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2017年、激動する世界市場でマーケティングの“正解”はあるのか —— コンサルティング企業がマーケティング支援を行う理由(前編)

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マーケティングのデジタル化支援を推進するアビームコンサルティングの本間充氏(左)と竹井昭人氏(右)

マーケティング・テクノロジーの進化に伴い、企業においては、デジタル・マーケティングへの対応が経営課題となっている。しかし、デジタル化の目的を明確にしないまま、単にウェブ広告やモバイル対応だけを「デジタル化」と捉えて注力している企業が多いのが現状だ。

アビームコンサルティングは従来、戦略、BPR、IT、組織・人事、アウトソーシングなどの領域でコンサルティングを提供してきたが、現在ではさらにR&D、商品開発、マーケティングのデジタル化支援を推進している。

特に、同社の「デジタルトランスフォーメーション ビジネスユニット デジタルマーケティングセクター」は、日本を代表する消費財メーカーのマーケティング部門にて、1990年代半ばのWebサーバの立ち上げに始まり、文字通り「デジタル化」を推進してきたディレクターの本間充氏と、流通分野のコンサルティングに関わり、全社レベルの課題把握・戦略策定から、現場の最前線を見据えた施策の実行、そのための教育・組織づくりなど、各レイヤーでの広い見識を備えている同シニアマネージャーの竹井昭人氏を中心に、マーケティングのデジタル化に取り組む企業のパートナーとなっている。

ビッグデータ、マーケティング・オートメーションなど、流行りのキーワードに踊らされがちな側面もある中、マーケティングのデジタル化に正解はあるのか。2020年に向けて大きく変貌しつつある国内市場や、ブレグジット、米大統領選など激動する国際情勢を踏まえて、両氏に取材を行った。

そもそも、なぜマーケティングに“デジタル”が必要なのか?

―― ここ10年で、企業におけるマーケティングの位置づけが飛躍的に高まっていると感じます。その背景にデジタルマーケティングの進化があると思いますが、そもそもなぜデジタルマーケティングがここまで注目されるようになったのでしょうか。

本間:まず「デジタルマーケティング」という言葉ですが、わたしたちは「デジタルマーケティング」ではなく、「マーケティングのデジタル化」という言葉を使っています。同じような言葉ですが、一般的に認識されているデジタルマーケティングとは違うものと考えています。

質問の答えにいく前に、まず、「なぜ、マーケティングのデジタル化が必要なのか」を整理してみましょう。なぜだと思いますか?

―― 日本市場が縮小する中、売上を伸ばすために最先端のマーケティング戦略が必要になっているからでしょうか。

本間:マーケティングのデジタル化の理由について、「市場の縮小」をあげる方は少なくありません。もちろん間違いではないのですが、わたしはややネガティブな見方だと思っています。ネガティブな状況に対応するのはあまり生産的とはいえません。むしろ、わたしたちは「日本市場の成熟度が上がり、ターゲットがより多様になったから」だと考えているのです。

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「むしろ、わたしたちは『日本市場の成熟度が上がり、ターゲットがより多様になったから』だと考えているのです」

かつての国民総中流時代には、ターゲットの「ど真ん中」を狙うマスマーケティングが主流でした。ところがいまは、もはやそんなボリュームゾーンは存在しません。同じ30代女性でも、「可処分所得の多い独身女性」か「子供が2人いる共働きの女性」を狙うかでマーケティング戦略はまったく異なる。これまで「あうん」の呼吸で、関係者が何となく思い描いてきた「平均的な顧客」という層はどこにもいないのです。

だからこそ、どのような顧客が市場にいるのか、顧客に何が提供できるのかを考えることが必須です。そしてそのためには、まずはデータをしっかり見る必要があります。

竹井:セグメントが細分化されるにつれ、当然ながら顧客ボリュームは小さくなり、セグメントの数が増えていきます。多様なセグメントに対して効率的にマーケティング施策を展開するには、やはりITの支援が不可欠です。それが、「マーケティングのデジタル化」です。ネット広告やウェブ施策に特化した、いわゆる「デジタル」マーケティングとは意味合いが違う話なのです。

―― つまり、「マーケティングのデジタル化」とは、マーケティングを強化、進化させる話であり、デジタルマーケティングは、ウェブ広告やSNSなどデジタル領域を対象にした個別手法の話、マーケティングの中の one of themということですね。

竹井:現状は「マーケティングのデジタル化」と「デジタルマーケティング」は、ほとんど区別せずに使われているケースも多く、さらにデジタル=インターネットと考えている人が多いのも事実です。つまり「マーケティングのデジタル化」であれ、「デジタルマーケティング」であれ、インターネット上の施策と矮小化して捉えられるケースも多い。

また、デジタル化に関しても、アドテクノロジーに注目する人、自動化ツールに注目する人、ビッグデータといったデータ解析に注目する人など、興味や立場によって視点も異なります。多様化し、進化しているマーケティングを、いろいろな角度から見ているだけなのですが、そこで現状把握や問題意識の齟齬が生まれ、議論が混乱するケースもあります。

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「単位」に意識すれば、市場の実態がより把握できる

―― 環境がダイナミックに変化しつつあるがゆえの混乱とも言えますね。しかし、「データをしっかり見る」といっても、優秀なデータサイエンティストがいない限り、なかなか難しいことではありませんか。

本間:1つ秘訣をあげると、コンサルティングの現場では「数字だけではなく、単位に注目してほしい」とよく話しています。「シェア5%」とひとくくりに捉えるのではなく、より具体的な顧客数や売上個数を捉えるだけで実態が詳細に見えてきます。

例えば、シャンプーやリンスなどの日用品分野でシェア5%というと、非常に大きなボリュームを想像されるかもしれませんが、より具体的な顧客数で捉え直すと、30〜50万のレベルに落ち着きます。

となれば、その数十万人に向けてメッセージを発信するときに、テレビCMを展開するべきか、それともターゲットの接触メディアを分析して、より絞ったターゲティングを行うべきか、どちらがより有効なのかという選択肢が生まれます。そしてまた、実際にどれくらい効果的だったのかをデータを使って判断する必要が出てくるわけです。マーケティングのPDCAがようやく可能になったとも言えます。

―― そうした活動も「マーケティングのデジタル化」というわけですね。

竹井:顧客の行動はテレビ、PC、スマホ、さらにはDMやチラシまでメディアの垣根を超えています。メディア別、コミュニケーション別のPDCAではなく、マーケティング全体のPDCAが必要です。

日本市場は今後、さらに多様化していくでしょう。マーケティングのデジタル化という流れの中、まずはデータをきちんと見て、PDCAを回せる人材が何より必要になります。

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「マーケティングのデジタル化という流れの中、まずはデータをきちんと見て、PDCAを回せる人材が何より必要になります」

日本企業のマーケティング力に潜むポテンシャルとは

―― 日本企業は欧米企業に比べてマーケティング力が弱いなどといわれます。そのような状況で、データを見て、マーケティング全体のPDCAを回せる人材はどこにいるのでしょうか。

本間:日本市場が成熟し、多様性を帯びてきたのはここ10〜20年ほどの話で、その意味ではようやくマーケティング先進国である米国と同じ地平に立ったといえます。ただ、だからといって日本が遅れているわけでは決してありません。前職の頃から海外の事例をチェックしていますが、グローバルで見ても、成熟市場でしっかりとマーケティングの成果を出し続けている企業はほとんどありません。

またデータに関して言えば、わたしは大学院で数学を教えていて、クラスの半分は海外からの留学生ですが、留学生と比べると日本人は複数のグラフをパッと見て、大局を判断したり、問題点を把握する能力に長けています。

一方、留学生たちは個別のデータ分析には優れていますが、細かい数字を1つひとつチェックしないと先に進めない人が多い。日本人の数字に対するセンスは、実は非常に高いのです。

竹井:コンサルティングの現場でも、複数のグラフや表を見て、すぐ問題点を指摘するのは日本人であるケースが多いです。

本間:物事の捉え方が違うのでしょうね。たとえばアメリカ人は、幕の内弁当をうまく説明できません。いろいろな具材が入っているのを見て、「これは何料理だ?」となってしまう。彼らにとって料理はもっと単純なものなのでしょうね。

そんなところにも複数のパラメータをパッと見て大局的に捉えるか、1つひとつのディテールを見ていくかの違いがあるように思います。日本人は優れた数字センスを持っていて、世界に通用する能力が十分ある。本音をいうと、もっともっと日本人マーケターに活躍してもらいたいし、グローバル市場に飛躍して欲しい。

竹井:わたしも、日本のマーケターはもっと活躍できると思います。もちろん、組織の壁や職種におけるカルチャーの違いなどがあって、現状の環境ではなかなかパフォーマンスを発揮できないこともあります。

コンサルタントはそういう現場に入って課題を整理することができますし、外部から横断的に様々な部門・部署にコンタクトして話を聞くことができます。我々が触媒のようになって、組織間をつなぐこともできます。より前へ進んでいくために、コンサルティングファームがお手伝いできることはたくさんあります。

本間:日本企業における組織的な課題やカルチャーの問題は確かに存在します。わたしは事業会社のマーケターとしての経験もあるので、そのあたりの課題や解決策についてはよく理解しています。顧客の方々はすでにいろいろなベンダーさんとコネクションをお持ちだとは思いますが、我々は現状を一歩打破するためのお手伝いができると考えています。

不確実な世界情勢からひも解く2017年のマーケティング戦略

—— 国内市場の多様性が高まる一方、世界に目を転じると、自国第一主義や孤立主義が高まり、2017年は市場環境に大きな変動が生まれそうです。不確定要素が多くなる中、マーケティングの戦略や方法論も変わってくるのでしょうか。

竹井:先ほどの話に出たように、従来のマーケティングでは、より多くの人の心に届くメッセージを発信することが王道でした。ただ、いまの社会情勢においては、そうした手法が有効かと言えば、必ずしもそうではありません。

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「マーケティングにおいても“Marketing Correctness”的なものに陥っていないかどうか。そうした視点が今後、重要になってくるのではないかと考えています」

例えば、昨年の米国大統領選では、多くの人が考えていた既定路線に沿って米国の行くべき方向を示したヒラリー・クリントン氏より、挑発的なメッセージで物議をかもしたドナルド・トランプ氏が勝利しました。

政治の世界では、差別や偏見のない “Political Correctness”が求められてきましたが、それが行き過ぎて反動化現象が起きたと言えます。私見ですが、マーケティングにおいても“Marketing Correctness”的なものに陥っていないかどうか。そうした視点が今後、重要になってくるのではないかと考えています。

本間:これまでのマーケティングで無前提に語られてきた「平均値」という基準も見直さなければなりません。例えば、「世帯年収500万円で子どもが2人いる家庭」は、一見、会議の場では違和感のない顧客像ですが、そんな人たちが本当にいるのかどうか。自分の周囲を見回しても、子どもが2人いる家庭の実情は多種多様です。

大統領選で起きたことをマーケティング的に捉えてみると、次のようになると思います。「ヒラリー氏は、平均的に見て誰もが正しいと思うであろうメッセージを発信したが、その中庸性がゆえに多くの人はその主張を自分ごとと捉えられなかった。一方、トランプ氏は、白人労働者をターゲットし、その群衆をつかむメッセージングを行って勝利した」と。

言ってみればヒラリー氏は試合に勝って勝負に負けた。ビジネスでは勝負に負けるわけにはいきません。

―― なるほど。言い換えれば、多様化し、難しい環境になってきた今こそ、マーケティングの出番であり、マーケターがより前面に出てくる時代になったと言えますね。

後半では、現状のマーケティング部門が抱えている組織的な問題点、デジタル化を推進していくうえでの情報システム部門の役割などについてより詳細にお伺いします。


■本間 充:大手消費財メーカーを経て、2015年アビームコンサルティングに入社。多くのマーケティングおよびデジタルマーケティングの経験と、データ分析の実績多数。東京大学大学院数理科学研究科 客員教授。ビジネス・ブレークスルー大学 客員講師。

■竹井昭人:大手IT企業にて、欧州を拠点とした企業へのプロジェクトを数多く手がけ、2006年にアビームコンサルティングに入社。リテール&サービス業をはじめ、製造、銀行、スポーツなど幅広い業種・業態のクライアントに対してデジタル案件のコンサルティングを推進中。


アビームコンサルティング「マーケティングBPRソリューション

企業が効果的にデジタル化を進め競争優位性を保つには、変革の目的とそのメリットを組織横断的に浸透させ、計画に沿った形でマーケティングの「BPR(Business Process ReEngineering:業務変革)」と「デジタル化」の双方を進めることが必要。同社は、単なるデジタルツール導入にとどまらず、企業の経営ビジョンに基づいたマーケティング変革を業務・IT・組織の面から継続的に推進できるよう支援している。

Text:岩崎史絵、Photo:渡部幸和


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