就活は3年夏の「イン活」で決まる ——インターンが主戦場の就活最新事情ぶっちゃけ座談会

座談会に参加した6人の集合写真

売り手市場といわれる2018卒の就活はどんな状況だったのか。

バブル期を上回る人手不足となり、2018年卒業予定の学生の就職活動は圧倒的な売り手市場といわれる。一方で、就活は「水面下の情報戦」が激化している。日本経済団体連合会(経団連)企業を中心とした大手の採用面接の選考解禁は6月だが、外資系やベンチャー企業が解禁を待たずに採用を始めているのはすでに“常識”となり、年々参加が増える3年生のインターンの時点から、実質的に学生を確保する動きが増えている。文部科学省は学業への支障を懸念し、「採用直結のインターン」を認めていないが、実態は大きく違うようだ。ホンネとタテマエが錯綜し、複雑化する就活のリアルを、来春卒業予定の6人の学生に語ってもらった。

斎藤航大さん(24) :慶應義塾大総合政策学部4年、金融系に内定

若生日向(24):専修大二部法学部4年、就活継続中

志藤真由子(21):千葉大工学部4年、不動産系内定

田中孝明(21):中央大商学部4年、就活継続中

宇津木芳穂(21):東京学芸大教育学部4年、外資系メーカー内定

牛丸維人(22):一橋大社会学部4年、IT企業内定

「絶対にインターン行かなきゃ」

—— 6月から経団連企業の選考が解禁され、7月に入りましたが(取材は7月7日)、みなさんの就活はどういう状況ですか。

斎藤さん:僕は6月1日に金融系の企業から内定をもらいました。かなり遅いんですけど、5月に就活をしようと決意して、インターン先の上司が紹介してくれた企業に行くことにしました。だから1社しか見ていません。リクルートスーツも5〜6回くらいしか着ていないです。

牛丸さん:僕は1年間休学して留学したので、同期より1年遅れて就活を始めました。同期が夏のインターン先から内定をもらっているのを見て、絶対にインターンに行かなきゃと。去年の6月にインターンに応募し就活をスタートさせました。コンサルとかIT事業、広告代理店のインターンに参加して、それが選考につながったこともありますね。12月に最初の内定をもらい、6月に志望していた企業に内定をもらって就活を終えました。

志藤さん:私は就活が始まる直前までダンスサークルの活動に集中していて、将来のことは2月頃からきちんと考え始めました。3月の情報解禁と同時期に動き出し、当初はやってみたかった不動産業界を志望しました。それで5月に不動産系の企業から内定をもらったんですが、その後に「やりたい仕事だけでなく働き方にも目を向けてみよう」と思い始めて、IT系の企業でも就活を続行したんです。でも結局通らず、就活を終わらせました。

座談会で語る田中さん

「4月くらいに行きたい企業があって、調べたらもう応募を締め切っていました」と語る田中さん(中央)

宇津木さん:私の大学は周りは教員か公務員になる人が多くて、就職支援センターも全然やってないんですね。「やばい!」と思って就活を意識し始めました。2年生の春から3年生の夏までドイツに留学していたんですが、留学先の先輩が就活する姿を見て、留学中の去年の6月に夏のインターンに応募しました。日本に戻れないのでスカイプで面接してもらって。帰国後にインターンなど本格的に就活を始め、1月に最初の内定が出て、最終的に5社から内定をもらいました。

結局外資系の企業に決めたんですが、最後まで日系の大手メーカーと悩んだんですよ。私は褒められて伸びるタイプで(笑)、大企業の新入社員だと同期が多いから注目してもらえなさそうだと。採用人数が少なくて丁寧に育成してもらえそうな、外資企業に決めました。

「行動が遅かったのが原因」

田中さん:僕は今も就活中です。始めたのは2月から。大学1〜2年生の時に所属していたイベントサークルの先輩の紹介で、あるメーカーの特別選考ルートに進みました。そこで初めて就活の雰囲気を知った感じですね。結局ダメだったんですが、その後も業界を絞らず合同説明会や大学の説明会に行っています。僕は作曲をしていて、厳しいかもしれないけれど、将来音楽をやっていきたいという思いがあって。気持ちになかなか火がつかず、今に至った感じです。6月に就活を一旦、中断していたんですが(企業側から採用したい学生に連絡をする)オファーサイトに登録して就活を続けています。

若生さん:僕も就活を続けています。志望しているのは人材業界とウェブの広告代理店で、3月の情報解禁とともに就活を始めました。僕がまだ内定をもらえていないのは、単純に能力不足と行動が遅かったのが原因だと思います。その2つの業界の、どんな小さい企業でもいいから働きたいですね。

正直者は乗り遅れる?

——6月の選考解禁についてどう思いますか?

若生さん:6月の選考解禁は実質形骸化していることは、就活生じゃなくても大学生なら誰でも知ってることなんじゃないですか。常識に近い感じ。

志藤さん:3月から面接が随時始まっていて、5月末に選考解禁のニュースを見て「え、解禁って6月だったんだ!」と知りました(笑)。

田中さん:4月くらいに行きたい企業があって、調べたらもう応募を締め切ってたんですね。早いじゃないですか。でも、早いところって人気の企業で学生も多く集まるから、早く締め切るのは正しいのかもなと思いました。本当に志望している学生は早くから情報をチェックするし、選考解禁より早く締め切れば、本気で志望している学生を選べるのかも。

——学業に支障が出ることへの懸念から、経団連企業を中心に選考解禁時期を決めています。実際、支障ありますか。

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斎藤さん(左)「選考解禁時期を決めるのにあまり効果は感じない」

斎藤さん:僕の周りの学生は、就活に関わらず飲み会で夜が遅かったとかで大学に来ないこともあるし(笑)、選考解禁時期を決める効果はあんまりない気がします。文科省も0か100かで決めるんじゃなくて、もっと柔軟に対応してくれればいいのにと思いますね。でも、就活を早く始めている人って、情報をキャッチアップできる能力があると思うんです。企業もそういう人を求めていて、学生時代に頑張ってきたものがある人は、やっぱりそういう能力に長けている気がします。正直者はちょっと遅れちゃってるのかなと

若生さん:1年時にアルバイトのためにあまり大学に行ってなくて単位に追われてるので(笑)、就活との両立は結構きついです。僕は夜間に大学に通っているので、夜に説明会が入っていると大変ですね。完全に自分の責任ではあるんですが。

宇津木さん:教員や公務員を目指している周りの友人は、ちょうど民間の採用選考と試験が被っているので本当に大変そうです。教員採用試験の合間にES(エントリーシート)を書いたり、教育実習が終わった後へろへろになりながら説明会に行ったり。公務員試験とか教員採用試験とか、将来の選択肢が時期の問題によって押しつぶされてしまうのはもったいないと思いますね。

牛丸さんインターン選考があった去年の6月と、今年の4月5月が特に忙しかったんですが、授業やゼミに選考で行けないのでそこは大変でした。教授も就活が忙しいことを分かってくれていてたので、なんとかやりくりしました。

結局、大学名で進路決まっている?

——就活中つらかったことはありましたか。

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志藤さん(右)「最終面接で落とされ、振られた気分に」

志藤さん:最終面接でひっくり返ったことですかね。役員面談が終わった後のメールで「余程のことがない限り内定」といった趣旨のことが書いてあって、「これは内定きた!」と思いました。それで最後の社長面談で、結局落ちちゃって。行きたい企業だったので、なんか振られた気分っていうか。向こうからすごいデートに誘ってきて、次会ったら付き合おうって言われてたのに、「俺、彼女いるわ」って言われたみたいな(笑)

宇津木さんいやだったのは、大学名が早期選考に進む基準になっているように感じたことです。日系大手の選考のときに4月5月に早期選考があったんですが、選考に集まってきた人が東大・京大・一橋・早稲田・慶應の5大学ばっかりで。私はインターンルートで選考に進んだんですが、周りはOB・OGとの座談会から来てたんです。結局大学1年生の時にある程度進路が決まってるんじゃん、あーあって感じで。

——これまでの就活を振り返って、これはやっておいてよかったと思うことは何ですか?

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牛丸さん「インターンへの参加は選考に進む上で重要」

斎藤さん:1年弱くらい外資系の大手IT企業で長期インターンをしていて、それがかなり力になりました。当時、東京でサービス開始したばかりで社員が6人しかいなかった。インターンだけど社員みたいな形で働いていました。

だから、就活を始める前から「きっと社会人になっても自分は仕事ができる」と思えて、自信がつきました。外資の大きな企業がどう動いているかも身近で見られたし、インターンの経験が糧になっている部分も大きいです。この話は人事の人にもよく聞かれました。

田中さん:オファーサイトを使ったことです。プロフィールを書けば向こうが興味を持ってくれるので、効率が上がりました。

志藤さん:ダンスを頑張ってきたことですね。就活をもっと早く始めればよかったという思いもあるんですけど、最後までダンスを頑張れたのは良かったです。自分は頑張ってきたことがあるっていうのは自信につながったし、面接での武器にもなりました。

エントリーシート100社の学生ざらに

——逆に、就活中これをしておけばよかったということは?

座談会で語る若生さん

若生さん「日本で就活するなら絶対に早く始めるべき」

若生さん:日本で就活するなら、絶対に早くから始めるべきだと思いました。僕は結構馬鹿正直で、(採用直結が認められていない)インターンとかも意味ないと思ってたんですが、一度ワンデイ・インターンに行った時にみんな人事とのコネを持っていて、そういうコネがあるのも自信につながるのかなと。

田中さん:もっと自分を「つくって」おけばよかったと思いますね。面接でも全部正直に話してました。質問されても「その質問意味あるんですか?」って聞いちゃって。

——どんな質問ですか?

田中さん:例えば「あなたはうちの会社に入って、将来どういう場面でどんな活躍をしていますか?」とか。入ってみないと分かんないじゃないですか。「断言できません」と答えたらすごい嫌な顔されて(笑)。他にも、「複数内定をもらったらどんな基準で企業を選びますか?」とか。実際にもらった企業を比較して考えるものじゃないですか。だから「内定もらってないんでもらわないと分からないです」って答えたらこれも嫌な顔されましたね。

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宇津木さん「新卒の就職はゴールじゃない」

宇津木さん私はもっといろいろな企業を見ておいてもよかったと思いますね。もともとレゴが好きで就職したいと思っていたんですが、本社は新卒採用していなくて。入社するにはスキルや経験が必要だと分かりました。それで、新卒(の就職)がゴールじゃないなと。サービスそのものは詳しくなくても、自分が成長できる環境に行こうと思って内定先を選びました。ただ、新卒の段階で、サービスにも詳しくて、成長もできる企業があればもっとよかったのかな、とも思いますが、結局7社しか選考を受けてないし。もちろん、いまは内定した企業でまずは頑張るつもりです。

——7社って少ないんですか?

宇津木さん:斎藤さんは1社だからなんとも言えないんですけど(笑)、同じ高校だった女の子は100社とかエントリーしてて。

斎藤さん:え、ES(エントリーシート)100社?

宇津木さん:そう。でもざらにいるよね?

志藤さん:大学外の友達も含めるとけっこういますね。毎日ESに追われてるとか。

宇津木さん面接も1日4件回るみたいで。深夜3時までES書いて、3時間寝て起きて面接に行くって言ってました。でもたくさん受けるから内容はやっぱり薄くなってしまうみたいです。自分が何がしたいのか、ではなく、その会社にどうやって入りたいかに注目しちゃってる面もあるのかなと思います

牛丸さん2〜3年生の頃に、もっと社会人と会っておけばよかったと思いますね。去年と今年で行きたい企業って結構変わってて。選考を進める中で、全然情報足りてないと思いました。2〜3年生は学業に割く時間が多いのですが、もう少し社会との接点を持っていればよかった。

斎藤さん: 1〜2年生の頃に長期インターンに行くような環境があればよかったと思ってます。長期インターンをしてその企業のビジョンに共感して入社する採用の仕組みがもっと一般的になって、1〜2年生のうちにそういう経験ができれば、選択肢も変わってきたのかなと。皮肉ですけど、いわゆる「就活」をしてしまっていること自体が、反省点なのかもしれないですね。

(撮影:今村拓馬)

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