欧州最大級のイノベーション・フェスが2019年に東京開催を検討 —— ベルリンが世界のテックベンチャーを引き寄せる

スタートアップ企業やベンチャーキャピタリストの活動がベルリンで活発化する動きが続いている。ブレグジットに揺れる英国を横目に、ドイツ政府がベンチャー企業に対する支援を強化する中、ベルリンはベンチャーキャピタルの年間投資額でロンドンを抜き、欧州の「スタートアップ・ハブ」としての名を確実なものにしつつある。

そのドイツ最大の都市で毎夏、世界のイノベーターやクリエーター、起業家、投資家が集まる大規模フェスが開かれている。「Tech Open Air(TOA)」 —— 2万人を超える参加者が広々とした屋外でバンド演奏や食事を楽しみながら、テクノロジーとアートに触れるイベントだ。200名以上のスピーカーがセッションを行い、200ものサテライト・イベントが同時にベルリン市街で開催される。

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Tech Open Air 2016

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TOAは2019年をめどに、ベンチャー企業への投資ブームに沸く日本での開催を検討している。TOAのファウンダー、ニコラス・ヴォイシュニック(Nikolas Woischnik)氏が、BUSINESS INSIDER JAPANとのインタビューで明らかにした。メイン会場は現在、ベルリンと姉妹都市である東京を中心に検討しており、並行して日本企業のTOAへの出展支援や投資家と欧州ベンチャーとのマッチングも開催していく方針だ。日本での展開には、株式会社インフォバーンが共同で行う。

ベルリンのベンチャー企業を取り囲むエコシステムは、日本の起業家や投資家たちをも引き寄せる。シリコンバレーやロンドンでは物価や不動産価格の上昇を背景に、ベルリンに拠点を移す起業家たちが増え続けている。多くの優秀なエンジニアが存在する東欧に近く、多国籍のベンチャー起業が集まりやすいベルリンの特徴は、ヨーロッパのスタートアップ市場に人と金の流れの変化をもたらしている。

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Tech Open Air 2016

TOA

屋内でのカンファレンスと屋外のサテライトイベントで展開するTOAには昨年、Facebookでプロダクト・デザインを統括するルーク・ウッズ(Luke Woods)氏やKickstarterの共同創業者、ヤンセイ・ストリクラー(Yancey Strickler)氏、Business Insiderを買収したAxel SpringerのCEO マティアス・ドフナー(Mathias Döpfner)氏らがスピーカーとして参加した。

「ベルリンのエコシステムは依然として拡大フェーズにある。ブレグジットがベルリンのエコシステムの成長を後押ししているのは確かだ。米国ベースのVCが新しいベルリン向けのファンドを創設する動きも見られるし、イギリスから若い人材がベルリンに流れ込む動きもある」と ヴォイシュニック氏。

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インタビューに答えるTOAファウンダーのニコラス・ヴォイシュニック氏

中西亮介

日本におけるTOAのパートナー企業であるインフォバーンの代表取締役 CVO 小林弘人氏は、日本のスタートアップ企業経営者や一部のVC幹部は、ベルリン市場に注目するようになっていると話す。「すでにTOAは、EUのみならず米のIT業界とも深い関係を築いている。日本で開催すれば、フィンテックやIoT、AI、ヘルスケア・テックなどの領域でもユニークな海外ベンチャー企業を招き、同時に国内ベンチャー企業を彼らのグローバル・ネットワークに紹介できるだろう 」と小林氏は語る。

写真の共有アプリや売買プラットフォームを世界展開する「EyeEm」は、ベルリンに拠点を置くベンチャー企業の1つだ。2011年に設立。同社の共同創業者兼クリエイティブ・ディレクターの定兼玄(Gen Sadakane)氏は、「サンフランシスコやシリコンバレーほどではないが、ベルリンのエコシステムが大きくなるのと同時に、土地やモノの価格は上昇してきている」と話す。

「5〜10年前くらいに、安く活動ができるベルリンにスタートアップが入ってきた。やがて、クラブやカフェができ、富裕層がその周りでマンションを買うようになった。地価や物価が上がるは必然」と定兼氏は語る。

定兼氏は、デュッセルドルフで生まれ育ち、数年前に拠点をベルリンに移した。「ロシア、インド、ドイツ、イギリス、アメリカ、イタリア、スウェーデン、ポーランド、セルビア。EyeEmで働くメンバーの国籍は様々です」と定兼氏。現在、ベルリンのオフィスには70名が、ニューヨーク・オフィスでは10名が働くという。「EyeEm」のアプリは、iOSやAndroidで日本語版をダウンロードできる。

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インタビューに答えるEyeEm共同創業者・定兼玄氏

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ユーザーインターフェイス(UI)のデザインカンパニー、グッドパッチ(Goodpatch)は2015年5月にベルリン・オフィスを開設している。サンフランシスコを海外オフィスの有力候補地と考えていたCEOの土屋尚史氏は、同地の地価と人件費の高騰を背景にベルリン展開を決めたと、Lifehackerとのインタビューで述べている。広報担当者によると、同社のベルリンオフィスでは現在、インターンを含め15人のメンバーが働いているという。

ベルリンにおけるベンチャーキャピタルの投資額は2015年時点で前年比倍の23億4400万ドル。Statistaによると、ロンドンの19億3700万ドルを超えて、都市別に見ると欧州では最高額をマークした。

一方、米国ベンチャーキャピタル協会などのレポートによると、シリコンバレーやサンフランシスコを含むカリフォルニア州におけるVC投資額は同年(2015年)、約340億ドルでベルリンの10倍以上だった。しかし、同エリアにおけるVC投資は昨年(2016年)、約250億ドルまで減少した。ベンチャーエンタープライズセンターの報告書によると、日本におけるVC投資額は2015年で約1300億円(前年比11%増)だった。

「東京でTOAが開かれる2019年に、どんなテクノロジーが注目の的になっているかを正確に予測するのは難しい。テクノロジーの変化のスピードは速い。言えるのは、ベルリンのエコシステムはこれからも拡大するだろうし、より多くの資本はベンチャー企業に注がれていくだろうということ」と、ヴォイシュニック氏は話した。

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