格安SIM(MVNO)へと流出していることに危機感を強めている旨を発表会でも明言。今回の2つの新料金プランは「大手3キャリアの料金は高い」と感じる人たちへの回答の意味が強く、実際両プランともに、SIMフリー端末ユーザーなどの「SIMのみの契約」あるいは「格安SIM(MVNO)からの転入」にも適用できる。
大手3キャリア(MNO)のシェア減少に対して、シェアを高めている格安SIM(MVNO)。MVNOの縦軸は15%でありグラフはシェア減退を実質より強く印象づけるものになっているが、「危機感」としてはこの図そのものなのかもしれない。
KDDIは新料金プランのインパクトを「ガツンといく」(田中社長)と表現するが、「ガツン」としているのは料金プラン単体だけではない。
新料金に合わせて、契約翌月から1年間、料金を500円〜1000円割引く「ビッグニュースキャンペーン」と、従来からある、auひかりなどの固定回線などとセット契約することで月額利用料を割引く「auスマートバリュー」との組み合わせだ。これを適用すると、auピタットプランの場合で初年度1980円(データ利用料1GB / 翌年以降は月額2980円)から利用できることになる。
auピタットプランの料金イメージ。各種割引をすべて適用した状態。
auフラットプランの料金イメージ。こちらも各種割引をフルに適用済み。
ただし、今回の新料金プラン、注意したいのは、au端末を新規購入する場合に適用できる機種が「auのAndroid端末のみ」に限定される点だ。現状はiPhoneへの適用はできない。iPhoneへの適用開始時期については、「(新iPhone発表が期待される)秋の発表に向けて協議中」だという。
プラン詳細についてはauの新料金プランページが詳しいが、自分の端末に適用できるのか、格安SIM(MVNOのSIM)ユーザーが転入してどの程度の料金になるのか、といった点が少々ややこしい。
その理由は、1年間毎月1000円が割引かれる「ビッグニュースキャンペーン」が、端末契約を伴う新規契約・機種変更でしか適用できないためだ。たとえば、既存のau契約ユーザーがプラン変更した場合や、他キャリアからMNP転入した人には適用できない。
また、(これもややこしい話なのだが)iPhoneへの契約時の適用は「協議中」ではあるものの、既存のユーザーが情報変更(プラン変更)すれば、実質的にはiPhoneでも選択することはできる。
どういうケースで適用できるのか、できないのかを場合分けしたものが以下だ。
au契約中、もしくは契約予定のユーザー
7月14日以降に新規契約する場合
○ 新プラン、旧プランともに選択できる。月々390円の負担で24カ月目以降の機種変時に端末代負担をゼロにする「アップグレードプログラムEX」も選択可能
✕ 特になし(既存の毎月割のあるプランも並存)
既に発売済みのau夏モデルを購入済みの人が、新プランを適用したい場合
○ プラン変更(情報変更)で新プランの選択は可能
✕
・毎月割がなくなるため、ハイエンド端末などでは毎月の割賦払いが高額になる場合がある。
・1年間1000円が割り引かれる「ビッグニュースキャンペーン」が適用できない※
auのiPhone7やiPhone SEなどアップル端末を使っていて、新プランを契約したい場合
○ プラン変更(情報変更)でプラン適用可能
✕
・割賦の残額がある場合、毎月割がなくなるため、毎月の支払額が増える
・1年間1000円が割り引かれる「ビッグニュースキャンペーン」が適用できない※
iPhone7など非Android端末に新規契約で適用したい場合
✕ プラン提供開始の7/14時点では契約できない
※ビッグニュースキャンペーンは、端末購入を伴う新規・機種変時にしか適用できないため
非au契約ユーザー
SIMフリースマホ(iPhone含む)を使っていて、他キャリアや格安SIMからの転入で「SIMカードのみ」契約したい場合
○ 新料金プランはどちらも問題なく契約可能
✕ 1年間1000円が割り引かれる「ビッグニュースキャンペーン」は適用できない※
※端末購入を伴う新規・機種変時にしか適用できないため
「ピタットプラン」と「フラットプラン」はauにとってどういうプランなのか?
場合分けをすると見えてくるのは、今回の新プランは、相当に「格安SIM対抗」にターゲットを絞り込んだ料金プランだということだ。
かなりパケットを使う人でも、固定回線とセット契約で1000円が割引かれる「auスマートバリュー」を使えば、5分までの通話無料+データ容量20GB付きで5500円に収まる。この金額でauの各種サポートや、海外でも1日980円でデータ使い放題の「世界データ定額」なども入ってくるとなると、俄然お得感がある。
適用端末が限定されるドコモwithと違って、SIM単体でも契約できる点も対ドコモという点でメリットといえる。
その一方で、auで端末を新規購入したり、プラン変更をするユーザーには、お得度を感じにくいかもしれない。月々の支払の見た目を小さく抑える「48回割賦」と、24回目以降の機種変時の残額をauが負担する「アップグレードプログラムEX」(月額390円)は、端末代が実質半額になるとはいえ見方を変えれば2年縛りならぬ「4年縛り」ともとれる。
(アップグレードプログラムEX前提の機種変も含めて)4年以上のスパンで長くauを契約するつもりの人にはお得なものの、2年後を区切りに他キャリアに転出する可能性がある人には、2年後でもまだ端末代の残額が半分(仮に一括10万円の端末なら5万円。大きい)も残っていることになる。
これなら、並存プランとして残る従来の毎月割ありのプランの方が良い、という人は少なくないのではないか。
KDDIがこの絶妙なさじ加減をあえて狙っているとは思わないが、結果として新料金プランへの"出血"として見込むコスト200億円を最小化して、格安SIM流出を減らせることになるなら、なかなか大した舵取りだ。
KDDIのQ2決算発表タイミングで公表されるだろう、格安SIMへの流出状況と新料金プランがどのような結果を生んだのかは、注目しておきたい。
トークセッションにのぞむ斉藤由貴さんと夏帆さん
発表会の後半で田中社長とのトークセッションをする2人。新料金プランのお得ぶりを友達に伝えたいと語っていた。
従来の定額料金プランとの比較
従来のデータ定額プランとの料金比較。各種割引適用前でも、従来プランより安くなっていると強調。