1月24日火曜日(現地時間)の朝、今年のアカデミー賞ノミネートが発表され、そのサプライズに嬉しい驚きと落胆が瞬く間に人々の間に広がった。『ラ・ラ・ランド』が『タイタニック』『イヴの総て』に並ぶ過去最多の14ノミネートされたのは大方の予想通りだが、一方で“意外な作品”が賞レースに絡んできた。例えば、作品賞にノミネートされた『ハクソー・リッジ』のメル・ギブソンは、プライベートで多くの問題を抱え、今にもキャリアが潰れそうなところだった。『メッセージ』のエイミー・アダムスの演技を見た人は彼女がノミネートを逃したことに唖然としたことだろう。
Paramount
おそらく驚きというより安堵をもって受けとめられたことは今回のアカデミー賞のノミネート作品や俳優の顔ぶれに「多文化主義」が反映されていたことだ。作品賞、俳優賞にノミネートされた『ヒドゥン・フィギュアズ』『ムーンライト』や、ドキュメンタリー賞ノミネートの『OJ:メイド・イン・アメリカ』『13th 憲法修正第13条』など、アメリカの人種差別の根深い歴史に切り込んだ映画が出揃った。
『ヒドゥン・フィギュアズ』(20世紀フォックス)
20th Century Fox
『ノクターナル・アニマルズ』のマイケル・シャノンが助演男優賞にノミネートされたことは多くの人にとって衝撃的なことだったろう。映画そのものは賞レースの最中で勢いを失っていったものの、シャノンの演技の素晴らしさは色褪せない。
『ノクターナル・アニマルズ』のマイケル・シャノン(フォーカス)
Focus Features
『メッセージ』の撮影監督のブラッドフォード・ヤングは、撮影賞においてノミネートされた初めてのアフリカ系アメリカ人だった。世界中で1億6000万ドルの興行収入を叩き出すほど人々を魅了したこの作品の見事な映像は、彼のおかげだ。
『メッセージ』(Jan Thijs/パラマウント)
Jan Thijs/Paramount
批評家からの評判は良くなかったものの、『スーサイド・スクワッド』は今年のメイクアップ&ヘアスタイリング部門のノミネートに滑り込んだ。正直なところ、この作品が受賞するとしたら、この部門だけだろうが。
『スーサイド・スクワッド』(ワーナー・ブラザース)
Warner Bros.
メル・ギブソンが監督賞にノミネートされたことは、ハリウッドが彼をその内なる聖域に戻ることを許したということでもある。ギブソンは飲酒運転で逮捕された際に反ユダヤ主義の“失言”をし、10年間ハリウッドから追放されていた。
2016年カンヌ映画祭のメル・ギブソン
Getty
一方、大きな失望もあった。『ファインディング・ドリー』が批評的にも興行的にも、世界的な成功を収めたにもかかわらず、長編アニメーション賞にノミネートされなかったことだ。アメリカの2016年の興行収入では『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に次ぐ。ピクサー映画は常にアカデミー賞の常連だったのだが。
『ファインディング・ドリー』(ピクサー)
Pixar
『メッセージ』のエイミー・アダムスの主演女優賞ノミネート漏れも1つの“衝撃的な事件”だろう。作品賞と監督賞にノミネートの栄誉を得た一方で、作品を背負うスターが無視されたことには疑問が残る。
『メッセージ』のエイミー・アダムス(パラマウント)
Paramount
そして、これまでアカデミー賞に4度のノミネート歴があるアネット・ベニングは『20センチュリー・ウーマン』の演技を絶賛されたものの、賞レースに絡むことはなかった。
『20センチュリー・ウーマン』
a24
歌曲賞で『シング・ストリート 未来へのうた』がオスカーから締め出されたことには大きな落胆を覚える。昨年のスクリーン上映時には、素晴らしい曲の数々で高評価を得ていた。
『シング・ストリート 未来へのうた』(ワインスタイン・カンパニー)
The Weinstein Company
また、わたしたちは『デッドプール』の幸運を切実に願っていたのだが、残念ながら1つもノミネートされなかった。もちろん夢のような話ではあったが……。この作品のメイクや視覚効果は非常に素晴らしかった。
『デッドプール』(20世紀FOX)
20th Century Fox
[原文:The biggest surprises and snubs of the 2017 Oscar nominations]
(翻訳:小池祐里佳)