37歳の起業家であり、6人の子どもの父親でもあるユーハ・ハルビネン氏。
Juha Jarvinen/Facebook
2017年初頭、フィンランド政府は国民の労働習慣調査の一環として、2000人の失業者に対し今後2年間、毎月600米ドル(約6万9000円)を支給する制度を試験的に開始した。
この試験的制度を管理するのは連邦機関であるフィンランド社会保険庁事務所(Kela)。Kelaはユニバーサル・ベーシックインカムの名で知られる経済モデルの改良版としてこの制度の導入を開始したが、制度として不適切だという声も上がっていた。支給対象は失業者に限られ、厳密にはユニバーサルと言えるものではなかった。
幸運にも受給者となった2000名のうちの1人、ユーハ・ハルビネン(Juha Jarvinen)氏は反対論者ではなかった。
「私は試験対象になるのが夢で、そして今こうしてここにいる」。37歳の起業家であり6人の子の父親でもある彼はFacebookのプロフィール欄にこう記した。「まったく信じられないよ」
ハルビネン氏は、自身が受給対象者であるという知らせを受けるまでの5年間、失業状態だったと記している。彼は2010年に事業を始めたが、起業から2年で経営に行き詰まった。何時間も自宅で新たなベンチャー事業を思索していたが、結局、看護師である妻の給料と、児童手当と失業手当で生活するようになっていた。
「事業から撤退した時は6カ月間、無一文だった」「6人の子供を持つ父親としては辛かった」と彼は記した。
フィンランドは今回の試験導入で、ハルビネン氏のような人が仕事に再挑戦するのか、それとも現金収入があることで甘んじてしまうのか、を見極めようとしている。今月初め、Kelaの法益部門のトップであるマルユッカ・ツルネン(Marjukka Turunen)氏はBusiness Insiderに対し、結果がどちらに転んでもおかしくない、と語った。
発展途上国のいくつかの予備データを除いて、データはあまり明確なものではない。
「家でゴロゴロする人もいれば、働きに出る人もいるかもしれない」とツルネン氏は言った。
「我々にはまだわからない」
少なくともハルビネン氏は、この給付金を使って起業家として再挑戦するつもりだという。
「将来自分は何をしているのか? 2年後は? 私はできるだけ早く新たなビジネスを始める。今なら自由にそれができる」「市民権を取り戻したと実感している」と彼は記した。
ベーシックインカム受給者の多くが、この「自由を取り戻した」という感情に同調している。 オランダ在住のフリー・コピーライター、フランス・ケルバー(Frans Kerver)氏は2014年7月から2016年までの2年間、ベーシックインカムを受給していた。追加金として1100米ドル(約12万円)を得た彼は、2016年3月にBusiness Insiderに対し、1週間の労働時間が数時間減り、そのかわり家族と過ごす時間が増えたと話している。
またケニアの現金給付プログラム「ギブ・ダイレクトリ(GiveDirectly)」の対象メンバーは、生活の質が向上したと繰り返している。数百ドルの余分なお金があることで人々は屋根を再建したり、農地を広げたり、また子どもを学校に通わせることができる。
ハルビネン氏と1999人の受給者は2019年までの収入によって同様の飛躍を遂げられそうだ。
「数週間後、数カ月後に私は自分の事業を始める」と彼は書き記した。
「5年後には幸せいっぱいになる。それはベーシックインカムのおかげだ」
[原文:This Finnish guy gets a $600 per month 'basic income' for doing absolutely nothing]
(翻訳:Conyac)