auが「200億円減収」覚悟の新料金は本当に安い? KDDI田中社長の本音

KDDI新料金発表

新料金発表会に登場した、auのCMに出演中の斉藤由貴さん(左)と夏帆さん。田中社長は新料金プランとキャンペーンについて「完璧」だと自信をみせる。

KDDIの「格安スマホ潰し」とも言える新料金プラン「auピタットプラン」。音声通話込みで月額1980円から利用できるというのが魅力だ。1980円といえば、ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルが主力としている料金プランと同額。料金設定からも格安スマホ市場で独走するワイモバイルを狙い撃ちしているのがよくわかる。

田中孝司社長は「とにかくauのユーザーが減ってまずい」と、新プラン導入の経緯を語る。

「ピタットプラン」は、ユーザーのデータ使用量に応じて、請求される料金が変わるという従量制のプランだ。各種キャンペーンを適用することで、月間使用量が1GB以下なら1980円、2GB以下は2980円、3GB以下で3480円、5GB以下は4480円、5GBを超えると5480円となる。毎月のように5GBを超えるのであれば、20GBもしくは30GB使える「auフラットプラン」が用意されている。

今回、安価な料金プランを実現できた背景を「月額料金を下げるには(端末と料金の)分離プランに行かざるを得ない」と語る。

これまでは高めの基本料金設定をする代わりに、そこから端末代金を毎月、割り引く原資を出すことで、高額なスマホを安価に買えるように見える仕組みとなっていた。「端末は実質0円だが、毎月の料金は高い」というわけだ。auの新料金プランは端末代金の割引を辞める代わりに、毎月の料金が安くなる。

auピタットプラン

auピタットプラン

auフラットプラン

auフラットプラン

ちなみに、これまでの端末代金を毎月、割り引いてくれる従来型のプランも併売されることになる。ユーザーとしては、2つの買い方から選択することができる。

では、実際のところ、 新旧、どちらのプランがユーザーにとってお得なのか? 田中社長は「細かく見ると、新しいプランがいい」と語る。

KDDIとしては、今回の新料金プランの導入で、200億円規模の減収を見込む。田中社長も「目先の減収は仕方ない」とあきらめ顔だ。発表当日は、株価が一気に下がり、KDDI関係者が青ざめたほどだ。

KDDIが減収するということは、それだけ、ユーザーからの収入が減るということだ。つまり、ユーザーの支払額が減るというわけであり、ユーザーとしては新料金プランを選んだ方が得ということなのだろう。

KDDI関係者は「今回の新料金プランは、キャリアにとっての収益の柱である通信量収入にメスを入れるため、影響が大きい」と本音を漏らす。裏を返せば、 新料金プランは売れないほうが、KDDIにとってはありがたい。まさに新料金プランは失敗した方がKDDIにとって安泰というわけだ。

"コンテンツのオープン化"と"ライフデザイン収益"で穴埋め

KDDI田中社長

新料金発表にあわせ、インタビューに応じたKDDIの田中孝司社長。

撮影:石川温

KDDIとしては、人気の三太郎を起用した「auからのビッグニュース」というCMを大量に投下して、月額1980円でスマホが持てることをアピールしている。もちろん、これは、auユーザーで格安スマホに興味がある人に向けた訴求という点が大きい。「格安スマホに移行しなくてもauでも安くなりますよ」と宣伝することで、なんとかユーザーを囲い込みたい算段だ。

ただ現在、毎月、端末の購入補助割引を受けているユーザーが新料金プランに移行すると、毎月割が消滅するという条件が存在する。そのため、端末を購入して2年未満のユーザーは新料金プランにすぐに移行しにくいという状況にある。

KDDIとしては、表向きは1980円のプランで格安スマホへの流出を阻止しようとしつつ、すぐには新料金プランに移行しにくい手を打った。

とはいえ、時間が経てば経つほど、新料金プランのユーザーが増え、収益にマイナス影響を与えるのは間違いない。そこで、KDDIでは2つの点を強化し、収益の穴を埋めようとしている。

ひとつがコンテンツのオープン化だ。今回の新料金プランはSIMフリースマホを持ち込んでの契約に対応している。田中社長は「みなさんが、(対応しろと)言うから対応した」と言う。

さらにauのコンテンツサービスについても「まだ正式には決まっていないが、auが提供するコンテンツやアプリなどはオープン化していく方向だ」と明らかにした。これまでKDDIは「auの庭」と言われるほど、"auが提供するコンテンツサービスはauユーザーだけが利用できる"というスタンスだった。dマガジンなどをオープンに提供するNTTドコモとは対照的な戦略だ。

しかし、KDDIではその姿勢を変え、SIMフリースマホでも、auのコンテンツを使えるようにしていくという。また他社ユーザーに向けてもコンテンツで稼ぐ考えだ。とはいえ、コンテンツの収入額は決して高いものではない。

そんなななか、KDDIが注力しているのがライフデザイン企業への進化だ。KDDIでは、銀行業や保険、電気など、通信業以外の分野に積極的に進出し、ユーザーのライフデザインを手がけようとしている。KDDI関係者は「ライフデザイン関連が計画以上に順調にきている」という。

KDDIとしては、こうした通信以外の収益が伸びていることもあり、本丸である「通信料の値下げ」に腹をくくったようだ。

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