ロシア、アメリカをシリアから事実上放逐

厳しいアレッポ情勢

国連シリア監視団は12月までにアレッポ情勢への手立てを打たなければ、救済の見込みはなくなると語った

Sultan Kitaz/Reuters

(編集部注:この記事の内容は、執筆時点のものです。)

ロシア軍とシリア軍は2016年10月18日火曜日(現地時間)、包囲されたアレッポから市民と反乱軍を退避させるため、市街地への空爆を停止したようだ。

医療施設の破壊や禁止された弾薬を使用するなどの戦犯になり得るロシアとシリアによる空爆が停止となり、アレッポの市民や戦闘部隊が喜ぶ一方、この単独的動きはアメリカや国際社会を締め出すことにもなる。

つまり、アメリカと国際社会がロシアによってシリアから力づくで放逐されてしまったのだ。

アメリカはもはや「乗り回す馬を失った状態である」と、ユーラシアグループ会長でシリアや中東情勢の専門家であるクリフ・カプチャン(Cliff Kupcha)氏は言う。

カプチャン氏は、2つの重要な出来事が、これ以上なす術がないところまでアメリカの勢力を衰えさせてしまった、と語る。

かつてはアルカイダとも関連がありジャブハット・アル・ヌスラ(Jabhat al Nusra)と名乗っていたジャブハット・ファタ・アルシャム(Jabhat Fateh al-Sham)が、アサド政権への最も有力な反対勢力として台頭してきたことは、非宗教的かつ穏健な反抗者反体制派への「訓練と武装化」というアメリカの戦略への最初の痛手となった。

カプチャン氏は「2011年にシリア紛争が始まる直前には、戦場でアサド軍と対等になるくらいの非宗教的反対勢力が存在していた。

しかし、現在では、その勢力は極めて小規模なものとなり、継続するシリアでの悲劇においては意味を成さないものとなってしまった」と説明する。


ロシアのSu-24s、通称「Frogfoots」

シリアに配されたロシアのSu-24s、通称「Frogfoots」

Ministry of Defence of the Russian Federation

そして、アサド政権への有力な反対勢力が衰退した後、ちょうど1年以上前に、アサド政権への味方として現れたロシアの介入は、アメリカと国際社会の関与に終わりを告げるものとなった。

「アサド政権は滅びかけていた。ロシアの介入がそれを復活させたのだ。そして今ではアサド政権とその同盟軍が戦場の支配者となっている」と、カプチャン氏は言う。

実際に、ロシアがシリア領空の大部分を支配している現状において、アメリカ軍はアサド政権に対しての空爆を検討することもできない。最近、モスクワがシリア防衛用に行った最新鋭の地対空ミサイルの配備は、政府がコントロールする事実上の飛行禁止空域を作り上げた。

ロシアのミサイル防衛に詳しい英国王立防衛安全保障研究所のイーゴリ・スチャーギン氏はBusiness Insiderにこう語った。

「アメリカ軍はシリア政府を攻撃しようと努力している。しかし、ロシアやシリアを攻撃するには、アメリカ空軍の第5世代ステルス戦闘機であっても、運用的にも、戦術的にも極めて難しい」

しかも、カプチャン氏が指摘するように、仮にアメリカが難無くミサイルを破壊できたとしても、ロシアと戦争するリスクを冒すまでには値しない。


プーチン大統領とシリアのアサド大統領

ロシアのプーチン大統領(右)と、握手を交わすシリアのアサド大統領

Kremlin/Reuters

紛争終結策が崩壊した今、アメリカ当局はクルド人反体制派を訓練・武装化する計画を再度検討している。しかし、それも良策ではないとカプチャン氏は語る。

「理屈で言えば、訓練・武装化計画に対応できる非宗教的、非過激派の反対勢力は十分に存在する。しかし、この戦略には様々な問題がある。シリア、ロシア、イランの同盟軍は戦場にて目を見張るべき勢いがあること、また我々が『分別のある反体制派』に武器を渡そうとしても、最終的には過激派の手に渡ってしまう可能性が極めて高いことだ」

実際に過去、シリアにおける訓練・武装化計画は見事に失敗している。カプチャン氏が言うには、「最善の策は、いま我々が取っている策、つまり人命を救うためにロシアとの関係をうまく築く努力を続け、また現実的な範囲で、より広く国際社会——主にはトルコやサウジアラビアやイランなど―との関係を続けること」だ。

しかし、戦場でシリア、イランそしてロシアの影響力が増し、アメリカの軍事力行使がない状態では、これらの国々に自国の利益に反した行動を取らせることができるという見通しは、ますますかすんできている。

アメリカ、そして、国際社会が、ロシアにシリアでの行いを正すよう働きかけ続けることはできる。しかし、シリアにアメリカが影響力を行使できる可能性は実質上ゼロにまで低下している。


[原文:Russia has muscled the US out of Syria

(翻訳:バーミンガム昌子)


ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

Recommended

Sponsored

From the Web