北朝鮮のミサイルを迎撃すると、アメリカとロシアが核戦争に?

プーチン大統領とミサイル

自国の領空内に向かって正体不明のミサイルが大量に飛んで来たら、ロシアはどう対応するだろうか?

REUTERS/ITAR-TASS/PRESIDENTIAL PRESS SERVICE

アメリカは、ミサイル防衛システムに少なくとも400億ドル(約4兆4800億円)を費やしている。北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を抑止し、発射された場合には撃ち落とす狙いだ。しかし専門家によると、アメリカがこのシステムを実際に使った場合、意図的でないにせよ、ロシアとの核戦争に発展する可能性がある。

核軍縮をテーマにしたブログメディア「Arms Control Wonk」の創設者ジェフリー・ルイス(Jeffrey Lewis)氏は、アメリカが飛来してくる北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とそうとすれば、それはロシアとの核攻撃の応酬につながるとして、その理由をTwitterで詳しく説明した。

地上配備型ミッドコース防衛(GMD:Ground-based Midcourse Defense)システムを運用する、アメリカ国防総省のミサイル防衛局(MDA)は2017年5月、Business Insiderに対し、ミサイルが実際に飛来してきた場合、撃ち落とす確率を高めるため、複数の迎撃ミサイルを発射するだろうと述べた

ルイス氏は、この迎撃ミサイルの数を4基もしくは5基と見ている。

しかし、この4基もしくは5基のうち、飛来してくるミサイルを実際に撃ち落とすのは1基だ。残りの迎撃ミサイルは、上層大気を飛び続け、ロシアや中国へ向かうことになる。

問題はそこにある。つまり、アメリカは放った迎撃ミサイルのうち、1基が核弾頭を搭載した北朝鮮のミサイルを撃ち落とすことを願う一方で、それ以外の迎撃ミサイルがロシアを狙った核攻撃ではないと、ロシア側が理解してくれることを祈るしかないのだ。

そして、ロシアが理解しないであろう根拠は、いくらでもある。

GMDシステムは、ICBMを撃ち落とすために4基から5基の迎撃ミサイルを発射するだろう。あとはひたすら祈るしかない。

お楽しみはここからだ。仮に1基がICBMに当たったとしよう。その場合、残りの迎撃ミサイルはどうなるだろうか? そのまま飛び続けていくのだ。ロシアに向かって。

北朝鮮、アメリカ、日本、韓国など多くの国々は、7月4日に北朝鮮が発射した「火星14型」が約37分間飛行し、高度約2800kmに達したということで意見が一致している。ところがロシアの諜報機関は、「火星14型」の飛行時間はわずか14分で、高度も約534kmに過ぎなかったとの見解を示した(ロシアは、北朝鮮が発射したのはICBMではなく中距離弾道ミサイルだと主張している)。

公式見解として、北朝鮮のミサイルがICBMだったとのコンセンサスに異を唱えることで、国連安全保障理事会が北朝鮮を非難し、さらなる制裁を行うことを、ロシアが阻止したかったと考えることはできる。

もしくは、ルイス氏がTwitterで指摘したように、ロシアの早期警戒システムが「お粗末」なため、北朝鮮が発射したミサイルはICBMではないと、ロシアが本気で考えている可能性もある。

これまでも、ロシアは北朝鮮のミサイル発射に関して、グローバルな見方から大きくかけ離れた見解を打ち出してきた。衛星と地上配備型レーダーを組み合わせて、飛来するミサイルを探知しているアメリカとは異なり、ロシアが使っているのはレーダーのみだ

ミサイルの発射を見守る親子

アメリカの弾道ミサイル防衛システムの一環であるGMDの迎撃ミサイル発射実験を見守る父子。カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地にて撮影。

Thomson Reuters

アメリカの監視システムの場合、ミサイルの動きを察知してから対応を決定するまでに、20~30分ほどの猶予がある。しかしロシアの場合、レーダースクリーンに映った飛翔体が、迎撃ミサイルなのか、核兵器を搭載したICBMなのかを見きわめるまでに、わずか数分しかない。

ロシアがミサイルの探知に苦労していることは、十分に裏付けられている。アメリカの核・ミサイル防衛政策担当のイレイン・バン(Elaine Bunn)国防次官補代理は2004年、危機的状況に直面した際は、「GMDやイージス艦から発射される迎撃ミサイルをロシアが誤認する可能性」を踏まえて、アメリカはロシアに通知する手段を検討しなければならないと述べている

しかし、2004年のバン氏の提案以降、米露の対話と、衝突回避のための情報共有は進んでいない。

北朝鮮のミサイル発射に関して、アメリカとロシアの意思疎通や連携はほとんど行われていない。北朝鮮の核攻撃を阻止しようとするアメリカの動きは、ロシアを大きく動揺させる可能性がある。そして、ロシアが核兵器による徹底抗戦で臨めば、アメリカの大半は焦土と化すだろうと、ルイス氏は警鐘を鳴らしている。

[原文:The US’s best defense against a North Korean nuke could spark a nuclear war with Russia]

(翻訳:遠藤康子/ガリレオ)

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