Mayo Clinic
昨年6月、メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)は同院初の顔面移植手術を行った。実施されることが少なく、医学の偉業と言えるこの手術。その裏には、似た境遇の2人の若者の悲劇があった。2人のうち、1人は顔に傷を負い、もう1人は亡くなっている。
10年におよぶ物語を紹介しよう。
アンディー・サンドネス(Andy Sandness)は2006年、21歳の時に自殺を試みた。一命を取り止めたものの、顎に打ち込まれた銃弾は顔の大部分を破壊。マヨ・クリニックの医師らがすぐに顔の再構築手術を行い、最善を尽くしたものの、なくなってしまったあご、鼻、そして歯は手の施しようがなかった。
Mayo Clinic
source:Mayo Clinic
退院後、サンドネスはワイオミング州の自宅に戻り、仕事にも復帰した。メイヨー・クリニックが顔面移植の提案を持ち出したのは2012年。手術は複雑で、多くのリスクがあることも同時に説明された。
Mayo Clinic
source:Mayo Clinic
サンドネスは手術について独自に勉強し、それが自分にとって正しい選択だと確信した。「もしあなたが僕と同じ見た目で、顔の機能も僕と同じ状態だったら、少しの希望にもすがりたくなるでしょう」とAP通信に答えている。「この手術をすれば、僕は再び『普通』の身に戻れるのです」
Mayo Clinic
source:AP via Stat News、Mayo Clinic
手術の許可が下りるまでには時間がかかった。たくさんの準備も必要だった。3年間、メイヨー・クリニックの医師たちは、50日分の土曜日を手術に向けたトレーニングに費やした。
Mayo Clinic
source:Mayo Clinic
手術前の日々を記録した映像。
source:YouTube
2016年1月、サンドネスは移植リストに追加された。数年間は待つだろうと思っていたが、わずか5カ月後にその時は訪れた。21歳の男性、カレン・ロス(Calen “Rudy” Ross)が、頭を銃で撃って自殺した。彼は臓器提供者として登録していた。亡くなったロスの妻、リリー・ロス(Lilly Ross)は、初めは迷ったものの、夫の臓器提供を承諾。彼女は当時妊娠しており、決断の理由を「生まれてくる息子に、自分の父親が人助けをした証を見せてあげたいから」と語った。
Mayo Clinic
source:AP via Stat News、Mayo Clinic
手術には60名のスタッフを要し、56時間におよんだ。骨、筋肉、肌などの組織をロスの顔から摘出することに丸1日が費やされた。残りの時間はその組織を使って、サンドネスの目から下の顔面を再構築することに費やした。
Mayo Clinic
source:Mayo Clinic
サンドネスは、手術後3週間経つまでは、自分の顔を見ることを禁止されていた。ついに自分の新しい顔を目にした時、彼は言葉にならないほど感動した。「手にしていたものを永遠に失う経験をして初めて、失ったものの大切さがわかる。再び手にするチャンスを得たのなら、そのことを忘れてはいけない」
Mayo Clinic
source:AP via Stat News、Mayo Clinic
自分の顔がついに「普通」になったことをサンドネス自身が確認する瞬間は、手術の3カ月後に訪れた。 エレベーターに乗った時、小さな男の子が自分の顔を見ても驚かなかったのだ。これは手術前には起こりえないことだった。
手術後のサンドネスは順調に回復し、匂いを嗅ぎ、呼吸をし、物を食べることも、徐々にできるようになっている。今のところは、人混みに問題なく紛れられることを大いに楽しんでいる。
Mayo Clinic
source:Mayo Clinic
(敬称略)
[原文:2 tragedies intersected to give this man a face transplant — and the story that unfolded is powerful]
(翻訳者:にこぱん)