客室乗務員による「空の旅の知られざる真実」

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次のフライトのヒントになるはずだ。

Flight/Paramount Pictures

航空機の旅について、客室乗務員(CA)ほど詳しい人間はいない。

ベテランCAが教える知られざる真実についてまとめてみた。機内でより良いサービスを受けるために、あるいは飛行機から放り出されないために、ぜひ読んでおこう。


飛行中は物理的に機体のドアを開けることができない。それでも試したい? 飛行機から放り出しますよ。

CAとして13年の経験を持つアネット・ロング(Annette Long)がBusiness Insiderに語ったところによると、飛行中の航空機のドアを開けるのは物理的に不可能だが、開けようとするそぶりを見せただけで厄介なことになる。実際に起きた事件のように、飛行中にドアを開けて飛び降りようとした乗客は拘束され、着陸と同時に逮捕される。場合によっては緊急着陸をして、直ちに問題の乗客を機外に出すことも。

「そのような事態が発生したら、すぐに操縦室とチーフパーサーに知らせ、緊急着陸して乗客を降ろすかどうかの判断を仰ぐ。ほとんどのパイロットは、CAが抱える問題は自分たちの問題でもあるとして、CAをサポートしてくれる」

実は航空機は見た目ほど清潔ではない。

航空機の座席テーブルは細菌でいっぱいだ。テーブルでオムツを替える乗客もいるし、機内清掃の際にすべてのテーブルが完全に拭かれているわけではない。「1列目から拭いたとして、35列目になる頃には雑巾そのものが汚れている」わけだ。さらに、乗客には見えないところで、不衛生な“事件”が起きている場合もある。例えばトイレや座席での粗相。「裸足やソックスでトイレにいったら、床が“何か”で濡れている」なんてことも。「とても清潔とはいえない環境」なのだ。

電子タバコは持ち込める。ただし、サムスン「ギャラクシーノート7」は不可

爆発物の機内持ち込みは禁止されている。一見、害がなさそうなものであってもダメなことがある。

昨年3月、ハーツフィールド・ジャクソン アトランタ国際空港でデルタ航空の便の出発が遅れた。機内で電子タバコを着火した乗客がいたためだ。電子タバコのリチウムイオンバッテリーが壊れて発火する例があるにもかかわらず、機内で使用したり充電しない限りにおいて、電子タバコの持ち込み自体は認められている。

ただし、「ギャラクシーノート7」はダメ。米国に発着するすべての便で持ち込み禁止となっている。

CAの賃金は飛行機が離陸してはじめて支払われる

複数のCAが証言するところによると、CAの賃金は飛行時間に基づいて計算される。「たとえば、搭乗日に12時間勤務したとしても、実際に飛んでいる6時間分だけが支払われる」

どうやら、あまり割りのいい仕事ではないようだ。

途中でCA職から離れた時期があったものの、国際線と国内線で延べ20年のキャリアを持つあるベテランCAは「10年前、もう一度CAとして働き始めた時は、(低所得者のための食料費補助)フードスタンプがもらえた」ほどだったと話す。「初任給はとても低い。新人のCAたちは貧乏で、1軒のアパートを24人でシェアしてるくらい」

しかも、CAの労働組合の規定では、頭上の荷物収納棚に乗客の荷物を出し入れする際にCAがけがをしたとしても補償はされない。低賃金で“労働時間外”のCAが、荷物の出し入れを手伝ってくれないとしても仕方がないことかもしれない。

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izusek/GettyImages

機内設備の水は絶対に飲むな

フライトの最中に目撃したもっとも奇妙な出来事は? という質問に、「機内設備の水道水でスープを作った乗客がいたこと」と答えた元CAは「あの水はきれいだったためしがない」と警告している。

CAは絶対に機内設備の水を飲まない。あの水で入れたコーヒーも紅茶も飲まない」

米国環境保護庁(EPA)は、8機に1機の割合で衛生基準に満たない水質の航空機があり、検査した機体の15%のウォーターシステムで危険の可能性があるバクテリアが見つかったと発表している

窓のシェードを開けるにはワケがある

「非常事態の訓練の際に指導されたのは、ドアを開く前に乗務員が外部の状況をいち早く把握するために、シェードはすべて開けておくということ。火災や、水、岩など、避難の妨げになるものがないかどうかを判断し、最善の手段を素早く選びとる必要がある」

酒類の持ち込みは不可

「酒屋で買ったミニボトルなどをこっそり機内に持ち込む乗客がいるけれど、わたしたちはちゃんと気がついている」

「持ち込みが認められないのは、わたしたちが乗客がどのくらい飲んだかを把握し、飲みすぎないよう気を配る必要があるから。地上とは違い、飛行中は気圧が低いので、長時間になればなるほど酔っ払いやすいの」

公式には、飛行中に死ぬ人はいない

飛行中の機内で死人が出ることはないという。なぜなら飛行中に「公式な死亡宣告はしない」からだ。死亡確認は着陸したのちに行われる。とはいえ、救命行為のかいなく亡くなった場合、それ以上何もしないわけではない。

自分は幸いそのような状況に陥ったことはないがと前置きし、CAは、もし機内で亡くなった乗客がいる場合はそのまま座席に座らせておくと言う。「亡くなった方の尊厳を守り、好奇の目に晒されないよう、全身にブランケットを掛けるの」

だが、死亡した乗客の取り扱いについては確固たるルールはないようだ。ほとんどの航空会社が加盟している国際航空運送協会(IATA)は、 乗務員にいくつかの方法を勧めている。1つは遺体を乗客が少ない席に移動させること。もしそれが難しいようであれば、ギャレーに移すか乗客をファーストクラスに移動させる。もしくは、「遺体安置所」を備える数少ない機体であった場合はそちらへ移動。適当な空席がない時は、そのまま座席に置いておく。

スタンガンの使用もあり

先日、大韓航空は「機内での暴力的な行動や騒動に迅速かつ効率的に対応するため、スタンガンの使用に関する条件や規則を改正する」として、機内でのスタンガンの即時使用を認める方針を明らかにした

実際いつから使用が開始されるのかはまだ不明だが、乗客とクルーの生命に関わるような状況、あるいは安全な飛行が妨げられる危険性がある場合に限るようだ。

大韓航空の決断は、昨年12月20日、暴力的な乗客を取り押さえるのに協力した歌手のリチャード・マークスが、混乱や危険な状況に対して乗務員の訓練不足や装備不足をTwitterで批判した事件を受けてのことだ。マークスの元妻もInstagramで非難した。

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REUTERS/Beawiharta

緊急脱出用シューターを勝手に開けたら1万ドル(約110万円)以上の損害

2014年、中国東方航空便が三亜鳳凰国際空港に着陸した際、乗客の1人が「早く降りられる」からと緊急脱出用シューターを開いてしまった。これによりフライトは2時間遅れ、1万6000ドル(約180万円)の損害が出た。

昨年4月にはユナイテッド航空のCAがやはり緊急脱出用シューターを開いてしまい、元に戻すのに6000〜1万2000ドル(約67万円〜134万円)の費用がかかったと言う。

後方席の方がより良いサービスが受けられる

「着陸後早く降りられるし、機内食も先に選べるからと、乗客は前の方の座席を選ぶ傾向があるけれど、実は後方の席の方がより良いサービスが受けられる」と4年目のあるCAは語る

「前方の乗客からのコールを受けたくない理由は単純。移動距離が長い分、時間がかかるし、持ってきて欲しいものが何であれ、運んでいるのが途中の席の乗客に丸わかりで、みんなが欲しがるようになるから。後ろの席だったらこっそりワインのミニボトルを渡せるけど」

source:Transportation.gov、QUARTZ、CNN、Reuters、Quora、Twitter、Instagram、reddit、abc NEWS、oyster.com

編集部注:ご指摘をいただき間違いを修正いたしました。9日19時。

誤)機内設備の水道水で石鹸を作った乗客がいたこと

正)機内設備の水道水でスープを作った乗客がいたこと

誤)もしそれが難しいようであれば、ギャラリーかファーストクラスに移動させる。

正)もしそれが難しいようであれば、ギャレーに移すか乗客をファーストクラスに移動させる。

[原文:11 insider facts most flight attendants know — and you probably don't

(翻訳:十河亜矢子)

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