メッセージアプリの人気機能(2016年12月調べ)。上から「カスタマーサービスへの問い合わせ」(61%)、「限定セール・オファーへのアクセス」(46%)、「懸賞のチャンス」(35%)、「広告への反応」(25%)、「企業から最新情報を受け取ること」(24%)となっている。
BI Intelligence
メッセージアプリの数は増加の一途をたどっているが、小売大手のアマゾンもこれに一枚加わろうとしている。Business Insiderによると、アマゾンはデスクトップとモバイル機器間で互換性のある、フル機能の独立型メッセージアプリ「Anytime」を開発中だという。AFTVnewsが最初に報道した。
同アプリはオールインワンのサービスである可能性が高い。ユーザーはメッセージの送信に加え、独自のフィルターを使って写真や動画を送信したり、個人やグループでゲームをプレイできる他、ショッピング、音楽、宅食の注文、企業とのチャットといったその他アマゾンのサービスが利用できる。
同アプリのリリースは、次の理由からアマゾンにとって妥当と言える。
- メッセージアプリは、ユーザーとの関わり(ユーザーエンゲージメント)を強める。メッセージアプリは、モバイル機器におけるユーザーエクスペリエンスの核を担っている。コンサルティング会社Fluentの調査によると、例えばアメリカでは、回答者の34%がメッセージングをスマートフォンの一番好きな機能として選んでいる。アマゾンの「Anytime」は、ユーザーを同社のプラットフォームに引き留めることで、エンゲージメントを強化・促進することができる。
- 消費者は企業への問い合わせにメッセージアプリを利用している。Aspectの調査によると、アメリカの消費者のおよそ半数は、カスタマーサービスに問い合わせる際、メッセージングを使用することを好む。「Anytime」を公開することで、アマゾンは企業と消費者間の簡便なコミュニケーションツールをユーザーとブランドに提供することができる。これにより、アマゾンの提携企業と消費者間のコミュニケーションを促進することが可能だ。
- アマゾンの音声AIアシスタントAlexaを消費者の日常に溶け込ませる下地を作る。AIが機能するにはデータが必要だ。より多くのデータを入手できれば、Alexaの機能はより強化される。アマゾンがAlexaと「Anytime」を連携させれば、同社は小売の枠を超えて顧客との交流を創出できる可能性がある。
「Anytime」が提供され始めると、最大のリスクに晒されるのはFacebookだ。どちらのチャットアプリも同じマーケットで競合している。Facebookは、Messengerを消費者と企業の最初の接触ポイントにすべく尽力している。しかし、小売業者との強固な関係に加え、アマゾンの定着した消費者ブランドは、Facebookにとって大きな脅威になる。
だが、アマゾンもチャットアプリ市場の大手と激しい競争に直面することになる。BI Intelligenceの推定によると、Facebookの所有するMessengerとWhatsAppの月間アクティブユーザー数はどちらも12億人で、世界のチャットアプリ市場の約60%を占めている。これに対抗するため、「Anytime」にはユニファイド・コミュニケーション(UC)機能が導入される可能性が高い。つまり、「Anytime」と連携しているソーシャルネットワーク上のユーザーであれば、誰にでも連絡できるということだ。これにより、アマゾンはメッセージアプリ市場における、新規参入時に直面するハードルを回避することができる。
[原文:Amazon is building a messaging app called 'Anytime' (AMZN)]
(翻訳:Keitaro Imoto)