『ムーンライト』で麻薬の売人を演じるマハーシャラ・アリ。
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米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーに、「#OscarsSoWhite」のハッシュタグで発信された抗議の声が届いたのだろうか。
2017年のオスカー候補者たちの顔ぶれは「多彩」だ。俳優部門、制作スタッフ部門ともに、「白人」以外の俳優が名を連ねた。2015年、2016年の状況とはまったく異なる。
『ラ・ラ・ランド』が歴代最多14ノミネート(『イブの総て』『タイタニック』に並ぶ)の快挙を成し遂げたこと、それは確かにニュースだが、特筆すべきは、6人の黒人俳優がオスカーにノミネートされたことだ。デンゼル・ワシントン、ルース・ネッガはそれぞれ『フェンス』『ラビング 愛という名前のふたり』で主演賞にノミネート、マハーシャラ・アリとナオミ・ハリスが『ムーンライト』で、ヴィオラ・デイヴィスが『フェンス』で、そして、オクタヴィア・スペンサーが『ヒドゥン・フィギュアズ』で助演賞の候補者となった。20人の俳優賞候補者のうち7人が非白人だ。
作品賞には、アフリカ系アメリカ人のアイデンティティと歴史を独自の視点で掘り下げた作品がノミネートされた。『フェンス』は黒人劇作家オーガスト・ウィルソンの舞台劇の映画化、『ヒドゥン・フィギュアズ』はNASAに勤める黒人女性エンジニアたちを描いた作品だ。そして、マイアミの黒人少年の成長を3つの時代にわけて見つめた『ムーンライト』。
長編ドキュメンタリー賞でも、黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンの未完の作品をもとに人種差別の歴史を語った『I Am Not Your Negro(原題)』や、黒人監督エヴァ・デュヴァネイによる『13th ― 憲法修正第13条 ―(原題:13th)』、元有名プロフットボール選手のO・J・シンプソンの人生を追った黒人監督エズラ・エデルマンの『アメリカン・クライム・ストーリー O・J・シンプソン事件』が注目を浴びた。
その他の快挙としては、制作スタッフ部門で、ジョイ・マクミロン氏がナット・サンダース氏とともに『ムーンライト』の編集において、黒人女性として初めて編集賞にノミネートされた。また、『メッセージ』のカメラマン、ブラッドフォード・ヤング氏がアフリカ系アメリカ人初の撮影賞ノミネートとなった。
[原題:The 2017 Oscar nominees shattered records for diversity]
(翻訳:須藤和俊)