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ハーバード大学の心理学者 スーザン・デイビッド(Susan David)は起業家ジェームズ・アルトゥーカー(あるいは、アルタチャー:James Altucher)のポッドキャスト・インタビューに答えて、「わたしたちは気づかないうちに他人の言動に影響されている」と話す。
表面的なレベルでは、たとえば、飛行機で隣の人が飴を注文すれば、わたしたちも飴を注文する可能性が高いというような状態のこと。
しかし、スーザンが真に興味を引かれるのは、他人の影響を受けすぎることで、実は知らず知らずのうちに、(自分ではなく)他人の人生(夢)の中で人生を終えてしまうということである。
『Emotional Agility』の著者であるスーザンは、さらにジェームズ・アルトゥーカー(アルタチャー)に次のように話す。
「わたしたちは人生を振り返り『どうやってここまでたどり着いたんだろう?』と考えます。『わたしはただ流れに従ってきた。わたしはただ周りの人たちが、わたしにやれと言ったことをやってきただけ』。そう考えるのが普通です」。スーザンによると、大学に合格し、就職して、結婚し、子どもを作って、家を買う—— 、つまり伝統的に成功と言われている行為をすべて達成している人でも実際、その多くは、幸せや満足感を感じていない、と言う。
問題は、自分にとって大切なことに気づかず、むしろ敢えて無視していること。そして、なによりも自分にとって大切なことがわからないことだ。
人生をより良く感じるための第一歩は、「自分にとって何が大切なことかを見つけ出すこと」だ。 1日の終わりに自分自身に次のように尋ねよう。
「今日、わたしはどんなやりがいのあることをしたか?」「今日が地球最後の日だったら、わたしはどんなやりがいのあることをするだろうか?」
(あなたに喜びをもたらしたものは何か、を考えてはいけない、とスーザンは注意する。やりがいと喜びは、重ならないことが多い)
スーザンの考察の背景には、「values-affirmation」(やりがいのあることを確認すること)に関する研究がある。約1年前、わたしはハーバードの心理学者エイミー・カディー(Amy Cuddy)の『Presence』に掲載された研究についてレポートをした。家族、クリエイティビティ、何でもいい、あなたにとってもっとも大切なこと(=やるべきこと、やりがいのあること)を書き出すことは、困難な状況でも優れたパフォーマンスを発揮するのに大変役に立つ。
例えば、自分にとって何が大切なことかを確認できた大学生は、そうではない友人よりもいい成績を収めた。女性の外科研修医は、臨床評価でより優れた結果を出した。
自分にとって大切なことを決めると、あなたは「自分がなりたい人にふさわしい習慣を育むようになる」とスーザンは語る。言い換えれば、あなたが頭で考えていた「抽象的な価値」は、「具体的な日々の行動」に変換されるのだ。
ある意味、やりがいのあることを確認することは、個人のミッション・ステートメントを書くことと似ている。それは、スティーブン・コビー(Stephen Covey)が1989年のベストセラー「7つの習慣」で書いた考え方だ。
個人のミッション・ステートメントは、目標の背後にある「なぜ」につながるため、目標を達成するのに新年の抱負より効果的だと言う人もいる。
個人のミッション・ステートメント、values-affirmation、そして自分が行ったやりがいのある行動について自分に質問することに共通するのは、言葉にするにはあまりにも広すぎる、もしくは漠然としすぎている価値(大切なこと)を明確にすることだ。
「価値とは、企業の壁に掛かっているような抽象的で、恣意的なものだと思われている」と、スーザンは語る。「しかし、価値は生きる力になる。価値はわたしたちを自由にする」
(敬称略)
(翻訳:梅本了平)