Reuters
トランプ大統領は26日木曜日(現地時間)の午後、メキシコからの輸入品に20%の関税を課すことで国境の壁の建設費を捻出する考えをちらつかせた。
そして、いずれにせよ壁の建設費はメキシコに支払わせるとした。
だが問題は、もしメキシコからの輸入品に20%の関税をかけるなら、そのツケを払うのはおそらくアメリカ自身になることだ(そもそもこうした関税は、世界貿易機関に加盟しているアメリカにとって国際商取引法の侵害にあたり、メキシコとの貿易協定に違反するものだ)。
「トランプ大統領の考える壁の資金調達法は自動車業界を鉄クズにするだろう。アメリカの労働者とビジネスへの影響がただちに出る」と公共経済学が専門のカーネギーメロン大学のリー・ブランステッター(Lee Branstetter)教授は語る。
大統領発言を受け、S&P500指数の自動車部品関連の株は2%下落した。
NPO法人the Center for Automotive Research(CAR)によると、メキシコは505億ドル(約5兆8000億円)の自動車と5010億ドル(約57兆6000億円)の自動車部品をアメリカに輸出している。さらに過去6年にわたり、米国自動車メーカーはメキシコの自動車産業界に240億ドル(約2兆7000億円)の投資をしている。
しかもすでに、アメリカとメキシコ間の物流の崩壊がデトロイトに致命的な打撃を与えた例がある。
ピーターソン研究所は最近のレポートの中で以下のように記した。
「9.11直後の状況がよく似ている。メキシコとの国境を封鎖したことによって供給ラインが途絶えた結果、アメリカの自動車組み立て工場は1週間を待たずに操業停止に追い込まれた。デトロイトからの怒りの声に政策は見直しを余儀なくされた。トランプ大統領の計画に対する反応は、より一層劇的なものとなるだろう」
貿易協定と税制は不可分である以上、政府がどこまで計画を推進できるかは不明だ。しかし、トランプ大統領は国家の非常時にあたり関税は必要だと主張するだろう。言った先から、正当性を疑う訴訟がただちに起こされるだろう。
ピーターソン研究所のレポートはさらに「トランプ大統領はおそらく、中国とメキシコからの輸入品がアメリカの製造業にもたらしたことは国家安全保障に関わる問題であるとして調査を命じるだろう。例外なく、裁判所は大統領府による安全保障の決断を受け入れる。つまり、調査を経て、トランプ大統領が広範囲な輸入品に対して高額の税を課すことはあり得る」と述べている。
それは当然、物価の上昇を意味する。だが、不当移民や麻薬の流入を懸念しているアメリカ国民なら、それでも仕方がないと思うのかもしれない。
ブランステッター教授は「大統領が自ら望む政策を実行している。つまり、アメリカ国民はもう雇用について心配しなくてもいいということだろう」と話す。
そう、だから心配なのだ。
[原文:'Trump's plans to finance his wall are going to hit the auto industry like a ton of bricks']
(翻訳:十河亜矢子)