ニューヨークの特長を一言で表すなら「多様性」だ。食事、文化、ショッピング、エンターテインメント……。しかし、この街をもっとも際立たせているのは、革新的な起業家精神が生み出すスモールビジネスだ。
僕たちは素敵なスモールビジネスを求めて、ニューヨーク中を調査した。 鉛筆愛好家のパラダイスから、レストランを使ったおしゃれなコワーキングスペース、色光療法スパまで、今、ニューヨークのビジネスシーンをひっぱる最先端のビジネス25選を紹介する。
Samantha Lee/Business Insider; Momofuku/Facebook
App of Joe(アップ・オブ・ジョー)
App of Joe/Facebook
どんなビジネス?:街中の1ドル(約115円)コーヒーを採点するアプリ
近所のコーヒーショップに頻繁に通うと、2~3ドル(約230~245円)のコーヒー代もばかにならない。大手チェーンを避け、個人経営の店をひいきにするなら、なおさらだ。
iOSとAndroidアプリで2016年6月にサービスを開始したApp of Joeは、登録不要。マンハッタンにある約20の個人経営店で、紅茶とドリップコーヒーを1ドル(約115円)、ラテ、マキアート、カプチーノなど2ドル(約230円)で注文できる。
Archestratus(アーケストラタス)
Archestratus Books & Foods/Facebook
160 Huron St., Greenpoint, Brooklyn
どんなビジネス?:カフェとフード関連書籍のみを扱う書店の組み合わせ
シチリア人の祖父母からひらめきを得た元レア物書籍販売業のページ・リパリは、自分が大好きな本と食べ物を一緒に提供できる店を開きたいと思っていた。そして、2013年秋にArchestratusをオープン。
シチリアの古い詩人の名前に由来する店の品揃えは、料理本から食べ物関連のフィクションやノンフィクションまでを含む。カフェスペースでは、シチリアスタイルのペストリーやライスボールなどを提供。また、多数のワークショップや料理教室など、毎週イベントを開催している。
Common(コモン)
Common
Williamsburg and Crown Heights, Brooklyn
どんなビジネス?:設備の整ったシェアハウス
Commonは、仕事を持つ大人向けにシェアハウスを提供。2014年秋に1軒目を、その後、サンフランシスコとブルックリンに計2軒をオープンした。この1年間で同社は5000人以上の申し込みを集めた。
家賃は通常1500ドル(約17万2600円)からで諸費用や公共料金を含む。家具も完備され、1軒あたり19〜50人が利用できる。 しかし、単に住居を提供するだけではない。Commonは住人たちにコミュニティを形成し、ルームメイトをよく知ることを奨励している。入居者主催で持ち寄りのパーティ、健康イベント、読書クラブなどが開催される。
CoolMess(クールメス)
CoolMess/Facebook
137 E. 62nd St., Upper East Side, Manhattan
どんなビジネス?:自分だけのオリジナルアイスが作れるお店
マーガリート・ルーカスは、3人の子供と一緒に楽しめることを探すうちに、CoolMesのコンセプトを思いついた。彼女は子どもたちが飽きない、なにかインタラクティブなものを探していた。家族が70年続く小規模ハンバーガーチェーンを経営していたルーカスは、2016年1月にCoolMessをオープン。
客はテーブルの上のアイスクリーム機を使って、自分が選んだ液体状のアイスクリームの素に、クッキーやチェリーやパウンドケーキなどの中から選んだトッピングを加え、8分間混ぜ合わせてオリジナルアイスを作ることができる。手軽に済ませたければ、店が用意するレシピ「Messipes」から選ぶこともできる。
CW Pencil Enterprise(CW ペンシル・エンタープライズ)
Facebook/CW Pencil Enterprise
100A Forsyth St., Lower East Side, Manhattan
どんなビジネス?:厳選された鉛筆のお店
2014年後半にオンラインストアとしてスタートしたCW Pencil Enterpriseは、おとなしいが熱烈な鉛筆愛好家たちの要望に応えるために2015年、実店舗をオープンした。 鉛筆愛好家であり、ミレニアル世代の創業者キャロリン・ウィーバーは、昔ながらの鉛筆から小説家ジョン・スタインベックが愛用した鉛筆のレプリカまで、様々な鉛筆が持つ背景はもちろん、デザインや機能性にもこだわった鉛筆を並べている。
Dank Banana Bread(ダンク・バナナ・ブレッド)
Cailtin Makary
どんなビジネス?:保存料無添加の完全ベジタリアンバナナブレッド
ケイトリン・マカリーは、思いがけないことからDank Banana Breadを始めた。熱心なロッククライマーであるマカリーは、クライミングに出かける際に自作のバナナブレッドを持参していた。それが友人たちの間で評判になったため、ビジネスとして始めることにした。
Dank Banana Breadはブッシュウィックにあるキッチンで作られているが、ニューヨーク市各所のコーヒーショップでも入手できる。無駄を減らすため、デリバリーは自転車で行われ、再利用可能なボックスに収められている。フレーバーはオリジナルとチョコレートの2種類。保存料は無使用、原材料はすべてウェブサイトに表示されている。
Freehold(フリーホールド)
Nicholas D./Yelp
45 S. 3rd St., Williamsburg, Brooklyn
どんなビジネス?:ホテルのロビーのようなコミュニティスペース
2015年8月にオープンしたFreeholdは、昼夜問わず人が集まるレストランバーとコーヒーショップ、そして仕事スペースからなる多目的コミュニティスペース。
ソファ、テーブル、コンシェルジュデスク、バーがあり、ホテルのロビーを思わせるデザイン。さらに人工芝が敷かれ、卓球台が置かれた広々とした屋外スペースもある。
French Cheese Board(フレンチ・チーズ・ボード)
French Cheese Board/Facebook
41 Spring St., SoHo, Manhattan
どんなビジネス?:チーズがコンセプトのお店
チーズ好きのパラダイスFrench Cheese Boardはただチーズを販売するだけでなく、店内にはアート作品から調理器具、書籍までチーズに関わるものが並ぶ。
ブリーやラクレットなどのフランス産チーズを8~10ドル(約920~1150円)で購入できる。ワインとチーズのマッチングや日曜日のブランチなど多数のイベントも開催される。
Heatonist(ヒートニスト)
HEATONIST/Facebook
121 Wythe Ave., Williamsburg, Brooklyn
どんなビジネス?:試食できるホットソース店
ホットソース好きのノア・チェインバーグ氏は、ホットソースが試食できる店を作りたいと思っていた。Heatonistは2013年に設立され、ウェブを開設した後、店舗をオープンした。
マイルドから激辛の4段階にわかれた20社以上のホットソースを提供。 変わったタイプが好みなら、パイナップル味、キャロット味、ブルーベリー味もある。
HigherDOSE(ハイヤードース)
HigherDOSE/Yelp
21 E. 1st St., NoHo, Manhattan
どんなビジネス?:ハイになれるスパ
DOSEはドーパミン、オキシトシン、セロトニン、エンドルフィンを意味する。ワークアウト、フェイシャル、鍼、マッサージを一度で受けられる赤外線スパを提供している。メニューにはカロリー消費、デトックス作用、炎症や痛みを和らげる効果があり、アンチエイジングも期待できる30~60分のサウナも含まれる。
これらの組み合わせで「ハイ」になれるそうだ。 ガラスと木でできたサウナには色光療法に基づき、6色の赤外線ライトが選べる。スマートフォンを充電したり音楽を流せる機能も設置されている。利用は45ドル(約5000円)から。
Hometeam(ホームチーム)
Hometeam
Online, available throughout New York City
どんなビジネス?:高齢患者に熟練した介護ヘルパーを紹介するオンラインサービス
介護サポートにデジタルテクノロジーを活用。
介護ヘルパーはiPadを使って、患者の健康管理プランや心身状態を管理し、テキストメッセージや画像で家族に報告。患者とその家族をサポートする。料金は、1時間20~27ドル(約2300~3100円)。
Ice and Vice(アイス・アンド・ヴァイス)
Tracy M./Yelp
221 E. Broadway, Lower East Side, Manhattan
どんなビジネス?:まったく新しいフレーバーを提供する革新的なアイスクリームショップ
ニューヨークのアイスクリームシーンに遊び心のあるお店として加わったIce and Viceは、移動販売として支持を獲得し、昨年路面店をオープンした。
ショップが季節ごとの入れ替わりで扱うフレーバーは、発酵させた生クリームとバラの花びらのジャムのRose Jamやピンクグアバとチリライム味バナナチップスのTico Timeなど、風変りで、しかもとてもおいしい。基本のフレーバーでさえ、メキシカンバニラと黒い溶岩海塩のBasic Bや、ニルギリ茶・レモンチャコール・塩キャラメルのTea Danceなど、すでに変わりだねだ。
ImaxShift(アイマックスシフト)
IMAXShift
127 Plymouth St., Dumbo, Brooklyn
どんなビジネス?:IMAXスクリーンを使ったエアロバイクエクササイズ
ImaxShiftは巨大なImaxスクリーン前で行う45分間のエアロバイクエクササイズ。参加者は、宇宙空間やハワイの海岸を走っているかのような体験ができる。映像は音響システムから流れる音楽と連動している。
定員50名のこのスタジオは2016年5月にオープンし、1回の教室は34ドル(約3890円)。特定のアーティストや音楽ジャンルがお望みであれば、「ビヨンセ」ライドなどテーマごとのクラスも用意されている。
Momofuku Nishi (モモフク・ニシ)
Momofuku/Facebook
232 8th Ave., Chelsea, Manhattan
どんなビジネス?:俳優デビッド・チャンのレストラン
1月にオープンしたMomofuku Nishiは、アジアとイタリアからひらめきを得た大胆な料理を出している。
しかし、その中でもっとも話題となっているのはMomofuku Nishiのみで提供されている植物製フェイクミートを使ったImpossible Burger。チャンは最近、インスタントラーメンを発明した人物の名に由来したAndoと呼ばれるMomofukuフードデリバリーのアプリも始めた。
Outdoor Voices(アウトドア・ヴォイシズ)
Outdoor Voices/Facebook
199 Lafayette St., SoHo, Manhattan
どんなビジネス?:ほかとは違うスポーツウエア
Doing Things ―― この会社の青い野球帽にはそう書いてある。
タイラー・ヘイニー(Tyler Haney)が設立したOutdoor Voicesは、他のスポーツウエアブランドがより強さや速さをアピールしているのに対し、運動中のゆとりや気持ち良さを感じてほしいと考えている。
Outdoor Voicesがスタートしたのは2014年8月、ニューヨークに店を構えたのは昨年。ブラック、グレー、ネイビーなどの控えめなカラーで展開するウエアは、普段着にもなる。
Overnight(オーバーナイト)
Overnight's founders, from left: Artia Moghbel, Ethan Kravitz and Asher Hunt.
Overnight
どんなビジネス?:ギリギリの予約でも部屋を借りられるアプリ
すぐにでも部屋を予約したい旅行者たち向けのアプリ。オースティンからスタートし、その後ニューヨークとサンフランシスコでも利用可能になった。部屋のタイプはソファや布団などの設備をシェアするだけのものから、部屋や家1軒をまるまる借りるものまで幅が広い。
使い方は簡単。ユーザーは場所から部屋を探す。宿泊希望リクエストを送ると10分以内に返信が届く。返信がない場合は、次に利用可能な宿泊先が表示される。支払いもアプリで行う。個室が70~80ドル(約8000~9200円)、1軒まるごとで150ドル(約1万7200円)と費用も手頃。
Pintrill(ピントリル)
PINTRILL/Facebook
231 Grand St., Williamsburg, Brooklyn
どんなビジネス?:ピン収集家のパラダイス
Pintrillは2014年にウェブでスタートし、2016年春に1軒目の実店舗をオープンした。オーナーのジョーダン・ロシュワルブ(Jordan Roschwalb)氏は、ピン収集家たちにとっての出会いや情熱をわかち合える場となることを願っている。
Pintrillのピンは通常のものとは違う。カニエ・ウエストの立候補騒動を皮肉っぽく称えるようなデザインのピンが含まれた大統領支持セットのようなものもある。Shake ShackやLevi'sとのコラボデザインもある。ピンは1つ約15ドル(約1720円)ほど。
Rialto Jean Project(リアルト・ジーン・プロジェクト)
Facebook/Rialto Jean Project: Denim Doing Good
206 Front St., Lower Manhattan
どんなビジネス?:慈善活動を行うデニムブランド
Rialto Jean Projectの「Denim Doing Good」プラットフォームでは、おしゃれなビンテージデニムが作り出される。ニューヨークにあるコンセプトショップと、市内にある取扱店での売り上げの一部が、ロサンゼルスとニューヨークの小児病院へ寄付される。
Saint Seneca(セント・セネカ)
Saint Seneca
799 Cypress Ave., Ridgewood, Queens
どんなビジネス?:地元デザイナーや工芸家の作品をセレクトして取り揃えるギフトショップ
NYが生み出す才能にスポットライトを当てたいと、ジュエリーと服飾のデザイナー、ユカ・アンツィアノ(Yuka Anziano)はSaint Senecaをオープンした。2015年秋にオープンした店の名前は、お店を挟む2つの通りに由来する。
小さな子どもや親、友人から大切な人まで、様々な相手へのギフトが見つかる。皮表紙の本、まくら、おもちゃ、ジュエリー、ペット製品など、40人以上のアーティストのハンドメイド作品が並ぶ。
Spacious(スペイシャス)
Hollis Johnson
どんなビジネス?:開店前のおしゃれなレストランをコワーキングスペースを貸し出す
おしゃれなレストランのスペースを、ディナー前までコワーキングスペースとして貸し出すサービス。1カ月95ドル(約1万800円)または1日29ドル(約3300円)で利用できる。
コワーキングスペースには、Wi-Fi、コーヒー、紅茶、軽食、充電設備などが揃っている。近々、食事も提供する予定(もともとレストランなので)。
フリーで働く人にとっては、混雑したコーヒーショップから逃れることができる。またシェフたちにとっては、実験の場となることで、食文化に貢献していくことが目的。
Strong Rope Brewery(ストロング・ロープ・ブリュワリー)
Strong Rope Brewery/Facebook
574A President St., Gowanus, Brooklyn
どんなビジネス?:10種のオリジナルビールを提供するバー
オーナーのジェイソン・サラ―(Jason Sahler)は10年以上前に趣味でビールの醸造を始めた。2011年に自家醸造ビールコンペで優勝したのを機に、ピクルス工場跡地にビール醸造所を開設した。
ここには10種類のビールが用意されており、そのうち8種類はサラーの自家調合。ここでしか飲めない。またニューヨークのコミュニティをサポートすることが大事だという信念に基づき、すべての原材料をニューヨーク州内の農家や麦芽製造所から仕入れている。土曜日には5ドル(約570円)で場内ツアーとテイスティングに参加できる。
Syndicated(シンジケイテッド)
Syndicated BK
40 Bogart St., Bushwick, Brooklyn
どんなビジネス?:くつろいだ雰囲気のバー、レストラン、映画館
新作から古いインディーズ、根強いファンを持つマイナー映画などを1日3回上映する。チケットは、1本たったの3ドル(約340円)。
また、ここでは地元の旬の食材を使って仕上げられた食事も提供。客は映画館でフィンガーフードを注文することもでき、また2つの大型プロジェクターが設置されたレストランとバーでも食事を楽しめる。
Tasting Collective(テイスティング・コレクティブ)
Tasting Collective/Facebook
Select locations throughout Manhattan
どんなビジネス?:シェフが推薦するディナーに参加できる会員組織
年会費199ドル(約2万2800円)で、各レストランのシェフが自ら厳選した複数のコースメニューで構成された貸切ディナーに隔月で参加できる。さらにパートナー店や指定の食品ブランドでの特典やディスカウントもある。
The Last Word(ザ・ラスト・ワールド)
The Last Word/Facebook
31-30 Ditmars Blvd., Astoria, Queens
どんなビジネス?:金物屋の裏の秘密の酒場
店構えに騙されてはいけない。ハンマーや熊手が並ぶ店内を通り過ぎると、1920年代風の秘密の酒場がある。バーには革張りのアンティークソファが置かれ、大きな赤いベルベットカーテンがある。外に看板は出ていないが、氷やオレンジピールに名前が刻まれている。
ドリンクメニューは、House Words、Easy Drinking、Feeling Adventurous、Know Your Spiritsの4タイプにわかれており、ジン、バーボン、ウィスキー、ラムなどで作られる多数のドリンクがある。
Tornado Crepe(トルネード・クレープ)
Tornado Crepe/Facebook
1808 Weirfield St., Ridgewood, Queens
どんなビジネス?:持ちやすいクレープ
フレンチスタイルのパンケーキがコーンの容器に入れられ、トッピングはスイーツ系、食事系のものがある。スイーツ系の「トルネードクレープ」には砕いたオレオやマシュマロなどが入っている。食事系のクレープは「エビアボガド」「ソーセージ」などがある。
オーナーのマイク・ジョ(Mike Zhao)はゴマやグリーンティなどの中華風の具材でオリジナルのクレープも提供している。タピオカティー、ミルクシェイク、スラッシーもあり、ランチにはクレープとタピオカティーのセットを7ドル50セント(約860円)で提供している。
[原文:The 25 coolest new businesses in New York City]
(翻訳:バーミンガム 昌子)