テスラの事故調査はリコールのあり方を変えるか?

2016年5月、死亡事故が起きたテスラ

2016年5月、死亡事故が起きたテスラ。

National Transportation Safety Board

政府によるテスラの自動運転システムへの調査が始まってわずか数カ月の時点で、テスラは事故を防ぐためのソフトウェアアップデートを発表した。

テスラモデル3が「オートパイロット」で走行中に、トレーラーと衝突してドライバーが死亡した事故を受けて、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が調査を開始したのは昨年6月のこと。この事故は「オートパイロット」機能が白いトレーラーと明るい空の違いを認識できずブレーキをかけなかったことが原因と言われている。

1月19日、NHTSAは調査を終了し、リコールの対象となる欠陥は見つからなかったと発表した。

同時に、無線によるデータ通信を利用したアップデート(OTAアップデート)が車両の安全性を高めるなら、リコールの考え方を変える余地があることも示唆した。

「将来的に推移を見守っていく必要があると考えている」。OTAアップデートが一般的になったらリコールの基準を変更することはあり得るか、という質問に対し、NHTSAのブライアン・トーマス氏はそう語った。ただし現時点で具体的な動きはないと付け加えた。

テスラの説明責任

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Tesla

NHTSAはテスラの事故調査を通じて2つの重要なポイントを提示した。

1つめは、対象車はあくまでレベル2の運転支援機能が搭載されたもので、ドライバーは走行中もシステムをチェックし、万一の際はシステムに介入することが求められている。この事故で死亡したドライバーには、事故を避けるための余地があったはずだということ。

2つ目は、「オートパイロット」はもともと目の前を横切るものを察知できないので、事故時にブレーキがかからなかったのは構造上の欠陥ではないということだ。

テスラは2016年9月に事故を防ぐためのソフトウェアアップデートを発表したが、トーマス氏は「解決策」にはならないと語る。基本的に「オートパイロット」がトラックに衝突する前にブレーキをかけなかったことはシステムの機能不全には当たらない。たとえ、ソフトウェアアップデートにより、同じような状況でブレーキがかかると仮定してもだ。

とはいえ、調査が終わる前にソフトウェアアップデートを行うことは、この先、自動車メーカーにとっては膨大なコストがかかるリコールを避けられる可能性があることを示している。

報告書の中でNHTSA は、テスラのソフトウェアアップデートが「オートパイロット」の機能向上を考慮したものであると認識していると述べた。事故調査がまだ進行しているうちにアップデートをすることは、従来の自動車メーカーにはできないことだ。ほとんどのメーカーの車はOTAアップデートに対応していない。たとえソフトウェアのアップデートであっても、オーナーはディーラーに車を持ち込まなければならないのだ。

将来的には、もしソフトウェアアップデートで対応する方が、車をリコールするより早い場合は、NHTSAは欠陥が見つかった際の取り扱い方法を変えることになるだろう。

「それはこれから取り組んでいく問題であるが、迅速に検討していく」とトーマス氏。

ただし、目下のところ、簡単なOTAアップデートで修復できる欠陥であっても、自動車メーカーにとって、リコールは避けられない。

トーマス氏は「OTAアップデートで問題箇所を直せる時代を迎えつつあるが、自動車メーカーの責任は変わらない。欠陥が見つかった場合は必要な文書を提出し、リコールをしなければならない。今後も、欠陥が見つかった場合はソフトウェアのアップデートでだけでは不十分で、リコールの処置が取られる。アップデートはそれからだ」と述べた。

つまるところ、テスラの事故調査報告が明らかにしたのは、ソフトウェアアップデートで直せる欠陥であっても、自動車メーカーがきちんと説明責任を果たすことを保証するのが政府の責務であるということだ。

[原文:Tesla's Autopilot investigation could change the nature of auto recalls (TSLA)

(翻訳:十河亜矢子)

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