米カジノ王・アデルソン氏 「ベガスを変えた。シンガポールを変えた。次は日本だ」

来日中の米カジノ運営大手、ラスベガス・サンズ(Las Vegas Sands)CEOのシェルドン・アデルソン(Sheldon Adelson)氏は、カジノ解禁に近づく日本市場は、国際会議場や大規模イベント施設を軸とする統合リゾート(IR)に「最高の地」であると、都内で開かれたセミナーで強調。競輪や競馬、パチンコなどのギャンブルが根付いている日本の風土を理由の1つにあげた。

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ラスベガス・サンズ、シェルドン・アデルソンCEO

中西亮介

アデルソン氏は「わたしはシンガポールを、コンベンションとショッピングの都市に変えた。ベガスも同じだ」とした上で、「日本は、*MICEをベースとしたカジノIRを建設するにはふさわしい土地である」と、証券業務や投資活動を行うCLSAが主催するイベントで述べた。

日本のカジノ構想が現実味を帯びてきた今、世界のカジノオペレーターは新たな市場の創設に向けて鼻息が荒い。カジノを含むIRの整備推進を目的とした推進法案が2016年に可決、成立し、政府は1年以内をめどに、実施法案を策定する方針だ。大阪と横浜、北海道、東京などが最有力候補地とする見方も聞かれる。

同社の子会社で、シンガポールのカジノリゾートを運営するマリーナベイ・サンズのジョージ・タナシェビッチ(George Tanasijevich)社長は昨年、本社のサンズが日本に100億ドル(約1兆1400億円)規模の投資を計画していることを明らかにしている。ラスベガス・サンズは、シンガポールやマカオ、ラスベガスでカジノリゾートを運営し、年間110億ドル以上の収益を稼ぐ。

『サムライ・ショーダウン(Samurai Showdown)』と題するレポートの中で、CLSAは日本のカジノ市場は250億ドル規模に拡大する可能性があると述べている。CLSAの試算の前提条件は、東京と大阪の2カ所に大規模の都市型IRが2023年までに建設された後に、小規模の10の施設が2025年以降に建設されるというもの。

同レポートによると、カジノリゾートを建設、拡大していく上で、大きな課題となるのはホテルや旅館の客室数の確保だという。東京には約10万室の客室が存在するが、客室利用率は2015年に85%程度に達しており、その後も上昇を続けている。レポートは、客室の供給不足が懸念されるが、2020年の東京五輪に向けて宿泊施設の建設が計画されているため、不足はある程度緩和されるだろうとしている。

大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)をカジノを中心とする統合型リゾート(IR)の建設候補地にあげている大阪府は、経済政策としてのIR構想に対して積極的だ。松井一郎・府知事は1月、BUSINESS INSIDER JAPANとのインタビューで、「今年中にIR実施法(カジノ解禁に伴う規制などを定めた実施法案)ができれば、2023年頃にはIRを部分的にオープンできる」とした上で、エンターテイメント産業を大阪の新しい産業の柱の1つとして、今後の経済成長につなげたいと強調した。

アデルソン氏は「ラスベガスはギャンブルで知られた街だ。しかし、現在、カジノ単体での収益は全体の30%を下回る」と述べる。そして、「カジノリゾートは他の産業の創出に貢献できる。今後の都市開発において、カジノリゾートは大きな役割を担うはず」と話した。

*MICEとは企業などの会議(Meeting)、企業などが行う研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会などのイベント(Exhibition/Event)の頭文字。

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