Amazon社長に「ハードウェア・スタートアップにやさしいストアって何?」を直接聞いてみた

ギズモード・ジャパンより転載(2017年2月3日公開の記事)

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ドヤ顔したいなら、今すぐ「Launchpad」。

最近、ついつい猫の砂ばかり買ってしまいます。自分で運ぶのがしんどいんです。ヤマトの方には本当、申し訳ないと思ってます。でも、僕の猫も喜んでいます。そんな僕と、僕の猫のライフラインであるAmazonに、新しいストアができました。

日本のハードウェアスタートアップの製品を取り扱う専門ストア「Amazon Launchpad」です。これは、ものづくりを手がけるスタートアップの課題になってる「販売」「流通」「マーケティング」の機能をまとめて提供してくれる画期的なサービスです。シンプルに説明すると、すごいものを作ったら「Amazonで売ればいいじゃん」ということです。まさにイノベーションですね。

プレスリリースから引用します。

スタートアップによる革新的な製品を国内外の数多くのAmazonのお客さまにご紹介するとともに、スタートアップにマーケティングおよびセールスサポート、配送サービスを提供します。

(中略)

ウェアラブルデバイス、スマートホーム、知育・学習玩具など250を超える革新的な製品を取り扱っています。すでにMAMORIO、BONX、VIE STYLE、KAMARQなど15社以上の日本のスタートアップが参加しています。

「イノベーションでより良い世界を!」とプレゼンして、TechCrunchにも載ったスタートアップの社長さん。でも、「社長、売る場所がありません!」なんてマーケティング担当に言われ続けた本末転倒な状況から、やっと開放されそうです。さらには、「Amazonで製品売り始めたんだよー」と人に自慢できるので、テンションも上がりそうです。

ガジェットでドヤ顔ができそう

でもLaunchpadの本当の魅力に取り憑かれるのは、「希少価値の高いガジェットを人より先に買って、ドヤ顔したい」僕たちのようなガジェット好きな編集者(=ギズモード・ジャパンの編集者)なのかもしれません。

こちらの動画はCerevoのプロジェクター搭載ロボット「Tipron」。こんなスゴイの使っていたら、注目浴びること間違いありません。保証します。

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アウトドアにオススメなBluetoothイヤホン「BONX Grip」。切実すぎる紹介動画でした。

BONX Grip切実すぎる紹介動画

取材や打ち合わせに行くと、たまに「最近、面白いガジェットありました?」って聞かれることがあるんです。そんな時、ノートを取ってるフリをしてMacBookでLaunchPadを見ながら、「実は、最近こういうのを見つけたんです。スタートアップなんですけど……」と自慢げに言って場を和ませてくれるのに役立ちそうです。

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耳が痛くなりにくいヘッドフォン「VIE SHAIR」

VIE SHAIR

クラウドファンディングでの提供や先行販売を逃すと、ハードウェアスタートアップの製品は極端に手に入りにくくなります。ドヤ顔したいガジェット好きの永遠の大問題を解決してくれそうなところが、Launchpadのイノベーションだと思いませんか?

というわけで、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長にAmazon Launchpadのスゴさを聞いてみました。

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(左から)アマゾンジャパン ディレクター セラーサービス事業本部 事業本部長 星健一、アマゾンジャパン ジャスパー・チャン社長、アマゾンウェブサービスジャパン代表取締役社長 長崎忠雄

スタートアップのイノベーションは衰えを知りません

―― 早速ですが、Amazon Launchpadを日本で始められた理由は一体何でしょうか?

チャン社長:わたしたちAmazonでは、スタートアップがどの国の経済においても重要な存在だと考えています。勢いのあるスタートアップは、消費者に有益な価値をもたらしてくれるでしょう。この考えにもとづいて、わたしたちはAmazon Launchpadプログラムを世界8カ国で展開してきました。そして、その価値を日本に持ち込むことは非常に大切だと考えました。Launchpadを通じて、日本のお客さまは、あちこちと移動することなく1カ所で日本や世界のスタートアップの素晴らしい製品を見つけることができるのです。

―― そもそも、なぜAmazonはLaunchpadを始めようと思ったのでしょうか?

チャン社長:2つ、大きな目標があります。1つ目は、より多くのスタートアップの成功を手助けしたいということ。2つ目は、多くのお客さまに素晴らしい製品を手に入れてもらいたいということ。この2点がLaunchpadを始めた背景です。

―― 何社のスタートアップを取り扱いたいですか?

チャン社長:日本のベンチャーキャピタル(VC)やアクセラレーターの皆さまと協力しながら、素晴らしいスタートアップを探しています。具体的な数値目標はありません。Launchpadで成功するスタートアップが今後増えていけば、参加するスタートアップの数も増えて勢いをさらに後押ししてくれると考えています。

―― 参加するスタートアップの数が増えるに伴い、取り扱うハードウェア製品の革新性が減ると思いませんか?

チャン社長:Launchpadを2015年から米国で始めて、これまで8カ国で展開してきましたが、スタートアップのイノベーションは衰えを知りません。Launchpadは、現在4000製品以上を取り扱うまでに成長してきました。溢れんばかりのアイデアが世の中に存在し、素晴らしいスタートアップがそれらのアイデアを製品化しようとしていることが、イノベーションを物語っているとわたしは感じています。Amazonは、スタートアップの製品販売とブランド構築を、わたしたちが持つツールを通して支援したいと考えています。そうすることで、より多くのイノベーションが生まれるからです。

―― VCやアクセラレーターがAmazonと組むメリットは何でしょう?

チャン社長:AmazonとVCやアクセラレーターの共通のゴールは、スタートアップの成功を実現させることです。その中でAmazonができることの1つは製品販売網を提供することにあります。Amazonのストアを利用することで、販売の世界展開が可能になり、さらにブランドの構築も迅速に行なうことができます。Launchpadでは、スタートアップ向けにいくつものツールを用意しています。ですので、VCやアクセラレーターとわたしたちは同じゴールを目指していると言えます。

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―― スタートアップ支援に関する競合サービスの存在は意識されていますか?

チャン社長:わたしたちの事業目的は、競合と戦うことではありません。すでにこのLaunchpadは、これまで世界で実績を残してきました。「フルフィルメント by Amazon」(FBA)サービス、マーケティング・ツール、海外販売の支援など、スタートアップ向けにこれらのAmazonのツールを提供し支援していくことが、Launchpadプログラムでは重要と考えています

―― モバイルバッテリーや、スマホアクセサリーなど、気軽に手に入る製品と違って、スタートアップが開発するIoT(Internet of Things)やウェアラブル製品は、使用感や魅力などを所感で伝えにくく、購入に躊躇する人が出てくるように感じられますが、どうお考えでしょうか?

チャン社長:まず、Launchpadでは製品を伝えるため、Amazonサイト内でお客さまがすでに使っているいくつかの機能を利用しています。その1つはカスタマーレビューです。レビューは購入において重要な要素です。その他には、Q&Aセクションがあり、お客さまの質問に直接答えることができます。つまり、お客さまが別のお客さまの購入をサポートしているのです。

そしてLaunchpad独自の機能として、動画による製品紹介があります。これには、スタートアップが制作した動画を用います。スタートアップの開発者が、製品の使い方や、ライフスタイルの提案を行なうことができるので、動画による製品紹介はとても重要になると感じています。さらにLaunchpad内の製品ページでは、スタートアップの詳細な「ブランドストーリー」を紹介していきます。これによって、スタートアップはより多くの情報を知ってもらい、ブランドの構築が可能となります。

これらの機能をLaunchpad内で展開していくことで、お客さまはこれまでAmazonで使ってきたツールと同じ感覚で、スタートアップの製品を購入することができると考えています。

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―― Launchpadでは、とりわけ「ブランドストーリー」を重要視されているようですね。

チャン社長:スタートアップにとっての課題の1つが、いかにブランドの良さを多くの人に知ってもらうか、でした。Launchpadは、お客さまの理解を深めるためのブランド作りを容易に行なうツールを用意しています。ですが、Amazonでは、ブランドはスタートアップだけが必要としているものではないと感じています。例えば、ファッションにおいて、それぞれのブランドのストーリーを伝えていくことは非常に重要です。そして、お客さまもブランドストーリーを知りたいのです。ですので、Amazonではこれらのストーリーを伝えるためのツールを提供するのです。

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「忘れ物をなくす」世界最小のIoT「MAMORIO」(screenshot via Amazon)

―― 米国のAmazonのリアル書店のように、ハードウェアスタートアップ商品を販売するリアルな店舗は考えていますか?

チャン社長:LaunchpadはAmazonマーケットプレイスのシステムを使ってスタートしました。これは開始前からの構想です。現在は小売店を作るプランはありません。

―― ところで、Amazon Alexaは、1月のCESでも話題を集めました。またAmazon Echoも米国では昨年のヒット商品になりました。今後AIやIoTといった先進テクノロジーの開発には、どう取り組んでいく予定ですか?

チャン社長:そうですね。わたしたちは、IoTやAIのような最先端テクノロジーとイノベーションの転換期に立っていると考えています。特にAIに関しては、もうすぐ「ゴールデンエイジ」が来るとわたしたちは社内で言っていますよ。しかし、そこにたどり着くまでには、まだ長い道のりがあります。そして多くの壁を乗り越えなければなりません。

Alexaの米国での進化には、わたしたちも非常に満足しています。Alexaを中心にあらゆる可能性が広がっていくと感じています。

―― 日本でも「Amazon Dash Button」が発売されましたね。

チャン社長:IoTの観点からは、Dash Buttonを開発して発売することと並行して、「Amazon Dash Replenishment Service(DRS)」の自動注文サービスを公開して、Amazonから自動で購入できるIoT製品の開発を支援しています。Alexaも同じです。Alexaのスキルを開発するディベロッパーがいる一方で、Alexaのスキルを連携したハードウェア製品を作る企業もあります。これがわたしたちAmazonのIoTを拡大させる戦略です。自社で開発した技術を他社に提供し、彼らが製品を開発できるようにしていきたいと考えています。

―― Amazonは1994年創業22年目に入り、Amazon Japanは今年で17年目を迎えました。これだけの年月を運営してきましたが、今でもAmazonは「イノベーティブ」な会社なんですか?

チャン社長:はははは。Amazonはイノベーションの塊ですよ。それは間違いありません。Amazon社内では創業当時から大事にしている基本ルールが4つあるんです。それは「お客さま中心」「イノベーション」「優れた運営」「長期的な視点」です。この4つのルールを「基本原則」としてわたしたちは、お客さま体験を設計したり、投資を行ったりします。イノベーションは「基本原則」を構成する要素の1つにすぎません。イノベーションだけではなく、4つのルールが1つになることで初めて、Amazonという企業文化を実現できるのです。

―― 貴重なお時間をありがとうございました!

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