トランプ大統領最初の1週間はこれまでの大統領とまったく異質

トランプ大統領

ドナルド・トランプ大統領

Alex Wong/Getty Images

なんて1週間だったんだ。

1月20日金曜日(現地時間)にトランプ大統領が誕生して以来、過去に類を見ないほど矢継ぎばやに、ホワイトハウスからニュースがなだれ込んできた1週間だった。

大統領は大統領令を次々と発令。多くは選挙中に公約していた内容だ。またThe New York Times、ABCやFox Newsを始めとするメディアに対してホワイトハウスでインタビューに応じた。

と同時に、就任式に集まった人数の大小についての論議や、11月の選挙時に何百万もの人が違法に投票したため一般投票を逃したとの論調でマスコミと対立した週でもあった。

「新大統領は毎時間、なにかしでかす」と共和党議員に言わせたトランプ大統領の就任後最初の1週間を振り返る。


土曜日

就任式後の1日目には全国で、また国際的にも反トランプ大統領のデモが繰り広げられた。ワシントンD.C.で行われたウーマンズ・マーチは史上最大規模を記録し、その人数は前日に行われた就任式を上回るほどだった。

就任式に集まった人数と、このデモに集まった人数の情報が交錯した結果、大統領は訳のわからない決断をする。

最初はCIA職員の前でのスピーチ。任務中に殉職した職員を称える壁の前で、CIA全体に対する絶対的な支持を表明したまでは良かったが、その後、就任式の参加者数について報道する「不正直な」メディアに対して不平不満をぶちまけた。

「たくさんの人が会場に来ていた。とても混んでいた。でも今日起きてテレビをつけたら、空っぽの広場が映し出されていた」「ご存じの通り私はマスコミと戦っている。メディアは地球上でもっともいい加減な人種だ」

その後行われた記者会見の中でも、ショーン・スパイサー報道官が、マスコミの姿勢を非難し、質問も一切受け付けなかった。

報道陣に向かって叫び続ける中でスパイサー報道官は思わず「昨日の就任式は史上もっとも多くの観衆を集めた。実際に集まった人数についても、世界中で映像を通じて観られた数値においても」と断言してしまい、プロスポーツ界にまで飛び火するような突っ込みどころ満載ネタが誕生した。

日曜日

日曜日は大統領がウーマンズ・マーチと就任式の視聴率についてツイートすることから始まった。

「マーチで行進した人たちはなぜ投票に行かなかったのか? 選挙をしたばかりなのに。有名人も悪影響だ」「平和的行進は民主主義の特権。いつも賛同するわけではないが、自分たちの視点を表現する権利をみんな持っていることは認識している」

陣営のスタッフたちはテレビ出演をして、就任式の観衆数についての大統領を擁護。顧問のケリーアン・コンウェイ氏はNBCのインタビューで、政権は嘘をついているのではない、「オルタナティブ・ファクト(代替的事実)」を提供しているだけだと述べた。

ABCとの別のインタビューでもコンウェイ氏は、大統領が納税報告書を公開しなかったことを「誰も気にも留めなかった」と述べ、これからも公開する意志はないと述べた。しかし、その後、訂正を余儀なくされ、納税報告書は現在監査中だとした。

一連の要職の就任式の中で大統領は、オバマ前大統領から受け取った手紙に感謝の意を表し、内容はマスコミに明かさないと述べた。

また国防関係者のレセプションで、選挙中、民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏に大打撃を与えたFBIのコミ―長官と大統領が親しく挨拶を交わす姿も見られた。


月曜日

TeslaとSpace XのCEOであるイーロン・マスク氏を含むビジネス界のトップたちからなる経済助言チームとのミーティングから月曜日は始まった。大統領は規制緩和を行う一方、製造拠点を海外に移した場合は代償を要求するとした。

政治倫理の専門家が利益相反問題に関し大統領に対する大規模訴訟を起こし、大統領がすべてのビジネスを手放すか、資産を白紙委任して独立した管理者の手に渡すべきだとした。訴訟に関係している弁護士はまた、大統領の納税申告書に関しても改めて要求した。執務室でこの件について聞かれた大統領はなんのメリットもない訴訟だと言ってそれ以上は触れず、後にホワイトハウスが、大統領はすでにすべてのビジネスから手を引いていると述べた

大統領は、オバマ政権が「アジアの再均衡」と呼んだ外交戦略だった環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱するべく大統領令に署名。また、中絶や家族計画の支援を行うアメリカのNGOには連邦政府からの助成金支払いを禁じる大統領令にも署名した。

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スパイサー報道官

Chip Somodevilla/Getty Images

スパイサー報道官は初めて行われた質疑応答を含む正式な記者報告会の中で「我々は時として、事実と、意見を違えることもある」と話した。

月曜日の議会のリーダーとの会談の中で大統領は、移行期にもよく発言していた、何百万人もの人が11月の選挙時に違法に投票したとする説を改めて繰り返した。大統領はそのために一般投票でヒラリー氏に負けたと以前発言したことがある。一般投票での両候補者の差は300万票だった。


火曜日

火曜日は、フォード、GM、フィアット・クライスラー・オートモビルズの自動車3大メーカーのCEOとのミーティングで始まった。大統領は国内に製造工場を増やし、雇用を拡大するよう提案した。また、キーストーン・XL・パイプラインと、ダコタ・アクセス・パイプラインの建設計画を推進する大統領令に署名。

最高裁判事候補について議論するため、上院議員のリーダーたちと会談。何百万人も違法に投票した者がいるという説を蒸し返し、共和党員すら困惑させた。スパイサー報道官は記者会見でこの件について質問攻めに遭い、「もしかしたら」調査をするかもしれない、とした。

イスラム圏からの移民を拒否する大統領令と、メキシコとの国境に壁を建設する大統領令に署名するのではないかと報道されたが、この日は署名には至らなかった。

大統領はまた、夕方の連続ツイートの中でCNNは偽ニュースだとし、逆にFox Newsを褒め称えた。Fox Newsのビル・オーレイリー氏の番組内で取り上げられたシカゴの銃犯罪対策に触れ、「シカゴがあのひどい修羅場を治められないなら、連邦捜査官を送り込むぞ!」とも。

明日水曜日は壁を建てる日になる、とツイート。


水曜日

大統領が先の選挙で、莫大な数の違法投票があったとする件について、「では調査しないのか」との質問に対して、「大規模調査」が予定されているとツイート。昨年末から期待されていた、ダウ平均の2万ドル超えがこの日実現し、大統領は「グレイト!」とツイート。

新たな大統領令に署名し、メキシコとの国境に壁を建設すること、「聖域都市」と呼ばれる移民に寛容な地区において不法移民への強硬な処置を要求。ABCのインタビューの中で、壁の建設は数カ月以内に始めるとした。大統領はまた、拷問は絶対的な効果があるとした。

違法投票について聞かれ、何百万と言う違法の票のうち1票たりとも自分には入らなかったと主張し、調査をするとインタビュアーのデイビッド・ミュアー氏に約束した。

ミューア氏にイスラム圏からの人々の入国を一時的に禁止することは、むしろ怒りを買わないかと質問された大統領は「怒り? この世は怒りにあふれている。これ以上の怒りはいらない」「きみは洗練された男だが、世界はいま混沌の中にある。世界中の怒りが頂点に達している。移民禁止がもう少しの怒りを誘発する? 世界は怒りにあふれた場所なのだ」と回答した

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大統領執務室で大統領令に署名するトランプ大統領

Pool/GettyImages

The New York Timesによれば、伝説的ドイツ人ゴルファー、ベルンハルト・ランガ―(Bernhard Langer )氏はトランプ大統領の支持者で、選挙当日フロリダ州の投票所で投票しようとしたところ投票ができなかった。だが、見るからに投票が許されていないような2人が投票できていたと大統領に語った。しかしランガー氏は後にこの話を否定。自分が直接体験したことではなく、話に聞いただけで、この話を大統領にしたのも自分ではないと述べた。

メキシコ国境の壁建設に対する大統領令の署名を受けて、メキシコのペニャニエト大統領はその動向を批判し、トランプ政権最初の国際的な小競り合いとなった。


木曜日

大統領は、朝のテレビ番組Fox Newsで取り上げられた、オバマ前大統領からの恩赦で釈放が決まったチェルシー・マニング氏について、「ぶざまな裏切者」と糾弾した。

メキシコにも攻撃をしかけ、「国境の壁の建設費を喜んで用意する準備がないのであれば、予定されているミーティングをキャンセルしてもらって結構」とし、昼過ぎにはメキシコのペニャニエト大統領からミーティングをキャンセルすると発表があった。スパイサー報道官はその後、メキシコからの輸入品に20%の関税をかけ建設費にあてる案があるとした。

大統領は、フィラデルフィアの集会で観衆のブーイングを受け、即興のスピーチの後、ステージを降りるはめになった共和党議員について述べた。

また、首席戦略官であるスティーブン・バノン(Steve Bannon)氏がThe New York Timesに電話し、マスコミは「黙って」「人の話を聞け」と発言。


金曜日

グレッグ・フィリップス(Gregg Phillips)氏がCNNで自身の団体であるVoteStandが何百万といた違法投票者たちについて数カ月以内には調査結果を発表できるとした件に触れ、大統領は「VoteStandの結果が楽しみだ。フィリップスとそのチームは少なくとも300万人が違法に投票したと言っている。我々はもっといい仕事をするべきだ!」とツイートした。

メイ首相とトランプ大統領

メイ首相とトランプ大統領

Christopher Furlong/GettyImages

英国のテリーザ・メイ首相とのミーティングがこの日のハイライトだった。大統領にとっての初の首脳会談。 2人は米英間にある特別な関係について触れ、記者団から質問を受けた。回答の中で大統領は、拷問についてはジェームズ・マティス(James Mattis)国防長官が独自に判断するのに任せるとしたが、個人的に効果があると信じていると述べた。

別のインタビューの中で大統領は、木曜にバノン氏が発言したマスコミは「敵対する別の党も同然だ」という意見に賛同した。

その後マティス国防長官の就任式に出席し、2つの大統領令に署名した。1つは、IS撲滅計画などの軍事計画について、もう1つは、避難民を含むイスラム圏の人々の米国への入国を一時的に禁止するというもの。


これが意味すること

大統領令とそれが第1四半期に与える経済的影響、米英関係および他の国々との貿易協定、メキシコ国境の壁の問題、主に3つのトランプ大統領の最初の1週間の大きな問題だったと、政治コミュニケーション・コンサルタントのマット・マコーヴィアク(Matt Mackowiak)氏は述べた。

「多くのことがこれらの問題にかかっている。上り下がりの激しい1週間ではあったが、トランプ大統領は選挙公約を実行しているだけだ。問題は、人々が自分の生活は良くなったと実感できるような形で大統領が約束を守ることができるかどうかだ」

Horizon Investmentsの国際戦略チーフストラテジスト、グレッグ・バリエア(Greg Valliere)氏は、過去のどの大統領の最初の1週間ともまったく異質な7日間だったと述べ、大統領の言っていることが実際に成立するまでにはかなりの時間がかかるとした。

「この1週間ずっと強調してきたが、大統領の優先事項が実際に成立するまでには大統領が約束しているよりももっとずっと長い時間がかかる。辛抱の足りない市場はワシントンの氷河期の中でしばらく生きなければならない。市場はただ待つしかない」

[原題:Trump's wild first week in office was like nothing ever seen in the presidency

(翻訳:日山加奈子)

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