フロリダ州オーランドの無差別銃撃事件現場。
REUTERS/Jim Young
Terrorist Screening Database(テロリスト・スクリーニング・データベース)は、米政府機関がテロリストの動向を追い、米国に対し、起こり得るテロ行為を未然に防ぐために2003年に作られた。
目的の正しさとは反比例して、このシステムは分かりづらく、不備があることが立証されてしまった。
このリストではテロ攻撃を未然に防げなかった。オーランドのナイトクラブで、無差別銃攻撃を行ったオマール・マティーン(Omar Mateen)は、2013年にこのリストに載っていたにもかかわらず、わずか10か月後にリストから外されている。また、2009年に失敗した「下着爆破犯」のようにリストに載っていながら、テロを行う可能性のある人物の動向を追いきれなかった、という例もある。
かと思えば、まるっきり無実の容疑者が、一切の警告なしにこのリストに掲載されることもある。たとえば、空港で破壊行為を画策した明らかな証拠があればリストに載せられるのは当然だが、リストに載っている他の容疑者の単なる知り合いだった、という事実もリストに載る理由になり得る。
このリストから名前を外してもらうためのプロセスは、掲載されるに至った経緯と同じくらいに不透明だ。通常、ブラックリストに載せられている事実が暴露されることはないので、多くの“容疑者”はそもそも、自分が捜査対象であることを知らない。もし、そのことを知ったとして、このリストから名前を外してもらおうと法的処置を講じることは極めて難しい。
捜査が「この容疑者に疑う証拠なし」と結論づけた際には、できるだけタイミングよく名前を外していきたいとFBIも思ってはいるそうだが、そう簡単にはいかない。
「政府はこのブラックリストに載せる人物たちを実際によく知られたテロリストたちに限定しなかった。証拠もなく、不備にまみれた“土壌”の上にデータベースを作り上げてしまったわけだ。それゆえ、このブラックリストに載っている人物が将来、テロ行為をするかどうか予想することはできない」。アメリカ自由人権協会(ACLU)の国家安全プロジェクトを統括するハイナ・シャムジー(Hina Shamsi)氏はThe Interceptにそう語った。「政府は秘密裏に人々をテロ容疑者としてブラックリストに載せた上で、彼らが犯してもいない行為について、実現不可能なやり方で自分たちの無実を証明しろと言っている」
個人がFBIのブラックリストに載ってしまうかもしれない原因としては以下のようなものが想定される。
Samantha Lee/Business Insider
ブラックリストに載り得る8つの理由:
- 「テロリストと知り合い」
- 「爆破やハイジャックなどのテロ行為に参加している」
- 「テロ行為としての暗殺や人質などなどを計画している」
- 「金融機関のコンピュータなど他社の所有物を破壊した」
- 「証拠に基づいた妥当な疑惑がある」
- 「空港で暴力行為を行った」
- 「脅迫を通じて米国の政策に影響をおよぼしたか、国の共有財産に『危険』をおよぼす行為に関わった」
- 「すでに知られているテロリストの家族であるか、仲間である、あるいは、容疑とまでいかないもののテロ行為と関連が認められる可能性がある」
万が一、ブラックリストに載ってしまった時に起こることは以下である。
Samantha Lee/Business Insider
- 「運輸保安局職員によって飛行機の搭乗を拒否されるかもしれない」
- 「米国査証がおりない可能性がある」
- 「危険物を扱う免許がおりない可能性がある」
- 「銃は買える」
- 「個人情報がCIA、FBI、国防省、州か地方警察、出入国管理事務局および移民局、国務省、国際開発庁などに共有される」
飛行機の搭乗を拒否されるかもしれない。米国査証の許可は下りない。危険物の免許を取ることも許されない。しかし、なぜか銃は買ってもいいのだ。
[原題:Here's how you can end up on the FBI's watch list — and what it means]
(翻訳:日山加奈子)