知っておきたい音楽著作権の話 —— メロディーと歌詞には著作権があるが……

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著作権で守られているもの

JASRACが音楽教室から著作権使用料を徴収すると発表して世間を騒がせたり、ほぼほぼコピーアンドペーストだけで成立する記事でPVを稼いでいたメディアが問題になったり(WELQ問題)、さらにはデザインの盗作疑惑(ファッションブランド「EATME」のロゴデザイン盗作疑惑)なども記憶に新しいところですが、実際にインターネット上での著作権侵害というのは、どういうことを指すものなのでしょうか?

今回は音楽の著作権をテーマに、インターネット上の著作権侵害に関するいくつかの事例を紹介していこうかと思います。

一般的に音楽の著作権で守られているのは「歌詞」「メロディー」「録音された音源」です。歌詞、というのはそのまま、歌の中に使用されている言葉のことです。有名かどうかにかかわらず著作権登録されているものと同じ言葉の羅列を制作者の許可なくそのまま転載したり、一部を勝手に書き換えて自分の作品として発表して販売したりすることはできませんし、インターネット上に勝手に掲載することも基本的には禁止とされています。歌詞の著作権が侵害されているかどうかは比較的判断しやすいので、さほど問題視されることは、実はあまり多くありません。

では「メロディー」はどうかと言うと、メロディーの表記方法によっては、インターネット上に掲載されていても問題がない場合もあります。メロディーというのは基本的には単音が羅列された旋律という意味なので、それぞれの音程(の高さ)に加えて、それぞれの音程の長さ、という表記も必要となってきます。おたまじゃくし、と呼ばれることもある、いわゆる一般的な譜面にはこの両方が含まれるので、自分が著作権を所有していない曲を無断でインターネット上に掲載したり、配布したりすることは基本的にはできません。

例えば、

ソミミファレレドレミファソソソ

とメロディーらしきものを書いて見ましたが、実はこれスペイン民謡である「ちょうちょ」のメロディーです。

ソミミー・ファレレー・ドレミファ・ソソソー、と書くとより分かりやすいかもしれませんが、いずれにしてもこれは著作権の侵害には該当しません。なぜかというと、この文字の羅列に一定の再現性はなく、音の長さもテンポも示されていませんし、そもそも譜面だという確証もないからです。これを読んでいるあなたがちょうちょのメロディーを知っている場合のみ、この譜面らしき文字の羅列は有効なのです(もっとも「ちょうちょ」の場合はすでに著作権が切れている作品なので、譜面を載せても問題はありません)。

「録音された音源」というのは読んで字のごとく「録音物」を示しますが、これは一般的には録音ボタンを押した人ではなく、録音された音に収められている演奏者などが著作権を持つことになります。

例えば、スティービー・ワンダーのコンサートを聴きに東京ドームに行ったとしましょう。あなたが(東京ドームで)録音した音源の著作権は、録音ボタンを押したあなたではなく、作詞作曲、そして編曲までして、それを録音し、世界中で販売し、バンドメンバーを集め、プロモーターなどとの交渉して、わざわざ東京までやって来て、それを披露してくれているスティービー・ワンダー(とそのスタッフたち)にある、と仮定する方がフェアだと思われます。あなたの録音ボタンの押し方がどれほどクリエイティブで独創的で、見るものが思わず息を呑むほど美しい指の動きだったとしても、あなたはただ、録音ボタンを押しただけですから。

なので、その録音物をブログなどでシェアしたり、販売したりすることは著作権の侵害になります。これはその録音物を加工したり、編集した場合でもオリジナルの音源の著作権があなたに移ることはありません。また、動画を撮影した場合には、音だけでなく、肖像権という権利もまた発生しますので、音だけの場合よりも動画の方が権利に関して、より複雑になります。

では、音楽「以外のもの」というのはどこまで著作権法で保護されるのでしょうか。例えば、「曲のタイトル」は? 「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」(岡村靖幸)とこのページに書き、かつ引用元を示さないのはオッケーなのでしょうか?

曲のタイトルと著作権の関係

実は、曲のタイトルには著作権はありません。曲のタイトルに著作権が認められてしまうと、極端な話、単語単位での著作権違反になってしまいます。つまり、英語圏の人は1960年代以降、ポール・マッカートニーに許可を取ることなく、昨日(「Yesterday」)の話ができなくなってしまう、ということになりかねないので、それはさすがに一般庶民にとって不便極まりないであろうということで、タイトルには著作権がない、ということに取り決められています。

ちなみに、ジェームス・テイラーのファーストアルバムに”Something in the way she moves”というタイトルの曲があるのですが、この曲が発表されたその後にジョージ・ハリスンが”Something”という曲をビートルズ名義で発表しています。そして、この曲の冒頭の歌詞はなんと”Something in the way she moves”というジェームス・テイラーの曲のタイトルと完全に同じなのです。いかに著作権がタイトルにはないからと言ってそのまま拝借するのはいかがなものかと思うところですが、ジェームス・テイラーはさほど気にした様子もなく、「すべての音楽はどこかからの借り物である」と懐の大きさを見せ、そして”Something in the way she moves”という曲そのものが実はビートルズの”I Feel Fine”という曲にインスパイアされたものだった、ということまで明かしたそうです。

どこまでやったら問題になるのか、というのは、最終的にはオリジナルを作った人の気分が害されなければいい、というところでもあり、こうなってしまうと要は、「人の感情同士のせめぎ合い」なので、なかなか線引きの難しいところです。これでもし、ジョージ・ハリスンとジェームス・テイラーが同じ女性と三角関係にあったりなんかしたら、それはこの曲を口実に裁判沙汰でドロドロになっていたかもしれません。

というわけで、仮にあなたが自作した曲に「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」(B'z)というタイトルを付けたとしても、理論上は、あくまでも「理論上」ですが、問題ありません。

コードやレシピ、棋譜は?

そして、作曲における盗作/盗作ではない、という線引きも非常に難しいところなのですが、大抵の曲にはCとかGとかギターをちょっとでもかじったことがある方であれば恐らく知っているであろう「コード」というものがあり、このコードを組み合わせた「コード進行」というもので曲の大まかな流れは作られるのですが、実はこのコード進行にも著作権は認められていません。例えば、某小室哲哉先生の作曲される曲のサビのコード進行はAm-F-C-G、というパターンのものが多かったのですが、あなたがこれを拝借して、というか、なんなら一曲丸々コード進行を拝借して作ったところで、コード進行が同じ曲は世の中にたくさんあるので、特に問題ないという見解なのだそうです。ただし、コード進行はあくまでも伴奏の部分なので、上に乗っかるメロディーがまったく同じであった場合、メロディーには著作権がありますので、これは盗作扱いとなってしまいます、それにコード進行とメロディーが同じであれば、つまり、それは歌詞が違うだけであれば、むしろ替え歌として扱われてしまうことでしょう。

なので、コード進行を示すだけであれば、インターネット上に掲載してもこれは問題ない、ということになります。一般的に多用されているコード進行は他にも、たとえばカノン進行と呼ばれるヨハン・パッヘルベル作曲の有名な曲に基づいたコード進行があり、これはD-A-Bm-F#m-G-D-G-Aという進行です。これを下記の画像のように、ここに貼付けてしまってもなんの問題も起こりません。ついでに言うと下の画像の譜面も僕が今しがた作成したので、画像の転用のような著作権の侵害も一切ありません。

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なので、作曲を始めてみたい、というような方で、どこから始めたらいいのか分からない、という場合は、このような有名なコード進行をそのまま使ってこれに新たなメロディーを書いてしまえば、もう立派なあなたの作品ということになります。もちろん、その曲を友達や兄弟などに聞かせてみると「なんかカノンっぽいね」という鋭い突っ込みを受ける可能性は否定できませんが、いわゆる「盗作」にはカウントされません。あくまでこれも理論上の話ですが。

以上のように、曲のタイトルやコード進行というものには、著作権があってもよさそうに思えますが、実はないのです。同様に著作権がありそうでないものというのは他にもいくつかあり、例えば、「料理のレシピ」の内容(アイデア)には著作権はありません(「表現」には著作権があります)。他にも将棋やチェスの試合の流れを示す「棋譜」にも著作権はありません(「レシピ」と同様の解釈)。

どこまでが著作権で保護されているのか、というのはなかなか分かりづらいところもありますし、インターネットに掲載したり、何か商品や作品を開発して販売したり、ということをしない限りは問題視されることも少ないと思いますが、メディアリテラシーの一環として、頭の隅に留めて置くと今の時代、いつか役に立つかもしれません。著作権で保護されていない、というのはつまり印税ももらえない、ということでもあるので、印税生活を夢見ている人であれば、ぜひとも理解しておきたいところです。

それでは今しがた、僕がこの記事のためだけに書き下ろした新曲のコード譜を最後に貼っておきますね。「愛のままにわがままにぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう、あの娘」という曲です。

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分かりづらいかも知れませんが、ちょっとだけパッヘルベル作曲のカノンにインスパイアされています。


[参考文献/Webサイト]:

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