マンハッタン初のマイクロ・アパートメントがデザイン賞を受賞! 一泊体験してみた。

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Leanna Garfield/Tech Insider

ニューヨーカーは靴箱のように小さいサイズのアパートに住んでいるんじゃないかと思ってはいないだろうか。

カーメル・プレイス(Caramel Place)にある、マンハッタンで最初の(そして唯一の)公式マイクロ・アパートメント・ビルディングは、アパートの「小さい」という定義を1つ上のレベルに格上げした。それらのアパートは平均的なスタジオ・アパートメントのサイズよりも小さいが、インテリアのデザインが他のものよりもよっぽど素晴らしい。ミニマルでシックなデザインが極小の空間での生活を可能にするという発想だ。

建築会社 nArchitectsがデザインを手がけたカーメル・プレイスは先日、全米最大の建築協会であるアメリカ建築家協会(American Institute of Architects)による有名な賞、2017年栄誉賞( 2017 Honor Award)を獲得した。1月13日、「カーメル・プレイスは都市部で増え続けている小さな住居において、今までになかった新しい環境を体現している」と審査員は発表した。

2016年前半に完成したカーメル・プレイスのそれぞれのアパートは、1部屋260〜360平方フィート(約24から33.5平方メートル)。通常、マンハッタンのスタジオアパートメントはその2倍のサイズで、車1台用の車庫は200平方フィート(約18.5平方メートル)だ。ぜひ、比較してみていただきたい。

限られたスペースでより良い生活の実現を可能にするために、開発業者のステージ・スリー・プロパティーズ(Stage 3 Properties)は、デザイン会社オリー(Ollie)と、スクリーチ・オウル(Screech Owl)のデザイナー、ジャクリーヌ・シュミット( Jacqueline Schmidt )氏の協力を仰いだ。このチームは、省スペース型の家具や小物を使って、55部屋のアパートのうち17部屋をきめ細やかにデザインした。

シュミット氏がBusiness Insiderに話してくれたところによると、カーメル・プレイスのアパートは、マンハッタンのほとんどのアパートとは違い、完全にミニマリストな生活スタイルのためにデザインされたそうだ。2016年6月、カーメル・プレイスに最初の居住者が入居した時、筆者も308平方フィート(28.6平方メートル)の家具付きアパートで一晩を過ごしてみた。

その時のことをご紹介しよう 。


カーメル・プレイスはマンハッタンの東側、イースト・リバー近くのエリア「キップス・ベイ」に位置している。

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Google Maps/Leanna Garfield


9階建てのビルの中には55部屋のアパートがある。初期の36人のテナントたちは2016年6月1日に入居したと、オリーの共同設立者アンドリュー・ブレッドソー(Andrew Bledsoe)氏がBusiness Insiderに教えてくれた。

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Leanna Garfield/Tech Insider

ビルのスタジオアパートのうち約半分のアパートの家具が、オリーによって備え付けられた。WiFi、ケーブルテレビに加えてイベントクラブ「Magnises」や執事サービスの「Hello Alfred」の会員登録などがサービスに含まれている。

毎週Hello Alfredの従業員が、ベッドを整え、シーツや枕カバーなどのリネンを取り替える。さらに食料品の買い物をし、荷物の郵送手続きをし、生活必需品を補填した上で、洗濯やドライクリーニングもやっておいてくれる。

オリーのアメニティがあるかないかで、1カ月の家賃は2450ドルから3000ドル(24万〜30万円)で変動する。


足を踏み入れた時、アパートの綺麗な見た目に圧倒された。家具の大部分が白で統一されており、そのおかげで部屋が実際よりもだいぶ広く見えた。

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様々な機能を持った家具が備え付けられている。この2つのテーブルは、引き延ばしてより大きなテーブルに一瞬で変型させることができる。

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Leanna Garfield/Tech Insider


多肉植物の姿が多く見られる。なるほど、多肉植物は水をあまり必要としないので世話をするのに手間がかからない。そのため、マイクロ・アパートメントには最適だ。

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Leanna Garfield/Tech Insider


ソファー(引き延ばせばベッドになる)の横の棚には簡単な収納のためのバスケットが設置されている。わたしがもし、実際にここに住んでいたとして、床に散らばったものを片付ける時間がない時には、このバスケットにポイと入れてしまうだろう。

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すべてのキッチン設備(電子レンジ、冷蔵庫、食器洗い機、電気コンロ)は小さめ。トースターはあったが、オーブンはなかった(ちょっと残念)。

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Leanna Garfield/Tech Insider

数人の友達を招いて小さなパーティーをすることはできそうだが、大人数をもてなしたり、サンクスギビングのディナーをここですることはできないかもしれない。お1人様用にデザインされている。


それでもトイレは広々としている。

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この夜はDJとバーテンダーを招いて、ビル主催の屋上パーティーが開かれていた。

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Leanna Garfield/Tech Insider

パーティーの参加者を見回してみると、半分が不動産のブローカーと開発業者(スーツを着ている)で、残りの半分が居住者という感じだった。

トレイという名の33歳の居住者は、カーメル・プレイスに住むことに決めたのは仕事場から3ブロックしか離れていなかったからだと話す。結婚する気もないし、友達をもてなすこともそれほど考えていないそうだ。

彼にとって、このアパートはどちらかというと「寝泊まりするだけの場所」なのだ(ただし、全米最大のオンライン掲示板「Craigslist」で見つけられる物件よりもおしゃれだが)。トレイの考えは、他の居住者たち数人の話とも一致する。彼らは、アパートの中でそれほどたくさんの時間を過ごすつもりがないそうだ。


パーティーが終わった後、自分の部屋に行き、ベッドを壁から引っ張り出して広げてみた。

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Leanna Garfield/Tech Insider

2分ほどしかかからなかったが、毎日行うとなるとちょっと面倒。もし、自分がここに住んだら、ほとんど毎日、ベッドを壁に戻さず出しっぱなしにするだろう。


チキン・シャワルマ(中東のサンドイッチ)を買ってきた。調節式テーブルを引っ張り出して、テレビを見た。

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カーメル・プレイスは、ニューヨーク・シティ最初の極小サイズ住居というわけではない。1987年の地区水準では1つのアパートを最低でも400スクエア・フィート以上にすることが定められたが、それ以前に建てられた星の数ほどのアパートは、クローゼットほどの極小サイズだった(カーメル・プレイスはその規定を免除された)。しかしながら、このビルは、ニューヨーク市と提携したマイクロ・アパートメント開発計画としては、最初のケースである。ブレッドソー氏によると、22部屋のアパートが手頃な価格で抽選用に割り当てられ、8部屋が退役軍人に提供されたそうだ。


ブレッドソー氏は、この開発計画について、マイクロ・アパートメントが快適さと値段の手頃さの両方を実現できるか否かのテストでもあると話す。カーメル・プレイスのアパートは高価だが、居住者はその広さだけにお金を払っているのではない。

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Leanna Garfield/Tech Insider

計算してみると、カーメル・プレイスのマイクロ・アパートメントに住むための値段は 、1平方フィート(0.09平方メートル)あたり10ドル(千円)だ。同じエリアの家具なしのスタジオ・アパートメントだと、倍の平方メートルに対して、1カ月に2300ドルから3200ドル(23万円から32万円)の値段がつく。

しかしながら、カーメル・プレイスの場合は、シュミット氏のデザインセンス、オリーのアメニティ、ビル内のジム、全てが新品という事実にお金が支払われている。


「広さよりもより良い体験の方が人々に求められている、ということに我々は気づいたんです」ブレッドソー氏はそう語る。

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Leanna Garfield/Tech Insider

大人になって以来、ルームメイトのいる居住環境しか経験したことがなかったわたしには、小さなアパートはなんだか少し寂しく感じた。

しかしそれは、このアパートが「住めない環境」だと言っているのではない。もしわたしに1カ月2500ドル(25万円)を捻出できる甲斐性があれば、快適に暮らすことができるだろう。執事サービスがあり、プロにデザインされた家具に囲まれて、この美しい部屋はアパートというよりもホテルのように感じた。

ただ、実際に人が住んで使い込まれたマイクロ・アパートメントが、数カ月後、はたまた数年後にどうなっているのか気になる。広さが300平方フィート(27.8平方メートル)となると、どんなに小さなフロア・スペースだって無駄にはできない。

[原文: Manhattan’s first micro-apartments just won a prestigious design award — here’s what it’s like to spend a night in one

(翻訳者:にこぱん)

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