ビジネスマナーとしての電話はアリかナシか ——「電話は時間を奪う」アンチ派が台頭

メールだけでなく、FacebookのメッセージやSlackなどビジネス上のコミュニケーションツールが多様化している一方で、電話をする機会はますます減ってきている。メールなどと違って、電話はいきなり個人の時間に割り込んでくることから、電話に関する嫌悪感も広がっている。

「電話するやつは仕事ができない」「電話は時間のレイプ」「時間泥棒」「百害あって一利なし」。最近、著名人からもそんな声が聞こえるようになった。今時電話はビジネスマナーとしてあり?なし?

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アンチ電話派の言い分

アンチ電話派論者としてもっとも影響力があるのは、著書『多動力』でその「非効率性」を説いている堀江貴文氏だろう。

1日の中には、細かいすき間時間がたくさん発生する。そのすき間時間を利用し、非同期通信によって仕事を効率的に進めていくのだ。 前時代の感覚にとらわれている人は、コミュニケーションというのは、お互い同時間に行う同期通信でなければ意図が伝わらないと盲信している。そういう人が僕の電話を平気で鳴らし、人の仕事をジャマするのだ。 驚くべきことに、メールやファクスを送ったあとに「今メールを送りましたから」「今ファクスしましたから」と電話を鳴らしてくるバカもいる。(堀江貴文氏「電話してくる人とは仕事するな」/東洋経済オンライン

LINE上級執行役員の田端信太郎氏もアンチ電話の論陣を張る。

ブロガー・作家として活躍するはあちゅう氏も“暴力的”に時間を奪う電話を嫌悪している。

知人がネット上で電話のことを「時間のレイプ」と例えていましたが、私もこの考え方に賛成です。というのも、相手の都合で自分の時間を突然搾取される、そんな電話の乱暴さがとにかく苦手なんです。(「電話はかけてこないで」はあちゅうが考える新マナー/日経ウーマンオンライン

ブロガー・アフィリエイターのイケダハヤト氏は以下の理由で電話に出ないと公言している。

・誰から掛かってきているか分からない

・断りなしに突然掛かってくる

・他のコミュニケーションツールの方が便利

電話が嫌いな3つの理由/まだ東京で消耗してるの?

先日BUSINESS INSIDER JAPANで掲載され大きな反響を読んだ記事「週100時間働くイーロン・マスクの超人的な1日」では、イーロン・マスク氏も電話に出ないキャラであることが判明した。

瞬発的に答えなければならないのが嫌

ビジネスの場でもSNSを使うケースも増えてきている。

ビジネスの場でもLINEなどのSNSを使うケースも増えてきている。

コミュニケーション=SNSでのメッセージであるミレニアル世代にとっても、電話というコミュニケーションを苦手だと感じている人が多い。

「前いた会社では、新入社員が電話を受ける習慣がありました。毎日営業などでかかってくる電話はかなり多く、担当者への取次も含めると新人はそれだけで1日終わってしまう、ということも日常茶飯事で、他の仕事が進まなかった」(通信事業系勤務、女性)

上司や同僚の代わりに電話を受けなければならないことに不条理さを感じる人も。

「マーケティング部の先輩たちには営業電話を回すと嫌な顔をされる。徹底して営業電話を回さず私が受けるようにしたら、『マーケのファイヤーウォール』と呼ばれ、喜ばれたこともあります(笑)」(人材系サービス勤務、女性)

プライベートですら電話をしない、したくない人も。

「普段電話をしないので、普通の電話のテンションがわからない。テンションを上げすぎたり下げすぎたりしてしまって困っています」(メディア事業勤務、男性)

「家族や友だちからでも、電話は出ません。瞬発的に答えなければいけないのが嫌だし、決まってないことだったらどうせメッセすることになる。電話がかかってきたら無視して、『なに?』ってメッセで返します」(広告事業勤務、女性)

ビジネスルールとしてはどうなのか

パーソル総合研究所の取締役執行役員、岩崎真也氏

パーソル総合研究所の取締役執行役員、岩崎真也氏。

「いまはコミュニケーションツールの使い方が多様化している。ビジネスパーソンにもっとも求められているのは、相手の立場に立って考え、ツールを使い分けるスキルなのではないでしょうか

総合人材サービス企業として企業のビジネスマナー研修も幅広く手がけるパーソル総合研究所の取締役執行役員、岩崎真也氏はこう語る。

スピードが第一の今のビジネス環境。相手の状況を考慮したコミュニケーションの必要性はますます高まっている。

一方で、メールやSNSといった一方通行のコミュニケーションは、相手がどのように思っているかがわかりづらい。「電話はダメ」というマニュアル化した考え方は、逆に非効率になってしまうこともある、と岩崎氏。

話を聞いたミレニアル世代にも、新入社員の頃は電話が嫌いだったが今は好きになった、という「出戻り派」もいた。

「何よりも早く話が進むのがいいですね。自分が仕事のイニシアティブをとっていれば、節目のタイミングで電話をすることでスムーズに仕事が進むなぁと感じています」(広告マーケティング企業勤務、女性)

よりコミュニケーションツールが多様化し、密なコミュニケーションが重要になった今だからこそ、相手や場面に合ったツールを自分で考えて選べるようになる必要がある。また、ビジネスマナーを教える立場である上司にも、SNSの利便性を理解した上で、その時にあった最適なツールを部下に教えられるようになることが求められている。

ところで、ビジネスマナー研修でSNSの使い方を指導してほしいという企業のニーズはあるのだろうか?

「それはまだ受けていないですね。でも、これから出てくる可能性は大いにあると思います。動くスタンプは使うな、とかね(笑)」(岩崎氏)

(撮影:西山里緒)

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