注目のスタートアップ17社をチェック!
Brandless
2017年上半期、シリコン・バレーがウーバーの騒動に振り回されている間に、新たな企業が次々と設立された。世界を変えるために、あるいは次のユニコーン企業になるために、ただ成功するビジネスを築くために。
Business Insiderは、起業家やベンチャーキャピタリストに取材し、資金調達データを調査。2017年上半期に最高のスタートを切ったスタートアップを探った。中には、事業内容を公開して公式にスタートした企業や、創業から間もないアーリーステージの企業もある。
VRアミューズメント企業から、テスラと謎めいた関係があるリサイクル関連のスタートアップまで、今年上半期注目の17社を紹介しよう。
Essential:創業者はAndroidの生みの親。アップルとサムスンに戦いを仕掛けている。
Essentialの創業者兼CEOアンディ・ルービン氏
Brian Ach/Getty
事業概要:アンディ・ルービン(Andy Rubin)氏が創業したエッセンシャル(Essential)は、iPhoneやGalaxyに対抗する新たなスマートフォンを作り出し、シンプルに「Essential Phone」と名付けた。
ルービン氏はAndroid OSの生みの親として知られる。同OSをグーグルに売却、同社に入り、世界で最も使われているスマートフォン用OSにまで育て上げた。2014年、グーグルを退社し、スタートアップインキュベーターを設立。その傘下でエッセンシャルを立ち上げた。
数年にわたり秘密裏に開発に携わった後、ルービン氏は2017年5月に新しいスマートフォンを発表。Essential Phoneは、同社にとっては遠大なゴールへの第一歩にすぎない。同社は他にも、照明からトースターまで、あらゆるスマート家電を管理できるスマートホームハブに取り組んでいる。
資金調達:ブルームバーグによると、Redpoint Venturesなどから3億3000万ドルを調達。
ウェブサイト:www.essential.com
Brandless:ミレニアル世代のための新しいP&Gを目指す。
Brandlessの共同創業者、ティナ・シャーキー(Tina Sharkey)氏とイド・レフラー(Ido Leffler)氏
Brandless
事業概要:ブランドレス(Brandless)は、台所洗剤からオリーブオイル、キッチンナイフまであらゆる日用品を取り扱うEC企業。自社製品の価格を全て3ドルに統一している。
6月上旬に公式にオープン。消費者は一般的に考えらえているほどブランドを気にしないという考え方に基づき、全ての自社製品を独自ブランド「Brandless」で販売。パッケージには、大きなブランドロゴや派手なキャッチフレーズの代わりに、品名や原材料名だけが記載されている。
資金調達:Cowboy Ventures、Redpoint Ventures、Google Venturesなどから、5000万ドルを調達。
ウェブサイト:brandless.com
Forward:SFドラマに登場するかのような、最先端の病院。
Forwardの自動ボディスキャナー
Forward
事業概要:未来を先取りするかのような医療施設。デザインしたのは、元グーグル社員と元ウーバー社員。SFドラマ「ウエストワールド」に出てくる病院のようだ。
今年1月にオープン。コンシェルジュ型医療サービスの未来形だ。特徴は、最先端の診断ツール、医師に代わって診察を行うAIシステム、月額149ドルのハイエンドな会員制サービス。
資金調達:不明。
ウェブサイト:www.goforward.com
NomadicVR:エンターテインメントの未来は、ゲームセンターにあり。
NomadicVRの没入型VRゲーム。
NomadicVR
事業概要:VR(仮想現実)ゲームのクリエーター。利用者はVRヘッドセットとPC入りバックパックを装着し、VR空間を歩き回る。
同社は秘密裏に事業を進めてきたが、今年3月に公表。多くの投資家が、VRはエンターテインメントの未来に大きく貢献すると考えている、とても良いタイミングだった。公開間もないころのレビューによると、NomadicVRによるゲーム体験は「極めて驚くべきもの」で、懐疑派も納得させる出来だ。
資金調達:Horizons Ventures、Maveron、Paul Allen’s Vulcan Capitalなどから、600万ドルを調達。
ウェブサイト:nomadicvr.net
Hound Labs:息を吹き込んで、大麻の反応をチェック。
事業概要:呼気中の大麻を検知できる機器を開発。検知器「Hound」は、大麻に含まれる「テトラヒドロカンナビノール」(THC)を呼気から検出し、濃度を計測する。
ユーザーがマウスピースから息を吹き込むと、呼気は使い捨てカートリッジを通過。その際、化学反応によって呼気からTHCを抽出し、自動的に濃度を計算する。初の臨床試験を開始したばかりで、製品のリリースは年末を予定している。
同社は製品をまず警察などに売り込む考えだ。同社は、FacebookやSnapchat、ウーバーなどに初期から投資してきた投資会社Benchmarkのサポートを受けてきた。
資金調達:Benchmarkから、810万ドルを調達。
ウェブサイト:houndlabs.com
DeepMap:自動運転車向けの地図データを作成。
事業概要:自動運転車向けの地図の作成。
自動運転車の開発で最も難しいことの1つは、道路を「認識」するために必要なデータを自動運転車に与えることだ。DeepMapはこの分野に挑戦している。創業メンバーは元グーグル社員たち。大手自動車メーカーと契約して、地図データを提供することを目指している。
同社の他にも、自動運転車向けの地図作成に取り組んでいる企業はある。だが、Deepmapは小規模なスタートアップであるため、多くの自動車メーカーが抱えているようなしがらみがなく、ライセンス契約の相手を選ばない。
資金調達:Andressen Horowitz、Accelなどから3200万ドルを調達。
ウェブサイト: www.deepmap.ai
Redwood Materials:テスラと関係がある謎のスタートアップ。
テスラのCTO、J.B.ストラウベル氏(中央)。Redwood Materialsの幹部として名を連ねている。
Reuters/James Glover
事業概要:リサイクル関連に取り組んでいると思われる、謎のスタートアップ。
同社のウェブサイトには、情報がほとんどない。あるのは、「あなたの資源の価値を解き放て(unlock the value of your materials)」というスローガンと、「資源のリサイクル、再製造、再利用のための最先端テクノロジーとプロセス開発」という短い説明文くらいだ。
それ以外のことは、テスラの幹部2人がこの会社の経営に加わっていることも含めて、謎のままだ。4月の資金調達報告書には、テスラのCTO(最高技術責任者)JB・ストローベル(JB Straubel)氏と、同社の特別プロジェクト責任者アンドリュー・スティーブンソン(Andrew Stevenson)氏が、幹部として名を連ねている。
資金調達:200万ドル、出資者は不明。
ウェブサイト:www.redwoodmaterialsinc.com
Virta Health:2型糖尿病治療の変革を目指す。
Virtaの担当ヘルスコーチと話す患者
Virta Health
事業概要:患者個人に合わせた2型糖尿病治療の提供を目指すオンライン医療企業。
不動産関連企業TruliaとZillowの創業者サム・インキネン(Sam Inkinen)氏が、自らの経験に基づいて新たに立ち上げた。同氏は、2004年に2型糖尿病と診断された。
医師、ヘルスコーチ、アルゴリズムの支援により、患者に合わせた適切な治療法を設計し、「糖尿病の根本的なメカニズムに取り組み、糖尿病治療の枠組みを管理から逆転させる」と同社は述べている。目標はその全てを、投薬や手術なしで行うことだ。
資金調達:Venrock、Allen & Company、Obvious Ventureなどから、3700万ドルを調達。
ウェブサイト:www.virtahealth.com
Atrium LTS:100人近い投資家の支援を得て、法務手続きの革新を目指す。
Atriumチーム。
Atrium LTS
事業概要:法務関連手続きの自動化を目指すソフトウエア企業。
Justin.TVの共同創業者ジャスティン・カン(Justin Kan)氏が立ち上げた。法務サービスの「革命化」というやや抽象的なビジョンを掲げている。
「我々が構築した技術によって、顧客の想像を越える充実した法務サービスを提供する。コミュニケーションとサービスのスピードを向上させる」 と同社の求人情報に記されている。
100人近い投資家が出資しており、テッククランチによると、これはシリコンバレー史上最大の「パーティーラウンド(大勢の投資家がいるラウンド)」のひとつだ。
資金調達:100人近い投資家から、1050万ドルを調達。
ウェブサイト:www.atriumlts.com
Cover:高騰する不動産市場に、小さな、プレハブ住宅を提案。
Coverのプレハブ住宅
Cover
事業概要:建築事務所とテック企業を掛け合わせたような企業。機械学習や航空業界、自動車業界で使われる手法を活用して、居住空間のプランニングや設計、施工を行っている。
この春、同社初のプレハブ住宅を発表。裏庭のアトリエ、離れ、ホームオフィス、ゲストルームなど、いわゆるADU(accessory dwelling units:付帯住宅)と呼ばれる、さまざまな広さのスペースに対応可能だ。面積は300~1200平方フィート(約30~110平方メートル)、生活費が高騰している都市部において、住宅供給量を増やすことができると期待されている。
資金調達:General CatalystとKhosla Venturesから、160万ドルを調達。
ウェブサイト:cover.build
Packagd:ミレニアル世代向けのテレビ通販を目指す。
新しいヘッドフォンをレビューしているUnboxedの司会者
Packagd
事業概要:テレビ通販タイプの小売事業展開を目指すメディア企業。
創業者は、Huluの前CTO。人気司会者が商品を開封して、紹介する動画を配信している。ユーザーは、同社のアプリで動画を視聴し、紹介された商品は動画再生中に「カートに入れる」ボタンを押すだけで購入できる。
同社初のアプリ「Unboxed」はテック系製品に特化。同社は既にマイクロソフトやBest Buyなどの大手企業とスポンサー契約を結んでいる。
資金調達:Kleiner Perkins、Forerunner Ventures、GVから、750万ドルを調達。
ウェブサイト:packagd.com
Voyage:自動運転タクシーを手頃に、あるいは無料に。
Voyageの自動運転タクシー
Voyage
事業概要:自動運転車のスタートアップ。ゼロから車両を開発するのではなく、既存の量産車を利用して、より早く自動運転車を実現することを目指している。
同社の取り組みは、自動運転車の開発に留まらない。乗客が自動運転車と対話し、音声認識によって目的地やBGMを伝える仕組みを開発している。
自動運転車のエンジニアに対して、オンライン教育を行うスタートアップUdacityからスピンアウトした。
資金調達:シードラウンドで、Khosla Ventures、Initialized Capital、Charles River Venturesなどから調達。金額は不明。
ウェブサイト:voyage.auto
Instrumental:Galaxy Note 7のような大失敗の防止を目指す。
Instrumentalの共同創業者サム・ワイス(Sam Weiss)氏とアンナ・シェドレツキー(Anna Shedletsky)氏
Instrumental
事業概要:工場の組み立てラインを監視し、機械学習を利用することで、不良品の早期検出を目指す。
創業者は元アップルのエンジニア2人。同社は、企業が多額の損失を出す前に、製造中の問題をより簡単に発見する技術を開発している。製造中の全ての製品を撮影するボックス型の機器を開発。現場にいなくても、製造ラインで何が起きているかを確認できる。
だが本当に重要なのはソフトウエア。同社は機械学習を利用することで、人よりも早い段階で不良品を検出することを目指している。
資金調達:Eclipse Ventures、First Round、Root Venturesなどから、1000万ドルを調達。
ウェブサイト:www.instrumental.com
Misty Robotics:全ての人のためのロボットを。
Misty Roboticの謎めいたウェブサイト
Misty Robotics
事業概要:家庭用・オフィス用ロボットの開発。
同社は、Spheroからスピンオフした企業。Spheroはスター・ウォーズに登場したBB-8ドロイドのおもちゃを製造し、トイロボットの面白さを世界に知らしめた。Misty Roboticsは、おもちゃではなく、実用ロボットを開発している。
「ロボットは、すぐに友人、チームメイト、家族の一員として扱われることになる。役に立つ仕事をこなし、安全を守り、SFでしか見たことがないような、愉快でフレンドリーな方法で人とやりとりする」と同社は創業時に述べている。
資金調達:Venrock、Foundry Groupなどから、1150万ドルを調達。
ウェブサイト:mistyrobotics.com
Obsidian Security:セキュリティーのオールスターが、企業データを守る。
Obsidianの共同創業者、マット・ウルフ(Matt Wolff)氏、グレン・チザム(Glenn Chisholm)氏、ベン・ジョンソン(Ben Johnson)氏。
Obsidian Security
事業概要:企業の顧客データの安全性向上に注力するセキュリティ関連スタートアップ。
同社は、CylanceやCarbon Blackからセキュリティーの実力者たちを集めたことで、投資家から注目されている。特に、企業が保有するデータセンターと、クラウドを連携させるハイブリッド・クラウドにおけるデータ保護に取り組んでいる。また、AIと機械学習を活用して、顧客に応じてセキュリティ施策をカスタマイズすることも計画している。
資金調達:Greylockから950万ドルを調達。
ウェブサイト:www.obsidiansecurity.com
Clark:家庭教師を支援。
Clarkのチーム
Clark/Facebook
事業概要:家庭教師のビジネス立ち上げと拡大を支援する教育関連スタートアップ。
家庭教師が、自身の事業をマネジメントできるスマートアシスタントを開発。同アプリは、アップルの新番組「Planet of the Apps」で取り上げられる前から話題になっていた。とはいえ、番組で紹介されたおかげで、200万ドルの出資を獲得した。
資金調達:Light Speed Venture Partners、human Ventures、Winklevoss Capitalなどから350万ドルを調達。
ウェブサイト:www.hiclark.com
VoiceOps:AIを使って、電話営業をスマート化。
VoiceOpsの共同創業者ネイト・ベッカー(Nate Becker)氏、ダリア・エブドキモバ(Daria Evdokimova)氏、そしてイーサン・バリド(Ethan Barhydt)氏
VoiceOps
事業概要:電話セールスの分析ソフトウェアを開発。
同社は、セールスチームの電話営業を分析し、改善策を発見するソフトウエアを開発している。効果的な電話セールスとそうでないものを判別するために、大量の通話を分析することに注力している。そこが、個人通話の分析で潤沢な資金を調達した競合サービスChorus.Aiと異なる点だ。
資金調達:テッククランチによると、Accel、Y Combinator、Founder’s Fund、Lowercase Capitalから197万5000ドルを調達。
ウェブサイト:voiceops.com
sourse:Brandless、Forward、NomadicVR、Hound Labs、Accel、Virta Health、Atrium LTS、Cover、Packagd、Voyage、Instrumental、Misty Robotics、Obsidian Security、Clark/Facebook、VoiceOps
[原文:The 17 best new startups that have launched this year]
(翻訳:忍足 亜輝)