共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏
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わたしたちが今年の選挙から学んだ忘れがたい教訓は、アメリカを偉大で自由な国にしている仕組みを壊してしまうような恐ろしいファシストが共和党を支配した時、ほとんどの共和党員たちはその地位にかかわらず、彼を支持し、大統領になるべきだと主張したことだ。
その中には、トランプ氏がなぜ危険かを知らぬまま大統領に推した者さえいる。また、トランプ氏を操り、共和党の通常の政策を実行させることができるという甘い考えを持った者もいる。
もちろん、正しい判断をしてトランプ氏への支持を控えた少数派もいた ―― ジョン・ケーシック(John Kasich )オハイオ州知事、ネブラスカ州選出のベン・サス(Ben Sasse)上院議員、ヒューレット・パッカードCEOで巨額の献金者メグ・ホイットマン(Meg Whitman)氏などだ。ホイットマン氏はトランプ氏のことを「共和党存続への脅威」と呼んでいた。
しかし、わたしが注目したいのは、さらに別の立場を取った者たちだ。トランプ氏の危険性をはっきり認識しながらも、戦略、出世、臆病などの理由で彼の支援を決めた者たちだ。
臆病者とろくでなし
例えば、マルコ・ルビオ(Marco Rubio)上院議員はトランプ氏を「核兵器問題を任せてはいけない『気まぐれな男』」と称しながらも、大統領に推した。
テッド・クルーズ(Ted Cruz)上院議員はトランプ氏のことを「病的な嘘つき」「完全に非道徳的」と批判し、さらにトランプ氏がクルーズ氏の妻の秘密をばらすと脅迫したり、クルーズ氏の父親がジョン・F・ケネディ暗殺に関与したと発言したことを謝罪していないにもかかわらず、トランプ氏を大統領に推した。
とりわけ言及したいのが、ポール・ライアン(Paul Ryan)下院議長だ。ライアン下院議長の青い瞳が苦しそうにも見えるのは、彼が必死に助けを求めているから。彼は全米をまわり、哀れなほど必死にトランプ氏の存在を否定し、議会の幹部会で彼が『Better way』と呼ぶ協議事項に問題を逸らそうとした。だが結局は、自分自身の意思でトランプ氏が大統領になることを手助けしている。
だが、これらの人たちもベン・カーソン(Ben Carson)氏のような“愚か者”ではない。
フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員
Thomson Reuters
ルビオ氏の言葉を借りれば、彼らは自分たちがやっていることを認識している。彼らは自己利益追求のために、共和党を崩壊の危機にさらしたのだ。
トランプ氏がアメリカにもたらすリスクについてホイットマン氏が認識している内容は、彼らもまた認識している。ルビオ氏自身もトランプ氏が核戦争を始めてしまうリスクについてわざわざ警告している。しかし彼らは気にしない。
彼らは自国よりも自分のキャリアを重視しているとしか思えない。そしてそれが今週、私が共和党を辞めた理由だ。
わたしはなぜ共和党を支持していたか
わたしは保守派の人間ではない。わたしが共和党に所属していたのは、もはや悪いジョークだったとわかってくれると思うが、正直なところ、わたしの決断は遅すぎた。
マサチューセッツで育った私は、当然のように10代で共和党支持者になった。ウィリアム・ウェルド(Bill Weld)氏(現在、リバタリアン党所属で、副大統領候補)からチャーリー・ベーカー(Charlie Baker)氏まで、共和党から5人もの素晴らしい州知事を輩出した土地だ。ミット・ロムニー(Mitt Romney)氏が州知事に出馬した時は、彼の選挙活動に加わった。彼の大統領選での選挙運動は好きではなかったが、彼もマサチューセッツでの功績を誇りに思っているようだ。
現職、前職など、存命している4人のマサチューセッツ州知事たちは全員、トランプ氏に反対している。
私は州や地方政府の財政という、共和党がしっかり機能し、慎み深い政治組織で働いた背景があったので共和党に残った。実際にわたしは、過去3回のニューヨーク市長選においても共和党に投票している。
国家レベルの問題の多くに関して、意見の異なる党に所属していたことを、馬鹿げていたとまでは思わない。共和党は長い目で見ればアイデアを改善していける場所だったと思う。党員であることが同時に、良くない候補者に無理やり投票させられることを意味するわけではない。
しかし、今回の選挙で明らかになったのは、政策は共和党にとって重要な問題ではないということだ。
ネブラスカ州選出のベン・サス上院議員(3月に開かれた保守派向けのカンファレンスにて)
REUTERS/Gary Cameron
共和党はもろかった
共和党には根本的な脆さがあった。事実を知らされない環境に多くの投票者が置かれ、多くの政治家によって故意に反民主党の興奮状態が作り出されたので、リベンジを誓ってくれるファシストに乗っ取られることは十分あり得ることだった。
アメリカには主要な政党が2つしかないので、どちらかの政党の候補者が大統領になれる。そのような共和党の脆弱性が私たちの民主主義の脆弱性を作り上げている。
そのようなリスクを生んでいる組織の一部にはなりたくない。
政党が存在する理由
この記事の編集者は、わたしがなぜ無所属を選ばず民主党員になったのかと尋ねてきた。わたしは、 政党は政策作りのための大切な存在と信じており、無所属を選ぶことは影響力を捨てることだと思っている。
政党は政策を実現するために存在し、政党への忠誠はその政策が実行されるかどうかで決められるべきだという点において、わたしはネブラスカ州のサス上院議員に同意する。この理由から、党への忠誠心を強く持つつもりがなくても、また党がやっていることに反対だとしても、党に所属するだけの価値はある。
サス上院議員は共和党のなかで、もっとも早く、もっとも大きな声でトランプ氏への反対を表明した。トランプ氏敗北の結果として起こるであろう共和党の内乱の後、彼が共和党に残ろうが、そうでなかろうが、彼が実行したい政策が実行されることにわたしは疑問を持っている。
サス上院議員は、わたしよりもずっと保守的だから、わたしは彼が民主党員になるとは期待していない。彼やケーシック氏のような人々が、選挙後に陰謀論者やファシストから党の主導権を取り戻そうとすることは当然だろう。
しかし、わたしは彼らが失敗すると確信している。だから、そのまま見届けることとしよう。
(*上記の意見や結論は著者自身のものです)
[原文:Why I left the Republican Party to become a Democrat]
(翻訳:一柳優心)