カジノ企業を惹きつける大阪リゾート構想 —— 次はテック業界を魅了するか 松井・府知事インタビュー

松井知事fix

インタビューに答える松井一郎・大阪府知事

中西亮介

日本のカジノ解禁への期待が高まり、大阪が最有力候補地と見られる中、米ラスベガス・サンズやMGMリゾーツ・インターナショナルなどの世界の大手カジノ企業は、関西の地にラブコールを送り続けている。関西経済の成長の鍵と称される巨大カジノリゾート計画は、他の産業にも大きなビジネスチャンスを与えそうだ。革新的なテクノロジーを開発する企業は、その1つと言えるだろう。松井一郎・大阪府知事に聞いた。

湾岸地帯に統合型リゾート(IR: Integrated Resort)を建設することで、関西経済の立て直しを図りたい大阪。テーマパークの「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)から直線距離で約3キロに位置するのが、建設予定地である「夢洲(ゆめしま)」だ。この人工島は、大阪が誘致を目指す2025年の国際博覧会(万博)の候補地でもある。

人工島・夢洲

中西亮介

松井知事は、「今年中にIR実施法(カジノ解禁に伴う規制などを定めた実施法案)ができれば、2023年頃にはIRを部分的にオープンできる」とした上で、エンターテイメント産業を大阪の新しい産業の柱の1つとして、今後の経済成長につなげたいと強調する。2016年12月、カジノを含むIRの整備推進を目的とした推進法案が、可決、成立した。政府は、施行(12月26日)から1年以内をめどに、実施法案を策定する方針だ。

世界の大手カジノオペレーターの経営幹部らはここ数年の間、府の関係者と会い、大阪のカジノリゾート構想への投資意欲を見せてきた。仮に実施法が成立した場合、地方自治体は国に対してIRの立地指定を申請する必要がある。大阪は、IR立地推進会議を立ち上げ、検討を進めていく。

府が具体的なカジノリゾート計画を練る時期はこれからだが、松井知事は BUSINESS INSIDER JAPANとのインタビューで、あらゆる最新のテクノロジーを夢洲で導入していきたいとする知事の考えを語った。

「人が住んでいないですから、壮大な実験ができるでしょう。IoT(Internet of Things)、自動運転、ドローン、VR(Virtual Reality)。最新技術はすべて入れていく」と松井知事は言う。「僕らが想像できる以上のものができるでしょう。車やバスではない新たな移動手段とかね」。

経済基盤の強化は、大阪にとって大きな課題だ。過去20年の間に電機や家電などの製造業は、減退を余儀なくされた。

カジノリゾートが運んでくる関西への経済影響は、魅力的に見える。関西経済同友会によると、IRが関西圏に誕生することで生じる経済効果はおよそ5000億円~6000億円規模だという。同時に7000億円~8000億円規模の投資が見込め、さらに、10万人弱の雇用を関西にもたらすと同会は電卓を叩く。

これらの試算を念頭に置きながら松井氏は、「(大阪府内だけでも)6万~10万人程度の雇用創出が見込める」とした。「海外から事業者が来るわけですから、世界中から優秀な人もやって来るでしょう。雇用=消費の拡大、と考えるのも自然な流れです」

近未来の巨大ベイリゾートを造る上で、年間1390万人が訪れるUSJはその成功の大きな鍵となる。松井氏によると、大阪は今後、USJとの連携をさらに強化していく予定だ。実際、USJは昨年12月に大阪府庁から程近い大阪城で、戦国時代をテーマにした特別ショー「戦国・ザ・リアルat大阪城」(音が出ます)を開催している。

「整備を行えば、車で夢洲からUSJに行けるようになる。(東京・お台場と比較し)圧倒的に勝てると思いますね」と松井氏。「USJとは、これからもっと深いつながりになっていくでしょう」

旅行者を含む人の流れを巡っては、アジア域内における都市と都市との競争が激しくなると予想される。松井氏は大阪が今後、上海やシンガポール、東京などと「切磋琢磨」できるメガシティに変化する必要性を強調した。しかし、経済規模や人口などの多くの指標において、東京との差は大きい。

府の統計によると、パナソニックやシャープが本社を置く大阪府の就業者数は、2014年時点で約420万人。2013年から5万人増加したが、2001年と比較すると49万人も減少している。大阪府でもっとも有力な産業である製造業は、2001年比で90万人から68万人まで就業人口が減っている。工場の海外移転や縮小で、サービス業を除いた全てのセクターにおいて、府内の就業者数は減っているのが現状だ。一方で、サービス業は2001年比15%増の約145万人となったが、全体の減少幅を補う勢いはない。

府の人口も2015年度に戦後初めてのマイナス成長となった。国勢調査(2015年)を見ると、大阪府の総人口は約884万人。2010年の前回調査と比べ、2万6000人減少している。東京都の人口は2014年で推計1330万人だ。バブル経済の崩壊後、1990年から1996年の間は減少し続けたが、1997年以降は増加傾向で推移している。

「IRと言うと、アジアでは『シンガポール』『香港(マカオ)』がある。アジアのIRで楽しんでいるお客さんは、大阪にIRができれば流れてくるだろう。大阪は、京都や奈良といった歴史遺産が多い観光地とも近い。IRのお客さんはいつも、カジノにいるわけでない」と、IR構想に自信を見せた。

果たして、松井知事の“挑戦”は実を結ぶのか。今後の展開を見守りたい。

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府知事応接室から見える大阪城

中西亮介

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