イラク第2の都市モスル奪還へ。大規模なIS掃討作戦開始

モスク奪還作戦前の戦闘員。

10月6日、モスク奪還作戦を前に訓練中のスンニ派戦闘員

Reuters

(編集部注:この記事の内容は、執筆時点のものです。)

2016年10月16日深夜(現地時間)、イラクのアバディ首相は、2年以上前にISに占拠されたイラク第2の都市モスル奪還のための軍事作戦を開始したと発表した。

「時が来た。偉大な勝利の瞬間は近づいている。今日、モスル奪還作戦開始を発表する」とイラク国軍最高司令官に囲まれながらアバディ首相はテレビ演説で語った。

今回の軍事作戦は、2003年のアメリカによる侵攻以降で最大のイラク軍が展開されており、ISに対抗する60カ国の有志連合の航空支援を受けている。

アメリカ政府は今年、バグダッドが立案した計画に懸念を表明したものの、モスル奪還はオバマ政権のIS討伐計画の要だ。

イラクのエリート特殊部隊の司令官サラム・ジャシム(Salam Jassim)少佐はワシントン・ポストに「8万人以上の部隊が関与している。イラク軍は週末に何千枚ものビラを市内にばら撒き、市民にISの支配地域から避難せよ、子供らには空爆と爆弾の音は『ゲームか、雨が降る前の雷』だったと伝えるよう、忠告した」と語った。

アメリカが訓練し、武器を与えたイラク軍が、ISの侵攻によって街から逃げ出した2014年夏のモスル陥落という屈辱にショックを受けながらも、イラク政府は過去1年の大半を攻撃準備に費やした。日曜の作戦開始は、モスル奪還のための非常に長い戦いのほんの始まりにすぎない。

「国連はモスル奪還作戦が2016年における世界でもっとも複雑で最大の軍事作戦になり、100万人もの市民が家を追われるという最悪のシナリオを懸念している」と、国連イラク支援ミッション事務総長特別副代表リズ・グランデ(Lise Grande)氏は先週、New York Timesに語った。


クルド人民兵組織ペシュメルガ

15日土曜日、モスル郊外に集結したクルド人民兵組織ペシュメルガ

Reuters


ISがどれだけ激しく抵抗するかについては、相反するリポートが出ている。CNNは日曜日に、ISの戦闘員はイラク軍の侵攻に伴い、街から逃げ出すと伝えた。しかし、専門家はISがおとなしく撤退することはほとんどないと考えている。ピーク時にはイラク国内の約40%を占めた支配地域が今では約10%にまで縮小したISにとって、モスルは最後の砦なのだ。

「モスルはISにとって人的・道徳的集積地であり、シリアとイラク間の戦略的中継点です。モスルはISにとって重要な意味をもっており、彼らは激しく戦うはずだ」とトルコ南部に亡命したISの元司令官はBuzzFeedのマイク・ジリオ(Mike Giglio)氏に語った。

最前線にいるジリオ氏は日曜日の遅くに、「クルド人基地の兵士の中で、明日攻撃予定の村にISが400人の戦闘員を配備したとの噂が広がった」とTwitterでつぶやいている。

ニューヨーク・タイムズは「多くの戦闘員が空爆を見越して地下トンネルに逃げたが、市内に残る3500~4000人のIS戦闘員は必死に軍事作戦の準備を進めていた」と伝えた。

イラク軍は多くのIS戦闘員が逃げ出すことを期待している。ワシントン・ポストによると、イラク軍はいまだ70万人から100万人の市民が住むモスル市内での戦闘を減らすために、市の西側にIS戦闘員が逃げ出すためのルートを残そうと計画している。

「もし、ISが攻撃後に逃げ出すことになったら、人間の盾を使うという大きなリスクがあります。特に彼らの車列がファルージャから逃げるときに攻撃された後では、そのリスクは大きくなる」とジリオ氏はTwitterでつぶやいた。


ファルージャ市内

ファルージャ市内

REUTERS/Thaier Al-Sudani


アメリカ主導の有志連合の空爆の支援を受けて、イラク軍はここ1年でティクリート、ラマーディーおよびファルージャを奪還してきた。

2013年にISの手に落ち、6月にイラク軍によって解放されたファルージャにいるイラク軍の司令官は、ISを永久にモスルから追い出す攻撃について楽観的な見通しを示した。そして、多くのアナリストはイラクの治安部隊が昨年以来、ISから奪還した地域がかなりの地域に上ることを認めている。

しかし、多くの人はISの急速な退却は優先事項の変化や戦略、スンニ派が大多数を占める都市の解放においてシーア派民兵組織が行ったことの影響を考慮した可能性があるため、さほど楽観視していない。


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Reuters


実際、モスル奪還作戦の複雑さは、加わっている関係者の数に由来している。最大12のイラク軍旅団と精鋭のイラク対テロ部隊、スンニ派部族勢力、クルド人民兵組織ペシュメルガ、イランが支援する少なくとも7つの異なるシーア派民兵組織、そして複数のトルコ軍部隊が、ISを一掃する役割を担うことを期待されている。

イラクの人民動員隊、別名ハシド・シャービは、イランが支援するシーア派の民兵組織だが、ISがモスルを占拠する要因となった宗派間の緊張を生み出しており、その動きは依然としてISに対する短期的な勝利を損ないかねない不確定要素となっている。

クルド人自治区スレイマニヤ県出身のフォトジャーナリストであるワルツァー・ジャフ(Warzer Jaff)氏はイラク軍、最近ではイラク特殊部隊に従軍していたことがあり、この夏、Business Insiderにこう語った。

「モスル解放の難しさは、軍事戦略と同様に政治と大いに関係がある。もしシーア派民兵組織がモスル奪取にいくらかでも参加したら、大虐殺が起こるだろう。だから、イラク特殊部隊の中でもスンニ派で構成された部隊が、ペシュメルガやシーア派民兵組織の勢力を背後に残しつつ、攻撃を主導する必要がある」

ワシントン・ポストによれば、最終的には最初の48時間でおよそ4000人のクルド人民兵組織がモスルの東側前線を攻撃し、イラク軍部隊は南から侵攻する。

その後でイラク特殊部隊が主導権を握るだろう。しかし、多くの人々は戦闘が長く困難なものになると予想している。

「私たちは最長6カ月間の、1軒1軒をしらみつぶしにするような戦闘を覚悟しています」とクルド人の当局者はBuzzFeedのジリオ氏に語った。

いずれの場合も、「より大きな問題は、ISが去った後に何が起きるかだ」とアメリカの対テロ政策を作ったスタンリー・マクリスタル(Stanley McChrystal)将軍およびデヴィッド・ペトレイアス(David Petraeus)将軍のもとで働いているスティーブン・ビドル(Stephen Biddle)氏は6月にBusiness Insiderに語った。

イラクの政治・安全保障の専門家であるワシントン研究所のマイケル・ナイツ(Michael Knights)氏は今月初めの記事で、アメリカ主導の対IS有志連合はモスル奪還後も、イラク治安部隊への十分な支援を延長する準備をしておくべきだと主張した。

「モスルを後回しにすることなく、より長くモスルの安定化に従事しなければならない」


[原文:Iraq just began what could be 'the most complex and largest' anti-ISIS operation ever

(翻訳:須藤和俊)


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