「Google News」の知られざる編集プロセス ―― いかにして“信頼性の低い”ニュースに対応するか

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REUTERS/Erin Siegal

世界でもっとも人気のあるニュースサイト「Google News」を運営するチームの業務は至って簡単だ。すなわち、「嘘つき」と「詐欺師」を排除すること

オンライン上の情報の増加は、同時に、オンライン上の「嘘の情報」も増やした。このような状況でどれが正しい情報なのかを判断するのは「Google News」のスタッフにとっても簡単なことではない。

この業務を担当する編集チームの仕事内容は、みなさんが「ニュース・ルーム」と聞いて一般的に思い浮かべるそれとはかなり異なる。確かにチーム・メンバーの何人かはジャーナリズム畑での業務経験があるが、その他のメンバーのバックグラウンドはカスタマーサービスのオペレーターだったりする。さらに、インドやその他の国に拠点を持つ協力会社のメンバーもいる。

「一風変わった人々の雑多な寄せ集めという感じのチームだったよ」。「Google News」で働いていたある人はBusiness Insiderに語る。どのパブリッシャーを「Google News」に掲載するか、という判断基準や(掲載)プロセスは、実は、公式のガイドラインにあるほど明確ではなかったと彼は言う。

インフォメーション・ゲートキーパー

GoogleやFacebookなどのIT企業がニュース配信の分野で存在感を増しつつある現在、ニュース・チームが仕事の拠り所とする「編集基準」には、よりいっそうの精密さが求められるようになっている。「偽ニュース(fake news)」が増加しつつにある今、その傾向はさらに顕著だ。

膨大な数のニュースが日々「Google News」に届く。いったい、どのニュースを世間に流すべきなのか? あるいは、逆に、どのニュースは世間に“公開”すべきではないのか? そもそもその基準は? 編集者というよりも、むしろ「インフォメーション・ゲートキーパー」と言った方がふさわしい彼らの仕事をより深く知るために僕たちは「Google News」の元メンバー複数名から話を聞くことにした。

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Google News

数年前まで「Google News」のチームは、カリフォルニア州マウンテンビューにあるGoogle本社で働くフルタイムの従業員で構成されていた。だが、Googleはこの数年間で組織変更を行い、外部の協力会社に依頼して、「Google News」に表示されるニュースをチェックするようになった。このチェック・システムは効果的だった。実際、「Google News」はFacebookよりも「偽ニュース」に悩まされた回数が少ない。

Googleの判断基準は、今日のニュース業界に大きな影響をおよぼす。コンピュータのアルゴリズムやプログラムの処理方法を極秘としてきた彼らは、「ブラックボックス」をベースとした方法論をニュース配信サービスにも応用している。

「Google News」の元スタッフは言う。このシステムは「公平」であると同時に「不明瞭」でもあると思えた、と。Googleは、パブリッシャーの採用基準を明確にしていたと同時に、偽ニュースやスパムの発信者にはある種の制限をかけていた。驚くべきことにGoogleは「情報が偏っている」、または「信頼性が低い」と判断したパブリッシャーのウェブサイトを、パブリッシャーに知らせることなく、“「Google News」の目立つ場所に表示されなくなる”ようにしていた。複数の元スタッフが同じように述べていた。

Googleは、情報の偏りや信頼性の低さを社内で評価したり、フラグを立てたりなどはしていないと否定している。Business Insiderはこの件に関して「Google News」の責任者にインタビューを申し入れたがGoogleは(取材を)拒否した。代わりに彼らは「Google News」にどのようなサイトをインデックスするか、その基準を明示した「パブリックガイドライン」(日本語です)を僕たちに提示した。

ニュースとは何か?

2002年にリリースされた「Google News」というサービスには、検索エンジン(サービス)と大きく異なる点が1つある。Googleのスタッフや独自のニュース・アルゴリズムによってレビューされ、承認されたパブリッシャーだけが「Google News」に表示されるという点だ。Googleは、このプラットフォームに全世界7万5000ものパブリッシャーを登録している(*「Google News」には毎週10億人以上の人が訪れる)

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Googleのサンダー・ピチャイCEO

Justin Sullivan/Getty Images

協力会社にこの業務を委託する以前、Google社内のニュース・レビューチームにはパブリッシャーのサイトのクォリティを評価するという特権が与えられていた(それまでの経歴や役割にかかわらず、彼らにはサイトのクオリティに関して同じような判断を下すことが求められた)。

現在のレビュー・プロセスは以下のようになっている。

  • サイトの初期評価を自動(独自のアルゴリズムを組んでいる)で行い、さらにAboutページの有無などからサイトの正当性をチェックする
  • その後、人の目によるレビューが行われる。パブリッシャーのサイトを実際に訪れ、レビューした人の8割以上が同意すれば、「Google News」への掲載が許可される

「Google News」のレビューシステムを公平に保つための方法論については哲学、モラル、実践の観点からチームが議論を行ったと複数の元スタッフは語った。このチームはとても「良心的でかつ思慮深かった」とある人は言う。別の人は「責任という概念が確実にそこにはあった」と述べた。「ニュースとは何か?」という哲学的な問いから、スパムに打ち勝つための実践的な方法まで、数多くの長い議論が繰り返された。

「激しい論調」が「ヘイトスピーチ」の一線を越えているかどうかについて決断しなくてはならない時もあったと、元スタッフが振り返った。

チームの内情は数年前のものなので、協力会社に業務がシフトした際、変更された可能性もある。しかし、レビュー担当者が、2011年からおおむね一貫している「Google News」のガイドライン内で業務をこなしていくことに対して、どのように考えていたのかを垣間見ることはできる。

事実確認は行わない

「Google News」の業務には、良心的な難問に答えていくような(楽しい)作業も少なからず存在したが、ほとんどの業務は退屈なものだった。1日に数十のサイトをレビューし、パブリッシャーからの質問に対応するというカスタマーサービス的な業務がほとんどだった。

レビュー担当者の業務のほとんどは「スパムと詐欺」というネット上の「雑草」を抜いていく作業だった。

スパムの中には簡単に見分けられるものもある。サイトのでき映えがどう見てもプロの仕事ではない場合などだ。シンプルなサイトであればレビューするのに5分もかからない、と元スタッフの1人は教えてくれた。

だが、見極めが困難な場合もある。テクノロジーサイトに見せかけて携帯電話を売りつけるサイトだったこともあり、その場合、かなり深くまで掘り下げないと判別がつかなかった。

判断を間違えたこともある。ある時、ローカル・ニュースのサイトがGoogleに登録を拒否された(もちろん、そのサイトの編集者は怒った)。このサイトは見映えがあまりにも悪かったため、レビュー担当者にはスパムにしか見えなかったのだ。サイトは最終的には「Google News」に登録された。

なお、個々の記事の事実確認は、レビュー担当者の仕事ではない。「アメリカで働くフルタイムの従業員は、記事の事実確認はをっていなかった」とある人は語る。「内容が事実かどうかのチェックは我々の方ではしませんでした」と別の人も述べた。Googleもこれを否定しない。

Googleは最近になって、「Google News」の事実確認を限定的にだが行うようになった

2016年10月にGoogleは「In-depth」「Opinion」の他に、「Fact check」タグを追加した。個々の記事に、外部の組織によって事実確認されたことを示す「Fact check」タグを付け、パブリッシャーは「Google News」に提供できるようになった。

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Google

追放措置

元スタッフによると、当時は「Google News」のチームに「偽ニュース」対応はそれほど求められていなかったという。「偽ニュース」は、2016年の大統領選挙中に浮上した問題だ。当時は、ニュースサイトからコンテンツをコピーし、それにアフィリエイトリンクなどを追加するスパム行為の方がより一般的だった。

だが、「ニュースの条件を満たしてはいるが、明確な偏りが見られる」パブリッシャーも多く存在した(する)、と元スタッフは語る。

このような場合、いったんそのパブリッシャーを「Google News」のプラットフォームに登録し、その後、マニュアル操作でこのパブリッシャーにフラグをつけ、「Google News」でのランクが低くなるように設定することで対応していた(複数の元スタッフ談)。この手法はレビュー担当者に共有されており、作業自体は彼らに一任されていた。「『Google News』に登録されたからといって、目立つところに表示されるわけではないんです」とある元スタッフは語る。

意見の偏りが著しいサイト、信頼性が低いサイトは「Google News」自体の質を低下させてしまい、また、それらのニュースが大きく取り扱われることによって「Google News」が迷惑を被ることも考えられる。だが、ニュースサイトの登録を拒否した場合、パブリッシャーがそれについて公にコメントを発表し、問題になる場合もある。そこでスタッフはこれらのサイトをニュースの一番下に掲載するのだ。「Google News」上で「パブリッシャー」を検索すると、もちろん、それらのサイトも表示される。ランクが低いだけで「Google News」のシステムには含まれている。「パブリッシャーが自分で検索してサイトを見つけられれば、彼らは黙って姿を消してくれる」と元スタッフ。怒りのメールも届かなければ、パブリッシャーや読者からオンラインで罵声を浴びせられることもない。

なお、レビュー担当者が、意見の偏ったサイトや信頼性の低いサイトに「フラグを立てること」については、Googleは否定している。もちろん、この方法が変更された可能性も否定できない。

パワーユーザー

とはいえ、「Google News」に登録はされているが、ランクを下げられているというサイトは絶対数で言えばかなり少ない。通常であれば、そのようなサイトの掲載は単純に拒否される

拒否されたサイトにGoogleからその理由を伝えるメールが届くことはない。Googleはパブリックガイドラインを引用した「決まりきった言葉」を使用するだけだ。内部レビューと外部コミュニケーションに使われる言葉のニュアンスにはかなりの開きがある。一般的に「言葉の質」(Language quality)という用語はかなり広義に使われる。Google内の専門用語で表すと「readability」、つまり、読みやすさの一言で括られる。レビュー担当者の言葉が「限定的」であればあるほど、パブリッシャ−は具体的な対策を取ることができる。そのための対策だ。

システム自体に不明瞭な点もある程度は存在していたが、レビュー担当者は常に一般ユーザーにどのような影響をおよぼすかを考え、レビューの際には良心に基づく決断を下していたと元スタッフは語った。

Googleによると「Google News」から拒否された場合でも、パブリッシャーは60日後に再度申請できる。

Googleは正直なパブリッシャーを放置したいと考えてはいない。

拒否されたパブリッシャーの手助けをするために、「Google News」は「パワーユーザー」のネットワークを構築し、非公式ながらも助言を行っている。「Google News」のヘルプ上に存在するパワーユーザーとは、かつて何らかの理由で「Google News」に拒否された経験を持つ小規模なパブリッシャーたちだ。

「『Google News』に登録されるべきだ」とレビュー担当者が判断したサイトは、最終的には登録されたと元スタッフは語る。パブリッシャーが、システムガイドライン、またはレビュー担当者の判断で不公平な扱いを受けたというケースについては、誰も言及しなかった。

今のところ、読者もパブリッシャーもこれらの言葉を信じるより他にない。

「Google News」の内部情報をご存知の方は、nmcalone@businessinsider.com まで連絡ください。

source:Google NewsGoogle

[原文:Before fake news exploded, here's how Google filtered out untrustworthy news sites

(翻訳:まいるす・ゑびす)

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