ハーバード大学のグレゴリー・マンキュー(Gregory Mankiw)教授
Screenshot via National Geographic/YouTube
ハーバード大学のグレゴリー・マンキュー(Gregory Mankiw)教授は世界で最も権威ある経済学者の1人であり、共和党支持者だ。彼はブッシュ政権下で大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長に任命され、2008年と2012年には共和党の大統領候補であったミット・ロムニー氏の顧問を務めた。
彼によれば、アメリカには炭素税が不可欠だという。
ナショナルジオグラフィックのインタビューで、マンキュー教授は、アメリカの温室効果ガス排出削減のためには炭素税が最善策であるとの見解を示した。なお、このインタビューはドキュメンタリー映画『地球が壊れる前に』で科学記者に扮した俳優レオナルド・ディカプリオ氏によって行われた。
炭素税とは、石炭燃焼やガソリン消費などのような大気中に二酸化炭素を排出する活動のコストを引き上げる税の総称だ。
「あなたも社会で他人に悪影響を与える有害な活動には課税したいと思うはずだ。課税によりたばこの価格が上がれば、たばこを消費する人々は少なくなる」とマンキュー教授は語る。
米国の温室効果ガス排出量の80.9%を占める二酸化炭素は、地球温暖化の主な誘因である。化石燃料や木材、固形廃棄物を燃やす際に大気中に放出され、植物によって吸収される。
科学者によれば、この半世紀で人間の活動は大気中の二酸化炭素の急激な増加を引き起こした。地球上で過去1500万年見られなかったレベルの増加で、世界各地で深刻な事態を招いている(マンキュー教授が支持する党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏は、この明らかな事実を認めていないようだが)。
「温室効果ガスの排出量削減のための社会的責任を人々にアピールすることは、とてつもなく難しい。彼らには生活があり、ほかに悩みごとを多く抱えているからだ。何かを決めるたびに地球温暖化を気にしたくはないし、できない。炭素税は人々が正しい行動をとるよう促すことができる」とマンキュー教授は続けた。
炭素税は人々が正しい行動をとるよう促すことができる。
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ディカプリオ氏は、共和党支持者が新しい税の導入を主張することに驚いたとコメントした。
マンキュー教授は、さらに「炭素税導入に関して重要なことの1つは、それに応じて他の税の見直しや節税ができることだ。例えば、支払い給与税の見直し。これは増税ではなく、税の転換なのだ」と語る。
教授がアメリカ合衆国大統領行政府の重鎮であったことを踏まえ、ディカプリオ氏は「一体どうして炭素税は現在、導入されていないのか?」と質問した。マンキュー教授は「政治家は、学者が彼らに望むことを、いつも実行するわけではないからだ」と答えた。
マンキュー教授はこの問題を同性婚問題と比較した。オバマ大統領は2008年の大統領選挙の際には同性婚に反対する立場を取っていたが、ひとたび世論(とジョー・バイデン副大統領)が理解を示すとその立場を一転させた。
「私たちは米国民を啓発する必要がある。ひとたび国民が納得すれば、政治家が追従するのは時間の問題だ」
[原文:One of the most influential economists in the world explains why a carbon tax is a good idea]
(翻訳:小池祐里佳)