大統領執務室のトランプ大統領
Pete Marovich - Pool/Getty Images
イスラム圏7カ国からの入国を一時的に禁止する大統領令に対し、同じ共和党内の議員たちから激しい批判を受けた大統領は、29日日曜日(現地時間)に公式声明を発表。またTwitterでも、その議員たちを激しく批判した。
ジョン・マケイン(John McCain)議員とリンゼイ・グラハム(Lindsey Graham)議員は、連名で声明を発表し、大統領令を「対テロリスト戦における自傷行為」と呼んだ。党内でも発言力の大きい2人の議員が大統領令に反対したことで、各地での抗議運動が活発化した。
大統領はマケイン、グラハム両議員を29日夕方のTwitterで引き合いに出し、このベテラン議員たちを「第3次世界大戦を始めようとしている」と攻め立てた。
元大統領候補のマケイン氏とリンゼイ・グラハム氏が出した連名での声明は間違っている。悲しいことに入国管理について、彼らは甘い考えしか持っていない。
あの2人は自分たちのエネルギーをもっとISIS対策や不法移民対策、国境周辺の安全対策に使うべきだ。第3次世界大戦の可能性を探る暇があるくらいなら。
連邦裁判所の判事たちは土曜日に続き、日曜日も大統領令の影響で、全米中の空港に足止めされている旅行者に対し、強制送還を阻止する判断を下しているが、長期にわたる解決や大統領令の合法性など依然として不透明な部分が多い。
長文の激しい声明の中で、大統領はこの一時的処置を擁護し、これは宗教についての禁止令ではなく、国境と国民を守るための措置だとした。
世界各国の要人が批判的な発言をしている。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相はトランプ大統領に対し、テロリズムに対する国際的な戦いはイスラム圏の人々を米国に入国させまいとする禁止令の言い訳にはならないとした。
トランプ大統領の声明
アメリカは誇り高き移民の国であり、過去と同様これからも、圧政から逃れてきた人びとに対して思いやりを示していくことは変わりないが、これからはそれを我々の国境と国民を守りながらやっていく。
アメリカはいつも自由の国であり、勇敢な者たちの家庭であった。我々はこの国を自由に、そして安全に保っていく。マスコミはそれを理解していながら、理解していることを認めようとしない。
わたしの政策は2011年にオバマ前大統領が行った政策と似ている。オバマ前大統領は6カ月の間、イラクからの避難民にビザを出すことを禁止した。今回の大統領令に示された7カ国はすでにオバマ政権によってテロの脅威となり得ると確定されていた国々だ。
明確にしておきたいのは、これはイスラム教徒に対する禁止令ではないということ。マスコミは間違った報道をしている。これは宗教についての問題ではない。これはテロ対策であり、国を安全に保つための行為だ。
世界中にはさらに40数カ国のイスラム教徒の国々があり、それらの国々は今回の大統領令に一切影響を受けていない。今後90日以内に安全政策を策定し、再監査の後には7カ国に対してビザを発行していく。わたしは今、シリアで非人道的な危機にさらされている人々のことを考えている。わたしにとっての最優先事項はこの国を守り、この国に仕えることだが、アメリカの大統領として、苦しんでいるすべての人々を助けなければならないとも考えている。
マケイン、グラハム両議員の連名声明
政府は国境の安全を守る責任があるが、それは我々をより安全にするという考えのもとになされるべきであり、我々の国の持つ公正さと特異性のすべてを維持する形でなされなければならない。
国中の空港で起こっている混沌の結果から明らかなように、大統領令は的確に施行されていない。 特にこの発令が、国務省、国防省、司法省、国土安全保障省に一切の相談もなく、あるいはあったとしてもごく限られた相談の後にすぐさま発令されたという報告を受けて、その点を特に問題視している。
性急なプロセスは損害の大きな結果を生み出す危険性がある。永住権保持者が自分の国に戻ってくることをとめるべきではない。自分たちの命を危険にさらしてでも我々を助けてくれた、軍や要人のための通訳が入国することをとめるべきではない。そして我々は、わが国に対しいかなる脅威も示しておらず、また口に出せない恐怖に苦しんできた避難民の方々に背を向けるべきではない。その多くは女性であり子供である。
究極的に、この大統領令が、テロリズムに対する対抗策と言いながら、自傷行為になりはしないかということを我々は危惧している。今この瞬間にも、米軍は我々のイラク人同胞と肩を並べながらISISと戦っている。だが、この大統領令はイラク人パイロットがアリゾナ州の米軍基地に来て、我々の共通の敵と戦うために飛行することを禁じることになる。我々のISISとの戦いの中でもっとも大事な味方は、イスラム教徒が大多数を占める国々である。
この大統領令は、意識しているしていないにかかわらず、イスラム教徒にアメリカに入国してほしくないという間違ったメッセージを送っている。 だからこそ、我々はこの大統領令が我々の安全性を高めるよりも、テロリストがその勢力をリクルートする助けになりはしないかということを恐れている。
(翻訳:日山加奈子)