領就任後、家族と集まるトランプ大統領(2017年1月20日)。
Brian Snyder/Reuters
1月25日(現地時間)、ダウ平均株価はついに史上初となる20000ドルに達した。
1月初めに一時19999.63ドルまで迫ったものの、2カ月を経て、株式市場が取引を開始した直後、ついに指標は節目に到達した。
30歳や40歳の誕生日のように、ダウ平均の20000ドルはある意味、特別なものだ。約57兆円もの巨大な資産を動かすLPLファイナンシャルのシニア・ストラテジストRyan Detrick氏は「多くの真剣な投資家にとって、20000という数字そのものに大した意味はない」という。
市場がなぜこのように動いたのか、次に何が起こるのか。そこにこそ注意を払うべきだ。
「我々は非常に狭い枠の中にいたが、今それを突き破ろうとしている」とDetrick氏は米Business Insiderに語った。「それは絵に描いたように見事に」
30の主要企業で構成されるダウ平均は、アメリカの株式市場と経済のバロメーターとして使われているが、価格の高い株ほど指標全体にもたらす影響が大きい。一方で、S&P500は時価総額に加重する指標のため、構成銘柄の評価の影響を受けやすいと言える。
このグラフを見ると、ダウ平均の中で最も高い価格をつけたゴールドマン・サックスの株価が、ダウ平均20000ドルに到達するのに貢献したことがわかる。ゴールドマン・サックスが1%動けば(直近の価格にして1株あたり約236ドルだ)ダウ平均が16ポイント動く。大統領選以降、ゴールドマン・サックスの株価は30%ほど上昇している。しかしこれが説明するのは全体のほんの一部だ。
Andy Kiersz/Business Insider; data via Bloomberg
市場にとって破滅的な候補者と考えられていたドナルド・トランプ大統領は、少なくとも選挙日以降、ダウ平均が9%上昇したことからみれば、投資家にとって良い存在だったようだ。
Andy Kiersz/Business Insider; data via Bloomberg
株価の上昇は、トランプ大統領が大勝した後、ヒラリー・クリントン候補が敗戦を認め、ウォールストリートが単にひと息ついたという側面もある。
「大統領選後のダウ平均の上昇は、むしろ不確実性が減ったためだ」とコモンウェルス・ファイナンシャル・ネットワークのBrad McMillan氏は言う。「言い換えれば、我々の先の見通しが立ったということだ」と米Business Insiderに語った。
選挙の後、投資家たちはアメリカの市場や経済にとってトランプ大統領がどのような意味を持つのか理解し始めた。法人税の引き下げ、規制緩和、大規模なインフラ投資がトランプ氏が約束し、自信を持って進める親ビジネス路線だ。
トランプ大統領は就任後、最初の1週間をまさにここに費やした。25日(現地時間)、トランプ大統領はキーストーンXL及びダコタ・アクセス・パイプラインを進めるべく、大統領令に署名。自動車会社のCEOたちと会い、国内生産を増やすよう求めた。
ダウ平均の20000ドルについても、「素晴らしい! 」と大統領はすぐにツイート。アドバイザーのKellyanne Conway氏は「これこそトランプ効果だ」と呼んだ。
ダウ平均21000はいつ?
「20000という壁を破ったということは、株価の上昇は今後も続くということだ」と前出のMcMillan氏は言う。「こうした壁は打ち破るのが困難だが、一度破れば、下値支持線になる」。
しかし、25日の取引を20000ドル超えで終われたことは、節目として記憶しておく必要がある。64日間で19000ドルから1000ポイント動いたのは、史上2番目の速さだ。最も早かったのは、10000ドルから11000ドルに35日間で上がった1999年の記録で、これがいわゆるITバブルの崩壊につながった。
株価は再び高値を付けている。直近10年間の平均収益に基づいて計算され、インフレの指標ともなる「※景気循環調整後の株価収益率」は、2000年代初め以降、最も高い水準にある。選挙後にダウ平均が上昇する前から、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのストラテジストSavita Subramanian氏は大半の指標が過去の平均を上回っていると指摘していた。
ダウ平均20000ドルは株価がいかに高かったか、記憶しておくべき瞬間だ。もちろん、高値イコール差し迫った危機を意味するものではない。Subramanian氏を含め複数のストラテジストは2000年のような株価の暴落が近く起こるとは予測していない。
ひとつには、収益の成長がようやく価格の上昇に追いついたことがある。S&P 500の第3四半期の収益は、ここ6四半期で初めて増加し、第4四半期も更なる成長が見込まれている。25日には事前の予測を上回るボーイングの株価がダウ平均20000ドルを支えた。
※訳注)景気循環調整後の株価収益率(CAPE)とは、ノーベル経済学賞を受賞したイェール大学のロバート・シラー教授が考案、ITバブルの崩壊を予見した指標として有名。一般的なPER(株価収益率)が株価を1株あたりの当期純利益で割って算出するのに対し、CAPEは過去10年間の平均利益に物価変動を加味した値を1株あたり利益として算出する。
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大統領選後の市場の動きをリードし、1月初めには安定した金融株や小型株の収益が、ダウ平均20000ドル超えを最終的に押し上げた。これは株価上昇がある程度長続きする可能性を示しているとDetrick氏は言う。
[原文:Here's why Dow 20,000 is the 'picture-perfect' moment Wall Street has been waiting for (BA, GS)]
(翻訳:編集部)