スペースXがFlickrで公開した写真に注目してほしい。
この写真はファルコン9ロケットの下半分が、太平洋上に浮かぶドローン・シップ(“Just Read the Instructions(つべこべ言わず説明書を読め)”というユニークな名前)に着陸をする直前の様子を撮影したものだ。
逆光の中、着地サスペンションを広げたロケットが見える。ロケット自身が放出する噴煙の中、ゆっくりと着陸しようとしている。
SpaceX/Flickr (public domain)
写真はスペースXにとって、着陸の完璧さを示す以外の意味がある。
この写真が撮影されたのは2017年1月14日。撮影の数分前にカリフォルニア州バンデンバーグから同社のロケットが打ち上げられ、10基のイリジウム通信衛星を一斉に地球周回軌道に乗せた。
これまで、周回軌道への商用衛星の打ち上げおよびロケット(非常に高価な)部分の回収に成功した企業はない。通常、数千万ドル(数十億円)相当のブースターは海に落とされる。スペースXや目下急成長中のライバル企業ブルーオリジンが、これらのロケットブースターを再利用可能なものにできれば、宇宙へのアクセスコストは劇的に下がる。
そして、同時にこの写真は、スペースXが大きな安堵の溜息をついたことも表している。2016年は同社にとって厳しい年だった。
最初は順調な滑り出しだった。ファルコン9ロケットの打ち上げは成功し、5基のブースターが地上で回収された。しかし9月1日、打ち上げ直前の燃焼試験の準備中に爆発が起こり、ロケットは衛星もろとも木っ端微塵になってしまった。この衛星はFacebookが利用する予定だった。SpaceXの設立者で起業家のイーロン・マスク氏は、この事故を「当社史上もっとも難解で複雑な失敗だった」と語った。
調査により原因が究明され、過ちが修正されるまでの間にSpaceXは顧客を失った。4カ月が無駄になった。その結果生じた損失は2億5000万ドル(約280億円)だ。
1月14日の打ち上げ成功で同社はお祝い気分に沸き立った。この写真はちょうどその「トロフィー」のように扱われたわけだ。
しかし、マスク氏とスペースXにとって宇宙開発事業はまだ始まったばかりだ。今回の成功は同社が今後数年間で予定している100億ドル(約1兆1000億円)相当の70回の打ち上げのうちの最初の1回に過ぎない。同社は年内にさらに強力な3段ロケットのファルコン・ヘビー発射システムをデビューさせ、来年2018年にはドラゴンカプセルを宇宙に打ち上げて自社初の有人宇宙飛行を実施し、高速インターネットで地球全体を覆いつくす予定だ。
社運を賭けた彼らのミッションとは? そう、火星への植民だ。
[原文: There's something special about this haunting new photo of a SpaceX rocket seconds before it lands]
(翻訳:Conyac)