製作費100億円! Netflixの『The Crown』は見るべきか?

The Crown

「The Crown」では、エリザベス女王をクレア・フォイ、その夫であるフィリップをマット・スミスが演じている。

Robert Viglasky/Netflix

2016年11月2日金曜日(現地時間)に公開されたNetflixオリジナルドラマ『The Crown』は、1億ドル(約100億円)の高額な製作費で話題となった。

その後『The Get Down』(ヒップホップの誕生を描いたミュージカル仕立てのドラマ)に2000万ドル(約20億円)の差でその座を奪われたが、現実離れしたヒップホップミュージカルと違って、『The Crown』は王室の暮らしを忠実に再現している。

王室の暮らしを描いた豪華なドラマについて語っているのに、馬鹿げた言い方かもしれないが、彼らはバッキンガム宮殿に住み、高価な美術品や陶磁器に囲まれているが、しかし、それが注目を集めることはない。完璧な衣装が、視聴者の目を俳優たちに釘付けにしている。

クレア・フォイは、20代のエリザベス2世を演じている。女王は、公の場で今、我々に見せる姿から想像するよりも、快活で親しみやすい。彼女はまだプリンセスで、颯爽とした海軍士官のフィリップ(イギリスの人気TVシリーズ『ドクター・フー』の11代目ドクターとして知られるマット・スミスが演じる)と結婚、幼い子どもたちを愛し、家族全員でわが家を改装している。しかし、同時に王位という想像を絶する責務が自分の肩にのしかかって来ることを予感している。

第1話、第2話には、エリザベスはあまり登場しない。女王として描かれるのは、もっと後だ。ドラマの最初のシーンは、国王ジョージ5世が咳き込んで血を吐くシーンから始まる。また高齢のウィンストン・チャーチルが総理大臣の職に復帰するシーンも描かれる。この2つのシーンは、現代における政府の役割と王室の重要性に対する新しい考え方と視点を視聴者の頭の中にイメージさせる。

The Crown

既婚者男性と不倫しているマーガレット女王は、ヴァネッサ・カービーが演じる。

Alex Bailey/Netflix

エリザベスの複雑な家族問題も同時に描かれていく。

叔父のエドワード8世(アレックス・ジェニングス)のスキャンダルはひと昔前のことだが、叔父が王位を捨てて離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚したため、エリザベスの父親が王位を継ぐことになった。妹のマーガレット王女(ヴァネッサ・カービー)は、既婚者や宮殿管理の責任者と不倫している。

スキャンダルとは無縁なエリザベスは、それゆえに国民からもっとも愛される女王となっていく。

王室という公の立場としてのエリザベスと、プライベートのエリザベスの間の二律背反が、『The Crown』を騒々しいものにしていく。厳しい状況の中で、彼女はどのように王位の威厳を保っていくのか、そして、また、母として現代に生きる家族の姿をどのように保っていくのか。

フォイは若いエリザベス2世を見事に演じている。ジョン・リスゴーは、まさにウィンストン・チャーチルその人だ。背を丸めたスタイルや特徴のある話し方は完璧。そして、スミスは非常に繊細なフィリップを演じている。彼は妻のために、常に一歩後ろに引いて生きることになる。カービー演じるマーガレット女王には、実はあまり興味を持てない。『ダウントン・アビー』のメアリーを見ていたので、不倫の結末がどうなるかわかっているから。

この時代のドラマのファンは、当時の世界観やソーシャルメディアがない時代のメディアの姿、政治の駆け引きを楽しむ。イギリス好きの人たちにとっては、当時の話や王室のいざこざを明らかにしてくれる興味深いドラマになるだろう。だが、この手のドラマのファンでない人には、オススメできない。

[原文:Netflix's new royal drama 'The Crown' is worth every penny of its $100 million price tag

(翻訳: 堀口ゆりえ )

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