日経がViibarと資本提携し「デジタル動画」事業に本腰——“テクノロジーメディア”としての日経が見据えるメディアの未来

DIGIDAY[日本版]より転載(2017年1月17日公開の記事)

日本経済新聞社がまた、新たなチャレンジに乗り出した。

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Carlos Alvarez/Getty Images

同社は1月17日、デジタル動画制作会社のViibar(ビーバー)との資本業務提携をプレスリリースで発表した。Viibarが1月に実施する約4億円の第三者割当増資の一部を引き受けるという。この提携を受けて、両社で共同の動画制作体制を構築し、急成長するデジタル動画市場に対応する。

同プレスリリースで具体的な業務提携内容として挙げているのは、3つのプロジェクトだ。1)「NIKKEI STYLE」のコンテンツ開発および広告販売、2)動画広告商品の共同開発および販売、3)企業動画のコンテンツマーケティング支援となる。また、日本経済新聞社では、コンテンツマーケティング支援に特化した新組織「Nブランドスタジオ」を立ち上げる予定となっており、そこでもViibarとの協働を行っていくという。

なお、「NIKKEI STYLE」は、日本経済新聞社が2016年2月14日にローンチしたライフスタイルメディア。同サイトは12月現在、月間1700万PVを達成している。

約335万人の総会員数(有料会員は50万人)を誇る「日経電子版」ではサブスクリプションモデルを採用しているが、分散型に対応した「NIKKEI STYLE」ではフリーミアムな広告モデルを採用。そのため、こちらは誰でもすべての記事を無料で閲覧できるところが特徴だ。

日本経済新聞社は、「NIKKEI STYLE」や「Nブランドスタジオ」を通したViibarとの取り組みに、どんな未来を描いているのか? 両社の代表に話を聞いた。

従来とは異なる動画事業

「テレビ東京をはじめ、テレビ・映像をメイン業務とするグループ企業はいくつか存在する。しかし、デジタル動画に特化した企業はなかった」と、今回の取り組み対して、日本経済新聞社のデジタル事業担当 常務取締役 平田喜裕氏は語る。「デジタル動画に対するノウハウは、既存のテレビ・映像事業とはまったく違う。スピード感を上げて対応するには、資本業務提携するのが一番という結論に至った」。

これまでの動画事業は、映画やテレビをはじめ、大半が大掛かりのものだった。しかし、デジタル時代に突入し、動画制作がコモディティ化した現在、粗製乱造したものではなく、適切なコストをかけて制作した質の高いクリエイティブが求められている。

おそらく日本経済新聞社では、「NIKKEI STYLE」や「Nブランドスタジオ」を先鞭に、こうした動きを同社グループのなかで根付かせていきたいのだろう。事実、「テレビ東京グループもViibarに依頼すると思う」と、平田氏は付け加えた。

クオリティとスケールを両立

今回の取り組みは、日本経済新聞社の呼びかけによってはじまったという。あくまで、パートナーとしての資本業務提携であって、経営に口出しするようなものではないと、平田氏は念を押す。それに対して、Viibarの代表取締役を務める上坂優太氏は、「我々の会社を知っていたことに、まずビックリした。それに、これだけの大企業が、すでにデジタル動画に対する課題を感じていて、スピーディに動いていることに感銘を受けた」と語る。

2013年に創業したViibarは、自社開発の動画制作支援ツールと3000人を超えるプロクリエイターネットワークを有するベンチャー企業。Facebookページのいいね!数26万人を誇る分散型メディア「bouncy(バウンシー)」などの自社メディアも運営している。

「弊社に登録いただいているクリエイターは、全員審査を通過したプロのクリエイター。勝手に登録できるシステムではなく、対価についても適切な設定がされている。あくまでプロのための環境であり、一般的なクラウドソーシングのシステムとは異なっている」と、上坂氏は強調する。「これによってクオリティとスケールを両立している。この点が日経さんにも評価いただけた点だと自負している」。

「NIKKEI STYLE」の新展開

両社で協働して制作するのは、ブランデッドビデオやスポンサードビデオだけではない。編集コンテンツもその範疇には含まれており、そこへ動画広告を挿入して、さらなるマネタイズを図っていくという。

現在、11のチャンネルが用意されている、「NIKKEI STYLE」。この春、そこにファッションをテーマにした、12番目のチャンネルの新設を検討していると平田氏は語る。特にそこでは、Viibarと制作した動画コンテンツをメインに展開していく。

また、現在、日本経済新聞社では、ほとんど動画広告を利用していない。その状況から、今回の取り組みを通して、早い段階で広告売上全体の1割を動画関連のものにしたいという。


取り組みの先にある未来

日経グループは現在、『テクノロジーメディア』を目指している。AIを使った記事の自動生成や自動翻訳、膨大な過去記事を利用したテキストマイニングやデータマイニング(それにAIを利用し、未来予測するというもの)など、新規ビジネスも考えているという。

「そのなかで、動画は新しい技術ではない」と、平田氏。「しかし、スマートフォンをはじめ、その活用法がどんどん進化している。そのためにViibarと協力して、うまく対応していく必要がある」。

それに対して、Viibarの上坂氏は、「我々は動画を効率的に制作する技術は有しているが、それだけで、課題解決できない領域もある。日本経済新聞社のようにデータやオーディエンス資産がないからだ。今回の取り組みでは、そこに強い補完関係が構築される」と語る。

レガシーメディアによるデジタル動画の取り組みは、まだはじまったばかりだ。むしろ、まだはじまっていない企業も多い。そのなかで、日本経済新聞社による、このスピーディな動きは大きな意味をもつといえるだろう。

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