メル・ギブソン、ハリウッドに大復活!

メル・ギブソン

メル・ギブソン

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ハリウッドに、文字どおりの「映画の刑務所」が存在するわけではないが、実際にはある。俳優メル・ギブソンに聞いてみるといい。

10年前、大スターであり、アカデミー賞受賞監督でもあるメル・ギブソンは、カリフォルニアの高速道路において飲酒運転容疑で逮捕された。こうした事件は彼にとって最初でも最後でもなかったが、パトカーに押し込められている時に口にした悪名高い、憎悪に満ちた怒号が、メディアにおける彼の自滅の原因となった。 「ユダヤ人め。世界中の戦争はユダヤ人のせいだ」("Fucking Jews...Jews are responsible for all the wars in the world")

漏洩した録音の中で、その晩、酔っ払ったメル・ギブソンはクダを巻いていた。彼は世間からこのコメントを非難された。後に謝罪会見を開き、ユダヤ人の指導者たちに許しを求めた。

すべてが許されたわけではなかったが、事態はわりとよい方向に向かっていた。

ところが2010年、大手タレント・エージェンシーのウィリアム・モリス・エンデヴァー・エンターテイメント(WME)がメル・ギブソンとの契約を解除する。元恋人に対する人種差別的な怒号と殺人の脅迫が録音されたテープが世に出たためだ。

多くのハリウッド関係者にとっては我慢の限界だった。彼らはメル・ギブソンに背を向けた。2006年以降、彼は『復讐捜査線』1作品にしか出演していない。

「彼は業界のブラックリストに載ったんだよ」と、『リーサル・ウェポン』の脚本家で、監督に転身したシェーン・ブラックは5月にBusiness Insiderに語った。

「みんな彼と働きたくなかったんだと思うよ」

メル・ギブソン

2011年8月31日、元恋人との親権争いのために裁判所での審問に出席。

REUTERS / Kevork Djansezian

いくつかの例外はあった。親しい友人であるジョディ・フォスターは、2011年の自身の監督作品『それでも、愛してる』にメル・ギブソンを起用したし、1990年代に薬物問題を抱え、メル・ギブソンに助けられたロバート・ダウニー Jrは『アイアンマン3』の監督にギブソンを起用するようマーベル・スタジオの説得を試みたりした。

しかし、それ以外、メル・ギブソンはハリウッドに見捨てられた人となってしまっていた。その証拠に2006年の『アポカリプト』以降、監督業も干上がってしまっていた。

我々は(我々がそれを認めるかどうかはともかく)スターが鼻柱を折られるのを見るのは楽しみだが、彼らが復活を遂げると、さらに興奮を覚える。そしてメル・ギブソンのキャリアにおいては、今がまさにその時なのだ。

メル・ギブソン

2016年カンヌ映画祭でのメル・ギブソン

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2016年11月4日金曜日、メル・ギブソンが監督した映画『ハクソー・リッジ』が劇場公開された。2006年以来初めてのメル・ギブソン監督作品であり、ここ10年で彼が受けた中で最高の報道がなされている。

メル・ギブソンはハリウッド・フィルム・アワードの監督賞を受賞する予定で、ビバリーヒルズで行われた試写会ではスタンディングオベーションを受けた(映画情報サイトRotten Tomatoesで、89%という高評価を得ている)。 エンターテインメント情報誌「Variety」のポッドキャスト番組「プレイバック」でメル・ギブソンは最近、2006年の逮捕について赤裸々に語った。かなり言い訳がましかったが。

「10年が過ぎた。気分はいい。しらふだし、自分にとっては過去の小さなことなんだ。でも、みんなはまだ話題にする。それにはちょっとイラつくけど。だって10年経っても、なぜ問題になるのかまるっきり理解できないんだ。もちろん僕が、彼らが言うような憎悪に満ちた人間なのだとしたら、証拠がどこかにあるはずだ。そんな証拠はどこにもないんだよ」

「自分を支持してくれる人に対して、僕は一度として差別的なことをしていない。パトカーの後部座席で起きたたった1つのエピソード、テキーラをダブルショットで8杯飲んだ後の会話が、自分の仕事、一生分の仕事、自分が信じることや自分の人生を決める何もかも全てを左右するとしたら、それはあまりにも不公平じゃないか」

明らかにメル・ギブソンは傷を抱えている。彼自身が認識していると願うばかりだが、ダブルショットのテキーラ8杯を飲んでから車を運転して、いい方向に向かうわけがない。酔っていたからと言っても、発言や思想に対する言い訳にはならない。

メル・ギブソンはもう二度と大作の主役にはなれないのかもしれない。そしておそらく最近の作品『ブラッド・ファーザー』のようなハチャメチャな映画が、自分に一番合うことに彼自身思いいたったのだろう。

彼のこれからの10年を形作るのは監督業の方だろう。もしそうなら、ライオンズゲートから配給された『ハクソー・リッジ』はその基盤となるはずだ。

アンドリュー・ガーフィールド

『ハクソー・リッジ』の主演俳優アンドリュー・ガーフィールド

Mike Rogers/Lionsgate

『ハクソー・リッジ』の主演俳優アンドリュー・ガーフィールドは、オスカー候補と噂されている。彼は沖縄戦で銃を手にすることを拒否しながら従軍した陸軍医デズモンド・T・ドスを演じている。ドスは良心的参戦拒否者でありながら、アメリカ史上初めて名誉勲章を受けた人物だ。

そして、世間の反応から察するに、メル・ギブソンの監督業(1996年に『ブレイブ・ハート』でアカデミー監督賞と作品賞を受賞している)は、これまででもっとも感動的かつ過酷だったようだ。

ライオンズゲートでさえ、メル・ギブソンを売り出すことに問題がなくなってきているようにみえる。最初の『ハクソー・リッジ』のポスターにメル・ギブソンの名前はなく、代わりに「『ブレイブハート』や『パッション』の有名映画監督が贈る」と書かれていた。だが今週のテレビCMでは『ハクソー・リッジ』のことを「メル・ギブソン監督作品」と呼んでいる。

これらはすべて、メル・ギブソンが世界的なスポットライトに戻ってくるという最高の瞬間につながっている。彼は今、大ヒット映画『パッション』の続編に取り掛かっている。タイトルは『復活』で、メル・ギブソンによると、この映画は「とてつもない仕事」になるだろうとのことだ(脚本はいま書き進められている最中)。

『パッション』は多くの議論を呼んだ作品だが、誰1人として、あの映画の熱心なファン層と興行収入を否定できないだろう。メル・ギブソンのゆっくりとしたカムバックへの足取りを思う時、続編である『復活』は、妙に合点のいく話のように思える。

(敬称略)

[原文:How Mel Gibson achieved the ultimate Hollywood comeback in 2016

(翻訳: 日山加奈子 )

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