億万長者で投資家のウォーレン・バフェット氏、2014年9月18日「デトロイト・ホームカミング」にて。
Bill Pugliano/Getty Images
ウォーレン・バフェットの会社バークシャー・ハサウェイが、9億ドル(約1023億円)相当のウォルマート株を売りに出し、代わりに何億ドルも航空会社の株に投資した。
今回の売買でバフェットの持つウォルマート株はほとんどなくなった。アメリカ最大の伝統的な小売業者が、Amazonをはじめとするネット上の競争相手に追いつこうと走っている最中の出来事だった。
Amazonの時価総額は現在3560億ドル(約41兆円)。それに対してウォルマートの時価総額は2980億ドル(約34兆円)だ。昨年バフェットは、「リアルな小売業者は大手のオンラインビジネスとの競争の中で苦戦している」と述べた。
ブルームバーグによれば、「これは大きな流れで、すでに数多くの人を“破滅”させたが、その“破滅”はこれからも続くだろう」と、バークシャーの2016年の株主総会で述べた。
バフェットはそれ以来、ウォルマート株を売却してきた。彼が最初にウォルマート株を買ったのは2005年だ。
彼はまたアマゾンに対しては、「我々を含む誰も、これにどう参加すればいいのか、あるいはどう太刀打ちするべきなのか、判断がつきかねている」と発言した。
2014年の終わりからウォルマートの株価は21%も下落した。一方、アマゾンの株価は119%も上昇している。
Google Finance
ウォルマートの元CEO マイク・デューク(Mike Duke)は言う。「Amazonと戦うためにeコマースにもっと投資すべきだった。それがCEOとしての一番の後悔」と2012年に語っている。
「もっと早く行動に移すべきだった。 我々は多くの分野で成功したが、正直、どうしてもっと早く動けなかったのかわからない。特にeコマースについてはそう思う。現在、我々もかなり進歩した。しかし、ビジネスは常に動いている。eコマースに関しては、もっと早くビジネスを拡大しておくべきだった」
それ以来、ウォルマートはeコマースに大金をつぎ込んでいるが、Amazonと比べるとわずかなシェアしか獲得できていない。
2015年、ウォルマートのオンライン上の売上げは137億ドル(約1兆5700億円)だが、アマゾンのそれは1070億ドル(約12兆3000億円)だ。
Walmart
バフェットの小売業に対する本能は、2005年にシアーズやKマートの凋落を予想する前からその正しさが証明されていた。
「小売業というのは『動き続ける的を狙う射撃』のようなものだ」とバフェットは言う。
「長い時間をかけてダメになった『小売り業者』を良い方向に変えるのはとても難しい。ダメになってから復活した『小売り業者』を1つでも思いつくか?」
シアーズはその後、何百という店舗を閉店し、今は破産へ向かっている。百貨店のメイシーズとJCペニーもアメリカ中で何百という店舗を閉鎖している。
ウォルマートが所有する店舗面積はまだ減ってはいないが、それでも多くのアナリストは「店舗が多すぎる」と指摘している。
アメリカでは国民1人当たり「23.5平方フィート(2.18平方メートル)」の売り場面積がある。カナダでは「16.4平方フィート(1.52平方メートル)」、オーストラリアに至っては「11.1平方フィート(1.03平方メートル)」だ。モーニングスターの10月のレポートによれば、カナダ、オーストラリアはそれでもアメリカに続く第2、第3の売り場面積を誇る国だ。
(敬称略)
source: Google Finance、Walmart
[原題:Warren Buffett just dropped Walmart and signaled the death of retail as we know it(WMT)]
(翻訳:日山加奈子)