島国であるキリバス共和国は、最近設けた禁漁区に漁船「マーシャル203」が侵入したとの疑いを持ったが確証がなかった。しかし、そこは『(Global Fishing Watch)』が監視していた場所だった。
海洋保護に取り組むOceana、衛星を使って地球環境を画像化しているSky Truth、Googleによって設立されたこのNPOは、自動船舶識別装置(AIS)のデータを分析して漁船を特定し、どこで操業しているかを予測する。
マーシャル203のケースでは、漁船が禁漁区で操業していることを表す、紛れもない画像を提供した。
「私たちがこの画像を提供し、(キリバス共和国側が)マーシャル203の船長に見せたとき、彼は摘発が逃れられないことを理解した」とOceanaの副代表で、グローバル・フィッシング・ウォッチ担当のジャッキー・サヴィッツ(Jackie Savitz)氏は語った。
キリバス共和国は昨年この画像を使い、漁業会社に200万ドル(約2億円)を支払わせた。
グローバル・フィッシング・ウォッチは誰でも自由に使えるオンラインツールだが、盲点もある。AISデータの送信が求められない船舶(特に小さい船舶)があるうえ、違法操業を行う漁船は装置をオフにしている可能性がある。
時にはAISデータの輝点が、疑わしい活動をする船舶の特定に用いられる。サヴィッツ氏は、ガラパゴス諸島の排他的経済水域(EEZ)を通り抜ける間に地図から消えた船を指し示した。明らかに違法操業だ。
AISの限界から違法操業の船舶を特定するのが難しいエリアもある。ソマリアの沿岸だ。ソマリアの沿岸は広大だが、地図を見ると明らかなように、すべての船舶が動きを止めている。禁漁区に近づきはするが、侵入していない。
しかし、海運業界からの指摘は注目に値する。つまり、海賊の出没エリアであるソマリア沖を通過する際には、海賊に襲われる可能性が高くなると判断すれば、AISを切ることができるのだ。
グローバル・フィッシング・ウォッチは、漁船が漁獲物を違法に他の船に積み替えているかどうかを見分けることに使うこともできる。
サヴィッツ氏は、チリの漁場の外側で疑わしい航行を繰り返している船舶を指し示した。
グローバル・フィッシング・ウォッチは、将来的に追跡領域を拡げるために新しいデータを追加することを目指している。また、漁獲物の積み替えやAISをオフにするような疑わしい行動を特定するための新しい機械学習アルゴリズムの開発も視野に入れている。
政府や他の機関などは、違法操業の取り締まりにこのデータを役立てることができるだろう。
「疑わしい船舶を特定した分析結果を出すことができるようになるでしょう。各国は、港でそのデータを利用することができます。私たちはそれらの船舶が何か違法なことを行っているとは言いません。しかし、どの船舶をより精査すべきかを決めるのにこの分析結果が使えるでしょう」
グローバル・フィッシング・ウォッチは、持続可能な漁業を支えるために用いることもできるだろう。たとえば、持続可能な漁業を認定する企業は、漁船の航行中は常にAISや他の追跡システムで漁船の行動を可視化することを求めるかもしれない。
学術的な推計によると、世界全体での違法操業による漁獲高は毎年240億ドル(約2兆4000億円)にのぼる。
[原文:Satellite watchers busted an illegal fishing vessel, and they’re coming for others around the world]
(翻訳:須藤和俊)