大統領令に署名するトランプ大統領
Kevin Lamarque/Reuters
メキシコ国境に壁を建設するための大統領令に先立ち、トランプ大統領は火曜日に「多くの雇用、2万8000人の雇用、素晴らしい建設事業の雇用」を創出するとして、キーストーン・XL・パイプライン(Keystone XL Pipeline)の敷設工事を推進する大統領令に署名した。
だが、すでに大統領府から次々と出されているものと同様に、数字の根拠は明らかではない。
2014年1月に国務省が発表した環境アセスメントの最終報告書では、このパイプライン敷設工事関連の経済活動によって、モンタナ州、サウスダコタ州、ネブラスカ州、そしてカンザス州において、工事期間の1〜2年にわたり約3900人規模の雇用が見込まれている。
報告書の数字が大統領の発言の1/7にも満たないのは、大統領が間接的な雇用創出を含めているからかもしれない。確かに報告書では、物販や敷設工事に伴う各種サービス関連の企業から1万6100件の追加雇用が発生すると推定し、これらの人々によって、さらに「間接的で誘発的な消費」現象として、新たに2万6000件の雇用が発生しうるとしている。
しかしながら、これらの数字はいずれも大統領の発言とは合致しない。なぜなら、報告書では「雇用」とは1年間契約の1職種と定義しているからだ。
パイプライン敷設工事終了後に必要な人員の数はわずか35名。惨めなまでに少ない。
キーストーン・XL・パイプラインが自然環境破壊をもたらすとして、環境保護団体から抗議運動が起きたのを受け、環境への悪影響を考えると長期的な国益にはならないとして、オバマ前大統領は2015年に工事申請を却下した。
しかし、今回の大統領令を受け、アルベルタに本拠を置くトランスカナダ(TransCanada)はパイプライン工事の再申請を行う意向だ。
ダコタ・アクセス・パイプライン(Dakota Access Pipeline)など、大統領が推進する他の事業も視野に入れ、環境保護団体は工事を阻止すべく準備を開始している。
(翻訳:十河亜矢子)