HeroX とNASAがチームを組んで作った「Space Poop Challenge(宇宙うんちチャレンジ)」を優勝したサッチャー・カードン医師。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon/USAF
宇宙飛行士には悩みがある。トイレだ。
分厚い宇宙服のせいで、宇宙飛行士は排泄を我慢するか(最長12時間になることもある)、オムツを使うかのどちらかを強いられる。絶食する以外に、他の選択肢は本当にない。
しかし、宇宙でトイレに行くことが、にわかに現実味のある未来に思えるようになった。テキサス州デルリオに住む49歳のホームドクターで航空医官、アメリカ空軍大佐のThatcher Cardon(サッチャー・カードン)医師の発明のおかげだ。
人類は再び月を、さらに小惑星、火星を目指している。トイレが必要だ。クラウドソーシングサイトHeroX とNASAは共同で「Space Poop Challenge(宇宙うんちチャレンジ)」を開催。カードン医師の試作品が、優勝し、1万5000ドル(約170万円)を獲得したと発表した。
「緊急事態に備える必要がある。例えば、もし小さな隕石が宇宙船オリオンに穴を開けたら、宇宙飛行士たちは地球に戻るか、穴を修理するまでの6日間を宇宙服で過ごすことになる。これまで、宇宙服を着て排泄する方法はオムツ以外になかった」とカードン医師はBusiness Insiderに語った。
カードン医師はこの長年の問題への素晴らしい解決法「M-PATS:MACES Perineal Access and Toileting System)」の写真と動画を我々に提供してくれた。
彼の発明の仕組みと、なぜそれが宇宙旅行の革命となりうるのかを紹介しよう。
スペースシャトルにはトイレがあったが、使い方をマスターするには、便座下のビデオカメラを使った集中トレーニングが必要だった。
スペースシャトルのトイレのシミュレーター
Dave Mosher
source:Dave Mosher
カードン医師の「M-PATS」は、長年の問題への革命的解決法になるかもしれない。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
装置は股の部分にある小さなエアロックに設置する。カードン医師はこの装置を「会陰部アクセスポート(PAP)」と呼ぶ。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon; Business Insider
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon、Business Insider
「すべて頭の中で考えた。横になって考え、異なる構想を視覚的にイメージした。わたしは『排泄物を宇宙服の外に出す必要がある』と考えた」
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
カードン医師はヒントを得た。複雑な手術を小さな穴を通して行う腹腔鏡手術システムから。
アントニオ・M・レーシー先生とDa Vinci XI 腹腔鏡手術システム
Fpaneque/Wikipedia (CC BY-SA 4.0)
「なぜ、排泄物は小さな口から処理できないのか? 血管の穴から心臓弁を入れ替えることができるのに、なぜできないのか? と考えた」
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
PAPは小さなエアロック。トイレに行きたくなったら、キャップを外す。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
そして自動閉鎖弁を取り付ける。弁(左側)は宇宙服の中で開く。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
そして「inducer」と呼ぶ誘導チューブを弁に挿し込む。「空気が逃げるのを防ぐとともに、気圧を均等にして弁を開けやすくする」
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
そこから、宇宙服内の空気を漏らすことなく、様々な排泄用の道具を宇宙服の中に入れることができる。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
大きなブレークスルーの1つは、膨らませることのできる便器。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
便器は柔らかい潤滑剤を含んだタオル地の布で覆われている。丸まって誘導チューブを通り、ポートから宇宙服の中の所定の位置に取り付けられる。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
便器についている膨張バルブを押す。「装置が膨らみ、本格的な便器のようになって、宇宙服の中にスペースができる。排泄するスペースがあるのは素晴らしいことだ」
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
潤滑剤は便を便器の中に滑り込ませ、詰まらないようにする。タオルは洗浄に使う。用を足し終わると便器はしぼみ、再び丸くなって、誘導チューブから引っ張り出される。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
他の道具は水洗式ビデのように使う。ウェットタオルが先端に巻いてある「衛生棒」は実に画期的だ。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon; Business Insider
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon; Business Insider
衛生棒の動きはこの動画を見て欲しい。プラスチックで覆われたカバーを引くと、棒のウェットタオルは自身の中に巻き込まれていく。
source:davemosher
清潔な宇宙用下着も誘導チューブの中を通れる。これは男性用。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
これは、女性用下着の試作品。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
どちらも誘導チューブに収まるように丸めて、ポートから滑り込ませる。宇宙服の中で広がる。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
男性用と女性用の採尿装置。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
バッテリー式の「汎用型吸引装置」は、排泄物を便器あるいは採尿器へ引き込み、最終的には排泄物回収バッグへと引き込む。
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
「この発明の素晴らしい点は、用途の幅広さだろう。いろいろなものをポートから入れられる」
ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターの無重力環境訓練施設でトレーニング中の宇宙飛行士
NASA JPL
source:NASA JPL
「このポートを使って多くのことができるだろう。外科手術でさえも。そのようにポートを臍のところに配置すれば、腹部手術ができるかもしれない。胸部に配置すれば胸部にアクセスできる」
オリオン宇宙船の中に4人の乗組員をどのように座らせるか。モックアップを使って検討する宇宙服担当のエンジニア。
NASA/Robert Markowitz
source:NASA/Robert Markowitz
カードン医師の2人のティーンエイジャーの子どもたちは(他の3人は大学生なので家にいない)物品購入を、妻は製作を手伝った。優勝した時、家族はとても喜んだ。この試作品を作るのに、5週間かかったから。
サッチャー・カードン医師
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
カードン医師によると1万5000ドルの賞金のうち、1000ドルはかかった経費の埋め合わせに、残りはアイデアを発展させるため、新しい道具の購入に使う。「わたしはずっと生物医学エンジニアになりたかったが、結局はホームドクターになった」
Courtesy Dr. Thatcher Cardon
source:Courtesy Dr. Thatcher Cardon
[原文:This guy invented a genius solution for pooping in space — here's how it works]
(翻訳:Conyac)