5600億円超の学生ローンが消滅? その理由は「ずさんな文書管理」

驚いた顔をした大学卒業生

貸し手がローンの所有権を証明できなければ、借り手の支払い義務もなくなるだろう。

Chip Somodevilla/Getty

アメリカで、学生ローンとして数万人に貸し出されている数千億円規模の債権が、消滅の危機にさらされている。その原因は、ローンの所有権を証明する文書のずさんな管理体制にあると言う。ニューヨーク・タイムズが報じた

同紙によると、80万件もの貸し付けを行っているアメリカ国内有数の民間学生ローン「The National Collegiate Student Loan Trusts(NCSLT)」は現在、訴訟問題に悩まされている。

NCSLTが所有する120億ドル(約1兆3400億円)の学生ローンのうち、50億ドル以上が未返済で、債務不履行に陥っている。NCSLTは返済をめぐって、借り手を相手取り、今年だけで800件以上の訴訟を起こしている。借り手は示談に持ち込むか、裁判を欠席するため、通常であれば、NCSLTが敗訴することはないという。

しかし、借り手が裁判に出席し、争う姿勢を見せた場合、物事は複雑化する。書類が整理されていない、もしくは見つからず、そもそも返済を要求する正当な権利がNCSLTにあることを証明できない場合があるのだ(ただし、NCSLTの現在の訴訟問題に、文書偽造は含まれていない)。

NCSLTの学生ローンは「10年以上前に、数十の銀行の共同出資により企業を設立、それを証券化することによって投資家に販売されたもの」で、連邦政府による保証はない。

NCSLTの投資家の1人である、フロリダ州デルレイビーチにあるプライベート・エクイティ投資会社(未公開株、PE)Vantage Capital Groupの創業者ドナルド・ウデリッツ(Donald Uderitz)も、書類が存在しないという事実に困惑している。同氏は2015年、NCSLTの借り手に対して毎月返済を求めるサービス会社の監査を行うため、業者を雇い、ランダムに選択された400件のローンについて調査を行ったが、ローンの所有権を裏付ける書類は1件も存在しなかった。

「所有していないローンの返済を迫るのは詐欺だ」と、ウデリッツ氏はニューヨーク・タイムズに話した。「このような行為には、関与したくない。ただ、ローンの所有が正当なものであれば、返済を求めたい。この問題に対する答えが必要だ」

今や1.3兆ドル(約145兆円)市場となった民間の学生ローンは、消費者保護の対象外で、連邦政府の学生ローンのような制御可能な金利も適用されない。金利が非常に高いため、借り手の多くは月々数百ドル、場合によっては数千ドルの支払いを要求される。

また、連邦政府による学生ローンは、大学の倒産により学位が取得できなかった場合などに、借り手が債権放棄や債務免責を申請することができる。しかし、民間のローンの場合には、それも認められていない。

[原文:$5 billion in student loans may be dismissed because the lender lost the paperwork]

(翻訳:まいるす・ゑびす)

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