自動車生産の本部長Peter Hochholdingers氏
Manufacturing Leadership Journal
自動車業界には歴史を変える2つの大規模なイノベーションがあった。
1つ目はヘンリー・フォードが1世紀以上前に大量生産を導入した時に起こった。
2つ目は第2次世界大戦後。現在、広く利用されている生産方式をトヨタが開発し、数十年にわたる「リーン」生産の始まりを導いた。これはフォードの垂直的に統合された方法とは正反対の方法である。
テスラは3つ目の大規模なイノベーションになり得るだろうか。
今年のはじめ、同社はPeter Hochholdingers氏をアウディから引き抜き、自動車生産の部門長にした。
また、最近の展開として、テスラは工業オートメーションに特化するドイツのGrohmann Engineeringを買収している。同氏がこれに寄与したかは定かではないが、自動車生産において経験豊富な幹部であることは間違いない。
いずれにせよ、Hochholdinger氏の考え方は、テスラのCEOイーロン・マスク氏の自動車製造プロセスを作り直すための革命的な概念にぴたりとはまる。マスク氏は 「マスタープラン:Part Deux」を数カ月前に発表して以来、この改革を何度も口にしている。
マスク氏の野望を実現させるための試験台となり得るのが「モデル3」だ。2017年末の市場への投入が予定されるが、翌年までに同社の年間生産50万台の多くを占める、マス市場対応型のモデルになると期待されている。
シンプル=イノベーション
Hochholdinger氏は、「マニュファクチャリング・リーダーシップ・ジャーナル」のインタビューで「モデル3」の強みをいくつか挙げている。
「製品は可能な限りシンプルに、可能な限り作りやすくする必要がある」とした上で、同氏は「モデル3には排気システムもなければ、変速装置やエンジンもない。もはや車輪がついたコンピューターのようなものだ」と語った。
「この車はあらゆる既存の車とは全く異なる。実に興奮する」とHochholdinger氏。
自動化されたTesla工場のロボット
Benjamin Zhang/Business Insider
インタビューでHochholdinger氏は、「機械を作る機械」というフレーズを使った。
これはマスク氏自身が今まで口にしてきた言葉である。この概念の主意は、製造とサプライチェーンはデザインやエンジニアリングという過程と統合されなければならない。モデル3のようなシンプルさの上では、オートメーションがより大切な役割を果たすことになる、ということだ。
ロボットは自動車製造において今よりもずっと大きな要素になり得ると、Hochholdinger氏は考えている。多くのパーツは現在、機械ではなく人間によって組み立てられるように設計されているからだ。
テスラがこれをやり遂げたら、何百、何千台もの電気自動車が道路を走ることより、はるかに大きな功績になるだろう。自動化が促された工場は、単純化されたガソリン車を作るために利用されるようになるかもしれない。自動車の生産は、テスラが思い描いているほど完全に自動化されないかもしれないが、製造業において画期的なイノベーションはコピーされることになるだろう。トヨタ方式が過去にそうされてきたように。
もちろん、テスラは問題を複雑にし過ぎているとも言える。テスラが2018年までに50万台を工場から出荷したいと考えるなら、単純に既存の方法で生産したほうが効果的かもしれない。フォードやトヨタ、アウディであれば、今すぐにでも生産量を50万台増やすことができるだろう。
しかし、テスラにとってそれでは不十分だ。彼らは自動車業界を完全に作り変えようとしているのだから。
[原文:Here's how the Tesla Model 3 could change the auto industry forever]
(翻訳:一柳優心)