提携52社で始動の"日本版IoTプラットフォーム"は離陸するか? —— NEC PCの新規事業「plusbenlly」の全貌

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plusbenlly β版の公式ページ。サインアップは発表当日から開始している。

NECパーソナルコンピュータ(以下、NEC PC)は7月19日、キュレーションズ社と共同開発したIoTオープンイノベーションプラットフォーム「plusbenlly」(プラスベンリー)のベータ版 無料公開を開始した。

タブレットやPCを製造・販売してきたメーカーであるNEC PCが、なぜIoTプラットフォームを手がけるのか? NEC PCがつくる新たなビジネスの狙いはどこにあるのか?

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左から、ビジネスパートナー(検討中)のオイシックスドット大地 執行役員の奥谷孝司氏、オムロン 技術知財本部 SDTM推進室長の竹林一氏、キュレーションズ 根元隆之代表、さくらインターネット フェロー 小笠原治氏、NECパーソナルコンピュータ留目真伸社長。

IoTからビジネスを生み出すためには、業界横断した"真結合"が必要

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「plusbenlly」は、メーカーやプラットフォームの異なるIoT機器同士を、接続して相互連携させるIoTプラットフォームサービスだ。といっても、消費者(ユーザー)は、plusbenllyの存在を意識することは全くない。メーカーやサービスプラットフォーム事業者同士が、ユーザーからは見えない裏側で、"異なる製品同士で横串を刺すように"連携させるために使うバックエンドサービス(BaaS/Backend as a serviceと呼ぶ)だからだ。

NEC PCは、グループ会社であるレノボ・ジャパンと合わせた「NECレノボ」として、国内のPC市場で25.7%(MM総研調べ)の圧倒的シェアを持つ企業だ。にもかかわらず、plusbenllyは既存のPCやタブレット事業とは、直接的には関係のない事業だという。

では、NEC PCがなぜIoT、しかもプラットフォーム事業を始めるのか?

NEC PC留目真伸社長はIoTプラットフォーム参入の意図について、"垂直統合型のビジネスを進めても、新たな事業領域は出てきづらい"と、NEC PCを含め多くの業界が抱える縦割り産業構造の課題を指摘する。


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いま、企業を取り囲む「業界産業構造」の概念図。縦には業界内のR&D(研究開発)から戦略企画までのレイヤーがあり、横には業界間でなかなか乗り越えられない壁がある。

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この縦横の壁を取り去るためのプラットフォームというのが、plusbenllyが目指すものだ。異なる業界同士の連携だけではなく、もう一歩踏み込んだ縦軸のレイヤーの連携、縦横の軸を斜めに繋ぐような連携を加速することで、ビジネスチャンスとともにIoTのデバイス/サービスに新しい価値を作り出せるという。

plusbenllyが目指すのは、業界"内"の縦軸、業界を"またぐ"横軸を自由自在に繋ぎ、"技術とデータの相互連携"から新たなビジネスが生まれる共創プラットフォームをつくりだすことだ。言い方を変えれば、昨今大企業の新たな取り組みとして語られることが増えた「オープンイノベーションの推進」ということになる。

NEC PCはどういう立ち位置でビジネスを作るのか? これについては、「plusbenlly上でのデータ流通に対して一定の課金をすることで、収益を得る」と、共同開発を進めるキュレーションズの根本隆之代表は話す。

plusbenllyは何が"画期的"なのか?

しかし、フィットネスギアと他社アプリの連携といった事例は、過去にもたくさんある。個々の企業が提携するのと、plusbenllyを通した連携では何が違うのか?

キュレーションズによると、まず「企業間の契約問題のスピードアップ」が特徴だという。一般にサービスの利用規約や約款が各社各様のため、提携にあたっては個企業ごとに異なる約款を"突破"する必要がある。契約が絡むため、特に大企業対大企業の場合は、契約締結まで数カ月を要するようなことも珍しくない。

plusbenllyでは、将来的な目標として"どういう企業に、どんなデータを連携するか"といった定型連携フォームを使って連携支援する仕組みを計画している。目指すのは、たとえばプラットフォーム上で"データ連携に応じる企業"を探して、指名と承認をするだけで半自動的に定型完了、となるような世界観だ。

ただし、これはまだ将来の話で、現状はキュレーションズやNEC PCがパートナー企業候補を訪れて、個別に理解をしてもらい、参画を取り付けている。

このほか、「サービス開発のスピード向上」を図るべく、plusbenlly対応の開発キット(SDK)を用意し、IT企業やスタートアップ企業などと大企業が提携することによる、ビジネス創出を狙っていく。

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既にIoT領域でビジネスを展開している大手企業やサービスのコネクテッドパートナー(接続予定も含む)。

個人情報の取り扱いはどうなる?

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会見に登壇、登壇パートナー企業とのパネルセッションで司会進行も務めたNEC PCの留目真伸社長。

plusbenllyは利用者からは意識されることのないBaaS型のサービスだが、それだけに個人情報の取り扱いがどうなるかも気になるところだ。例えば、plusbenlly対応デバイス(たとえばスマート体重計)で計測した個人の体重推移データを、他のサービス事業者(たとえば加入者を募りたいスポーツジム事業者)に勝手に引き出されたりはしないのか。

この点は、ユーザーの許諾なく一方的にデータだけが引き出され、plusbenllyを通じてビッグデータ的に流用されるということは原則ないという。

plusbenllyは相互連携させる"データ流通"を仲介するのみなので、plusbenlly上にデータはためない。たとえばスマート体重計がデータを記録するのだとすれば、これまで通り製造メーカーが作ったクラウド上に情報が保存されるという。

言葉をそのまま解釈すると、仮に自分のデータが何らかの形で流用される場合があるのだとすれば、plusbenllyとは無関係に、「(匿名化するなどで)データ流用を前提とした機器やサービス」を利用している場合、ということになる。

企業をまたいだオープンイノベーションの推進は簡単ではない

取り組みとしては新しく、面白い。β版サービス開始時点で52社の参画企業を集めたのは、NEC PCと関係企業の底力というほかない。参画企業の顔ぶれも思いのほか充実している。

NEC PCの留目社長は会見後、BUSINESS INSIDERの取材に対し、「(契約をスピードアップする)定型フォームの準備はまだ将来の話。現実問題としては消費者に対して、新たなビジネス創出に合った契約書を巻き直すようなことも必要になるでしょう」と、乗り越えていかなければならない壁についても率直に語った。

これまでにないIoTを舞台にしたオープンイノベーションプラットフォームは、想像できる通り前途多難だ。とはいえ、誰かがやり始めなければ、ずっと垂直統合で硬直したビジネスを続けていくほかない。そういう点で、大企業が始めたチャレンジングな取り組みとして、今後の動きに注目しておく価値はある。

(写真:伊藤 有)

さくらインターネットは自社IoTプラットフォームとplusbenllyの連携で提携

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センサーやデバイス企業のオムロンが描く、plusbenllyを通じたセンシングデータの利活用。自社では到達できない領域や医療への応用を考えている

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先行して5月に発表していた住宅メーカーのIoTの取り組みの裏側には、既にplusbenllyが採用されている

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ビジネスパートナーの一覧(予定含む)。plusbenllyを使って新しいビジネスを作ることで参画。

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技術を提供するテクノロジーパートナー

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開発者コミュニティーを支援していくコミュニティーパートナー

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