トランプ大統領による米国への移民の入国を禁ずる前例のない大統領令に対し、IT業界の著名人たちは口々に声明を発表。懸念を示し、厳しく批判し、そして協調を呼びかけた。
先週末にかけ、Google、Apple、Facebook、AirbnbなどのCEOのほぼ全員が、イスラム圏7カ国出身者の入国を90日間停止、すべての国からの移民受け入れを120日間停止する、という大統領令に反対する姿勢を示した。
配車サービスアプリのLyftは、大統領令に対抗するため、法的措置を申し立てた米自由人権協会(ACLU)への巨額の寄付を約束。また、経営者のほとんどが発令に影響を受ける社員に対し、無料で法的支援を行うとした。 IT業界のリーダーからの発言は以下の通り。
大統領令に対して立ち上がったIT経営者の1人、Google CEOのサンダー・ピチャイ氏。
Getty Images
Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏はいち早く懸念を表明
「多くの人たちと同じように、わたしもトランプ大統領がサインした発令による影響を懸念している」とFacebookに投稿。 子どもの頃に米国に連れてこられる“夢見る”移民を国外追放から守るという大統領の漠然としたコメントに、まだ希望を持っていると述べた。
Facebook CEO マーク・ザッカ―バーグ氏
Googleは発令を批判し、影響を受ける社員に対して早く米国に戻るよう呼び掛けた
「わたしたちは、Googleの社員とその家族に制限を課す大統領令を遺憾に思う。米国に優れた才能が集まるのを妨げる恐れがある」と全社的なメールで発表した。 「この発令によりわたしたちの同僚が負う被害に胸が痛む」
CEOサンダー・ピチャイ氏による 、Google社員に宛てたメッセージの全文はこちら 。
Reuters/Beck Diefenbach
Googleの共同創立者セルゲイ・ブリン氏はサンフランシスコ空港での抗議活動に参加
Stephen Lam/Reuters
Forbesの取材に対し「ここに来たのは、わたしも難民出身だからだ」と話した。
マイクロソフトのブラッド・スミス氏は全社メールで社員に対し、法的支援を申し出た
マイクロソフト社長兼法務責任者であるスミス氏は「移民法は人々の表現の自由と信教の自由を侵害することなく、市民を守るべきものだと、わたしたちは信じている」と表明。 またインド出身のサティア・ナデラCEOは、メールの序文で「移民が、わたしたちの会社に、国家に、そして世界に、ポジティブな影響を与えるのを見てきた」と記した。
Thomson Reuters
Apple CEO ティム・クック氏「わたしたちは支持しない」
「イスラム圏7カ国からの移民に制限をかける発令に、あなたがたが懸念を持っていることを理解している。わたしも同じ気持ちだ。わたしたちは大統領令を支持しない」と語り、影響を受ける社員に法的支援をする用意があると付け加えた。
AP Photo/Richard Drew
Uberは、帰国できないドライバーを補償。大統領との会談で「無実の人に影響がある」と伝えると表明
トランプ大統領のビジネスアドバイザー・チームの一員であるCEOトラビス・カラニック氏に、抗議団体と社員の双方から批判が集まっている。 土曜日の全社メールでカラニック氏は「どの政府にも独自の移民法がある。しかし、世界中から人々を受け入れ、米国を彼らの家とすることは、建国以来の米国の方針だ」と述べた。
さらに今週の金曜日、ワシントンでトランプ大統領との初めてのビジネスアドバイザー・ミーティングに参加する際には、この問題を取り上げるとした。 来週日曜には再び声明を出して、Uberのドライバーに法的支援を行い、収入を失ったドライバーを補償すること、300万ドル(約3億3000万円)の法的防衛基金の創設を発表し、さらに「米国在住者が自由に旅する権利を戻すよう政府に働きかける」とした。
Uberは、28日土曜日の夜に行われたニューヨークJFK空港でのタクシーの抗議ストライキに参加せず、憤った何千人ものユーザーがUberのアプリを削除。#DeleteUberは一時、Twittterのハッシュタグランキングの1位となった。 カラニック氏が社員に宛てたメッセージの全文はこちら。
Reuters/Robert Galbraith
Lyftは、拘束された難民の入国を認めさせたACLUに100万ドルの寄付を約束
「わたしたちは抗議する立場を崩さない。社会を脅かす事態を黙認しない」と、Lyft共同創業者ジョン・ジマー氏とローガン・グリーン氏は顧客に向けたメッセージを出し、「憲法を守るため、向こう4年間にわたり米自由人権協会(ACLU)に100万ドル(約1億1000万円)以上の寄付をする」と明らかにした。
Lyft
Airbnbは米国に入国できない難民に無料で宿を提供すると発表
世界最大級の宿泊予約サイトAirbnb CEOは「難民をはじめ、米国に入国を認められないすべての人に無料で宿を提供する」と発表し、社員向けのメッセージの中で「大統領令に心から反対する。Airbnbの使命に真っ向から障害となるものだ」と語った。
Airbnb CEO Brian Chesky
Kimberly White/Getty Images for Fortune
PayPalの創業者、ピーター・ティール氏もこの発令を「宗教的踏み絵」と否定
ペイパル創業者であり、億万長者のピーター・ティール氏。トランプ大統領に近しい関係のティール氏だが、この発令を「宗教的踏み絵」だと否定した。ティール氏の広報担当者は「彼は今回の発令を支持していない。またトランプ政権は彼に支持を求めていない」とForbesに語った。ティール氏は、1970年代にドイツから米国に移住。先日、トランプ大統領とIT業界のトップリーダーたちとの会議を支援していた。
Neilson Barnard/Getty Images for New York Times
[原文: 'So un-American it pains us all' - How tech titans are responding to Trump's immigration ban]
(翻訳:十河亜矢子)